第二十六話:<凝縮する者>撃滅戦
――熾天使ガブリエルの前に並ぶのは、二対四枚の翼を有し、腕を四本へ変化させた元仮面の天使<凝縮する者>が三十六体。
こちらの戦力はグリゴリの堕天使十七人と私、ケット・シーのケッティ、幻獣のスコルとハティだ。
あの凝縮する者は形体を変化させ、明らかに強くなっている事が見て取れる。
「ルシファー様、如何いたしましょうか」
「そうだなぁ……」
ケッティとスコル、ハティが横に並び、音を立てないようにサリエルも集まって来ていた。
数的にも二十一対三十七で天使側が優勢なのは変わらない現状をどうするか…………
「まずはサリエル、グリゴリの中から回復が得意な者と戦闘が得意な者にわけてくれる?」
「了解しましたルシファー様」
「スコル、ハティは少しキツイかもしれないけど、三十六体の凝縮する者を引き付けて市街地を時計回りに走り回ってくれるかしら」
「頑張るんだよぉ」
「分かったのぉ」
そこから対する凝縮する者について簡単な説明をした。
「仮面対策については以上。
私はガブリエルを抑えるから、ケッティとサリエルで上手く連携してスコルとハティのサポートもお願いね」
「了解しました」
「はいニャ」
サリエルはグリゴリの堕天使を集め作戦を伝えた。
大鎌を片手で回しながら、回復を得意とするアルマロス、バラキエル、ペネムエの三名をスコルとハティの周回進路上に配置していく。
サリエル自身は回復役の護衛と魔眼で状況確認し指示を出す司令塔だ。
「残りはウチと凝縮する者を一体ずつ削り消して行くのニャ!」
全員の準備が完了した事を確認。
――<ユニゾンハウリングバイト>
スコルとハティが遠吠えにより空気を震わせ数秒だが麻痺させ敵対心を集めた。
私は間を置かずにガブリエルへ漆黒剣で攻撃し誰も居ない方へ誘導。
一拍置いてスコルとハティが凝縮する者達を引き連れて走り出しす。
――<シャドー・バインド>
敵対心が完全に乗っている事を確認したケッティは凝縮する者一体の影を縫い足止めした。
「今なのニャ! 囲んでやっちゃうのニャ!」
「「「うぉぉぉぉ!」」」
「問題なさそうなのニャ、次からは二体ずついくのニャ!」
スコルとハティが引っ張る凝縮する者達をケッティが引き抜き、グリゴリの堕天使十三人で一斉に攻撃をしかけ瞬殺。
作戦の初手は上手く行った。
凝縮する者を引き付け走るスコルとハティも、攻撃を受けそうになりながらも上手く回避している。
それからしばらく――――
凝縮する者達の間引きは順調に進んでいた。
グリゴリの堕天使が凝縮する者を倒し、ケッティが<シャドー・バインド>で次を引き抜きを繰り返し、スコルとハティの周回進路上には倒された凝縮する者達が散乱していた。
このまま順調に倒しきれると思っていた。
そんな、ほんの少しの気が緩んだ時だ。
凝縮する者達は十八体まで減っていた。
同時に十八体の死体が転がっている事になる。
そして、凝縮する者達は死体の横に立ち止まった。
そう……中位天使達の時と同じように喰い始めたのだ――――。
凝縮する者達の翼の枚数は二対四枚のまま変わらなかった。
だが、腕は四本から六本へと変化。
十八体の魔素が、増大した事を肌で感じ取れる程に膨れ上がった。
ここで再びスコルとハティが敵対心を集めるべく――<ユニゾンハウリングバイト>
麻痺は…………耐性が付いたのか効いていいない。
凝縮する者達の視線はスコルとハティが走る方を向いているが、止まったまま何かしようとしている。
――<ホーリー・ジャベリン>
凝縮する者達の六本の手に光の投擲槍が現われ、太い腕を引き絞り放たれた!
十八体から計百八本にも及ぶ攻撃が飛んで来る!!
異変に気が付いていたケッティは咄嗟に魔法を使った。
――<シャドー・ムーブ>
走っているスコルとハティが影の中に沈んで行き、居た場所には光の投擲槍が全て地面に突き刺さった。
十五メートル程先の建物の陰からスコルとハティは姿を見せ、振り返り状況を理解したようだ。
「やったなぁ! ボク達怒ったんだよ!」
「ケッティ達は離れてなのぉ」
「危ない事やりそうなのニャ! みんな少し離れるニャ」
双子の幻獣たるスコルとハティは捻じれた角の上に魔素を凝縮させた。
これは母親のフェンリルも使っていた大技だが、この場で見た事のある者はいない。
――<エクリプスインパクト>
空間に穴が開き、ゆっくりと大きな塊が顔を出す。
そして、元仮面の天使たる<凝縮する者達>がいる地点に隕石は落ちた――――。




