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第二十五話:凝縮する者

 ――直径三百メートルにも及ぶだろう底の見えない大穴が市街地の中心に開いた。


「集団合成極大魔法<聖なる終末を告げる雷ホーリーフォール・オブ・トワイライト>――――なかなかの威力でしたが、雑魚どもを全て消し去るには至りませんでしたか……」


 ガブリエルがエパルロラの砦上空から散開した私達を見下ろしている。

 六芒星を描いていた中位天使達は魔素(マナ)を一気に消費、酷使し疲弊しきってたようでぐったりとなり、仮面達に支えられている。

 連続使用には耐えられないように見えるが…………



 土と風の霊素(エーテル)で壁を作り反らした事で直撃は避ける事ができた。


「随分と派手にやってくれたわね!」


 ガブリエルを睨みながらも、まずは被害状況を<エアリアル・スキャン>で確認。


 大きな闇の魔素(マナ)を持つケッティ、スコル、ハティは状態に乱れがないので問題ないだろう。

 他、グリゴリの同士達や住人は輝きが小さくなっている者もいるようだが、完全に消えてしまっている者はいない。

 怪我している者も多いだろうが生きている。


 だが、目の前の惨状に意気消沈し、士気が下がっている。



 ――熾天使(してんし)ガブリエルに向け<死せる戦士の剣(エインヘルヤル)>を抜刀。

 大きく深呼吸し、魔素(マナ)を込め、私はエパルロラの砦にいる同士や住人に向けて叫んだ。



「諸君!創世主とは、天使とは何なのだ!


 この大穴を見ろ……

 今、今まさにだ、この街が焼かれた…………


 我々は怒りを一つに結集させ、天使達の抑圧に抗わなくてはならない。

 我々は決して屈服してはならない。

 我々がもし屈すれば滅ぼされるだろう。

 我々は自由であるはずだ、自分達の居場所は自分達で守るのだ。


 奮い立て、立ち上がるのだ!


 私、ルシファーに続け!

 エパルロラの砦の同士達よ!」



 …………


「「「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」



 熱く語られた演説に一拍の間を空け歓声の嵐が巻き起こる。

 あちこちから賛同の言葉が漏れ、士気が回復したのが感じ取れた。



「ハッハッハッハ…………雑魚の分際でこの力を前に壊れないとか面白い。

 では、続きと行こうではないか」


 ガブリエルが槍を振り上げると仮面達が中位天使の前に整列した。


「ガブリエルが何かするつもりだわ。

 同士達よ、動ける者は共に天使達を倒すわよ!」


「ルシファー様に続きます!」

「エパルロラの砦を好きにさせるなっ!」


「中位天使と仮面は任せる、勝利を掴むわよっ」


「おおぉぉぉ!」


  

「スコル、ハティ、同士達と中位天使をお願いできるかしら?」

「任せて、問題ないよぉ」

「了解なのぉ」


 だが、次の瞬間驚愕の光景が目に入ってきた…………



「なっ!?」


「くっ、喰ってるだと……」


「………………」


 

 仮面達は中位天使の方へ振り返り、面の口元がスライムのように流動的に形を変え喰い始めた――――。



 そして――――


 中位天使を取り込んだ仮面達の翼が一対二枚から二対四枚へと枚数を増やす。

 翼だけでは無い。

 腕までもが二本から四本へと変化した。


 仮面は流れるように体に吸い込まれて行き、能面のような無表情な顔が晒された。



「集団合成極大魔法で大きく魔素(マナ)を消費した十二体の中位天使が仮面の胃袋へ消え、三十六体の仮面が中位天使へと進化しただと!?」



 ――目の前で起きた凄惨な行為に一同言葉を失う。

 天使達に一体何が起きていると言うのか…………



「さて仮面の実験も最終段階を迎え。堕天使の諸君には感謝する」


 ガブリエルがそう告げると、元仮面の天使達の無表情な顔に入れ墨のような紋様が現われた。


「一応紹介しておこう。彼らは<凝縮する者(コンデンサー)>、仲良くしてやってくれたまえ」



 私は不敵な笑みを浮かべるガブリエルに警戒心を数段上げた――。



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