1.柊有栖side
こちら新連載となります。
2作品同時進行となるので、更新が不定期になる可能性がありますのでご了承ください。
私は柊有栖。
実家から遠く離れた高校に通う高校2年生の女子高生だ。
志望している大学が実家から遠いこの天衣町にあるために家を出てまで、遠くにある今の高校を受験して通っている。
実家の両親とは仲が悪いと言うわけではなく至って良好な関係だ。 ちゃんと、大型の休みには実家に帰ってるしね。
実家を出て1人暮らしをするにあたって、学費は親が払ってくれることになったのだが、生活費諸々は自分で何とかするという条件が出された。
そんな私の1日の予定はというと……。
平日は学校で勉学に励み、放課後は生活費を稼ぐためにバイト。
アパートの部屋に帰ってきたら、食事とお風呂を済ませて寝るまでの時間は勉強に費やす。
休みの日は朝から晩までバイトに明け暮れて、家に帰ればやっぱり寝るまで勉強。
遊ぶ暇もなければ、彼氏なんて作る暇もない。
まさに灰色の青春というやつを送っているわけだけど、自分が望んだことだし文句を言うつもりはない。
とまぁ、こんな灰色の青春を送ってはいるけど、容姿にはそれなりに自信を持っている。
肩まで伸ばした白銀の雪のようなサラサラな銀髪は毎日手入れしていて透き通るように滑らかだと思う(自画自賛)
ルビーのような明く赤い瞳は近所のおばさんに「綺麗な瞳をしてるね」と、言われたこともあり、その双眸を支える目尻は少タレ気味に下がっていて、それが幼い印象を与えるのだとかなんとか。
それなりに発育した身体でプロポ-ションだって悪くない、と思う。
とんでもない美少女ってわけじゃないけど水準以上だと自負している。
何度か告白もされたけれど、先ほどの多忙が理由で交際には至っていない。
さて、今日も今日とて、灰色の青春を謳歌するとしますか。
「おはよう有栖ー」
「あ、おはよう蘭菜」
教室へ入ると元気よく声を掛けてくる女生徒が1人。
この娘は、実家から離れて友人1人居ないこの学校へ来て、初めて出来た友人。
名前は藤宮蘭菜
性格はとても明るく、その明るさを表したかようなオレンジ色の髪の毛を右側でまとめてサイドポニーにしている。
髪の色に掛けているのかは知らないけど、その髪からはほんのり柑橘系のシャンプーの香りがする。
人懐っこい子犬のような目は大きく、瞳は翡翠色に輝いている。
顔立ちも少し童顔な感じで、身体も140センチほど、その他の部分の発育も決して良くはない。
あ、いやいや、貧乳だとかそう言うつもりはないんだけど。
その様な容姿の所為か、よく小学生ぐらいに間違えられているところ見かける。
そんな彼女は、駅前にある本屋の娘で、放課後や休みの日はよく店の手伝いをしている。
かく言う私も、その本屋でバイトをさせてもらっている身なのだが。
本屋の娘だけあり、本を読むのが好きらしく、最近はラノベ? とかいうのにハマっているらしい。
「今日も放課後、お店の方よろしくぅっ!」
「はいはーい、今日も頑張りまーす」
「うむ、よろしい!」
その後も軽く世間話をしていたが、朝のホームルームが始まってしまったので自分の席へ戻っていった。
授業を終えて、放課後──。
予定通り、蘭菜の家がやってる本屋へ直行し、バイトに勤しむ。
時間一杯までバイトをこなして、ヘトヘトになりながら家路を歩いた。
「はぁ、帰ったら晩ご飯食べて、お風呂入って、予習復習かぁ」
将来の夢の為とは言え、本当にこんな青春時代で良いんだろうか……。
そんな事を思いつつ、借りているアパートの前までやってきた所で、部屋の入り口の前にゴミ袋が置かれているのが目に入った。
「誰よ、人の部屋の前にゴミ袋置いたのは!?」
私は憤りながら、そのゴミ袋へ近づく。
しかし、近づいてみるとそれはゴミ袋ではなく、どうやら人間の様だった。
「えっ?! マジ?!」
私の部屋の前に死体転がってるんですけど?! うわぁ、どうしよこれ? とりあえず、警察よね? いやいや、生存確認と心肺確認?
私はその人物の胸に耳を当て、鼓動の音と胸の上下を確認する。
うん、生きてるみたい。
「でもどうしようかしらねぇ……」
部屋の前で腕を組み、少しの間考える。
「このまま放っておくわけにもいかないわよね……しょうがない」
結局、私はその行き倒れを自分の部屋に運んで、少しの間様子を見ることにした。
「なんかのコスプレなのかしら? イベントとかどっかでやってたっけ?」
行き倒れは男性の様で、コスプレ衣装の様な物を着ていた。
黒いマントに赤い金属製の胸当てと同じような材質でできた黒い腰当て。
腰には何やら剣を携えているようだった。 鞘に入っててわからないけど、おもちゃよね?
まるでファンタジーの世界から飛び出してきたような恰好だ。
燃えるような赤い髪をアシンメトリ気味にしたヘアスタイルで、鼻は高くシュッとしている。
閉じていてわからないが、キリっとしたまつ毛を見るに、きっと切れ長の鋭い目つきをしているのであろう。
良く見ると結構イケメンかも?
しばらく、その顔を見ていると、不意に男性の目が開いた。
髪と同じような、燃えるような赤い瞳が私の部屋の天井を見つめている。
程なくしてその男性は口を開いた。
「うおおおおい! ここはどこだぁ!?」
急に大声を上げられてビクッと肩が跳ねてしまった。
「びっくりしたー! あ、目、覚めましたか?」
その男性の赤い瞳が、こちらを向いた──。