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第七話:魔女裁判

――デブ猫なケット・シーのケッティの過去と、娘アラディアとの出会いを聞いた。


 夜が明け<港町シパリラ>を目指す。

 ゲムズボックで快調に進み、雲に隠れているが日が中天を指す頃には街が見えてきた。


 鍛冶が盛んな街アテゴラとエパルロラの砦の中間にあり、河川に近く海にも面した<港町シパリラ>。


 キャラバンが集まり交易都市しても栄えており、ここから北東に進むとアラトト山脈でもある。

 街の中心には東西を貫く列柱道路が敷かれ、華麗な装飾が施された柱が目に入る。

 それらを含めた街並みは、石英が多く含まれた花崗岩で造られ、白くキラキラと輝き実に美しい。


 列柱道路を通り、広場に向うと人だかりができていた。

 そこへ兵士達によって一人の女性が連れて来られる。

 手と足には鉄枷で拘束され、引きずられ、膝をつきひれ伏された。


「戒めとなせ、この女ディオニュソスは――――

 魔法で人々の心を乱そうとした魔女である。

 その罪で有罪となり、街の法と照らし合わせ、審判の天使セラフィエルの名において罰を与えるものとし、その刑は死刑とする。

 創世主と天使に逆らう魔法は大罪であり――――

 それらを使う魔女は死刑をもって罰するほかならない」


 ――灰色の雲で埋めつくされた空の下、魔女ディオニュソスは広場中央に作られた木柱に鎖で縛られ、今まさに火炙りとされようとしていた。

 デブ猫は過去の記憶と重ねてしまったのか固まっている……。

 どう行動するのが最善か…………。



 その時だ、木柱の薄い影が液体の如く波打ち、人影が立ち上がる。

 ――――現れたのは祖たる盲目の魔女アラディアだった。


「我が弟子をこのような……

 巣立ったとは言え我が家族――

 あの時のように私から母を――――

 そして光を奪った――――。

 目には目を、歯には歯を――

 その罰は等価に訪れるものと知れ!」


 人々の前で高らかに宣言する。

 その姿は鬼気迫る物が感じられた。

 ……そんな事を言っている場合ではない、目の前には娘のアラディアが居るのだ。


「風の霊素(エーテル)よ、我が身に宿れ、<エアリアル・カッター>」


 アラディアが詠唱を終わらせた時には真空の刃が木柱の鎖を斬り、音が後を追いかけディオニュソスが地面に転がる。

 鎖は無くなっても手足の鉄枷がある為に身動きがとれていない。


「師匠なぜここに……私は…………ありが……と…………」

 ――だいぶ拷問もされたのだろう意識も朦朧としているようだ。


 予定には無かったがしょうがない、助けるしかないだろう。

 右足で力いっぱい踏み切ってディオニュソスを抱え広場から離れる。


「…………」


 何か言おうとしていたようだが気を失ってしまった。とりあえず魔法で回復だ。



 ――その間に広場では


「貴様も魔女かっ! ただで済むとは思うなよ、天使の名に置いて断罪する!!」


「それはこっちの台詞よ! 

 …………地の霊素(エーテル)よ、我が身に宿れ、<イマジン・ゴーレム>」


 アラディアは囲まれたがゴーレムを生み出し兵士達を薙ぎ倒す。

 以前、森で見た時のゴーレムより二回り以上大きく、鉄に近いような色をしていて、数では圧倒的に兵士達が有利なはずだったが、刃を受けても怯まず圧倒的な力を持つゴーレムの前では無意味だった。


「くそっ……創世主と天使の代理人である我々が…………」

「――こんな筈では」


 あれなら大丈夫だろうと思った――――

 そんな矢先にアラディアが急に膝をつき苦しみ出した。


「…………ゴホッゴホッ」


「大変、ご主人様が――きっと発作が出てるニャ」

「まだこの魔女の回復に時間が掛かってしまいそうだが……アラディア…………」

「ウチが行くのニャ! ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁ」


 ケッティは黒猫から人の姿になり、長い黒髪をなびかせ、艶めかしくしなやかな身のこなしで人の間を縫い駆けつける。


「あなたなの…………ケッティ?」


「そうですニャ……ご主人様しっかりしてニャ!」


「私は――――」



 ゴボッと吐血し、顔から血の気が引いていき、手が痙攣している。

 ディオニュソスを抱えながら駆けつけた。

 ケッティと共に手を握りながら魔法を掛ける…………


「風の霊素(エーテル)よ、我が身に宿れ、<エアリアル・ヒール>!」

「…………」

「<エアリアル・ヒール>! <エアリアル・ヒール>! <エアリアル・ヒール>!」


「私は長く病を患っていて――」


「しっかりするのよアラディア!」


「あの子……ディオニュソスは無事…………? …………ゴホッゴホッ」


 ――アラディアは再び吐血した。


「……ああ、彼女は魔法でしっかり回復した…………だから…………」


「……それは…………よかった……彼女が……あなたに道を示すはずかしら…………」


「ご主人様、必ず助けるから頑張るニャ」


「――――私はルシファーだ。――やっと逢えたのに、これからもっと色々と話を……」


「と、とうさん……なの……?

 …………何だか……とても懐かしい気がしたのは、そう言う事だったのね…………」


「そうだよ――――今はこんな姿だけど――」


「…………」


「…………」


「…………私、ラファエルに襲われてお母さんを助ける事が…………」


「今はいいの。だからしっかり――」


「……父さん………………ごめんなさい。――ケッティ……父さんの事お願いね」


 ――アラディアの手から力が抜けて行く。


「ご主人様……? ご、ごじゅじんざま…………」


「ア゛ア゛ア゛ア゛アァァァァァァァァァァァァァァッ」


 ――どこにぶつけてよいか分からない感情のやり場に私は咆哮し、体を黒い靄が覆っていった。


 ゴーレムが姿を消し、兵士達が起き上がりだした。

 灰色のベールのような雲が左右に分かれ――隙間から金色の光が射し込む。

 そして眩い光の中、空には白い翼を広げる天使の姿があった――――。

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