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第二十二話:エパルロラの砦へ向けて

――<闇黒の城塞都市(スコタディ・カストロ)>より戻り夜が明けた。


 プロエレフシの森。守護樹の家の外。

 蒼い装いに身を包んだ魔女が、朝の心地好い風と樹木の息吹を感じているようだ。


「……あれ何かしら?

 アラトト山脈方面の空に何かが飛んでいる?

 しかもかなりの大きさ…………!?」


 その異様な光景に何かを感じ、踝丈(くるぶしたけ)まであるスカートの裾を持ち慌てて家の中に入って来た。

 

「どうかしたの? ディオニュソス」

「えっえぇ…………アラトト山脈の上空に巨大な箱舟(クジラ)

 ――が浮遊していまして」

箱舟(クジラ)…………?」


 今日はいよいよグリゴリ教団本部がある<エパルロラの砦>へ向けて出発する。

 そこで前もって転移先の様子をディオニュソスが調べていたのだ。


 樹木を介して見た事を聞く。

 ――――私は焦慮した。


 体の芯を冷やりとしたものが貫く。

 もう少し時間が残っているかと思っていたのだが……。


創世主と天使達(やつら)が動き出したようだね。急がなくては…………」

「準備が整い次第行くのかニャ?」

「あぁ……すぐにでも出発しよう」

「ボク達はいつでも行けるんだよ」

「準備万端に整ってるのぉ」


 赤と銀の幻獣兄妹は可愛らしい姿で待っている。


「アラトト山脈側をまわると時間が掛かるから港町シパリラを通り抜けるわよ」

「一度魔女裁判に乱入して目を付けられているけど平気かニャ?」

「私とケッティは少し外見を変えるわ」

「ニャ!」


 私は<縮崩収納庫>の衣装箱をゴソゴソ。

 闇黒の城塞都市(スコタディ・カストロ)で蛇竜ヴィーヴィル討伐後、身長が伸び、胸の大きさも増し、十五歳ぐらいから二十歳ぐらいに見えるようになったが、黒竜(ヘイロン)装備の上から白いクロークを着た。

 念には念を入れウィッグを二つ取り出し、金色のウィッグをかぶり、もう一つのウィッグをケッティに渡す。


 ケッティの方は白金のウィッグをかぶり、魔素(マナ)で服装をチェンジ。

 ホルターネックと袴が一体となった装束に帯を締め、腰に黒影刀<闇竜>を挿している。背と両肩の布が無く動きやすそうではあるが、腋の部分まで露出していて少々刺激的だ。


 

  ◇◆◇◆


 ――ケッティの影移動<シャドー・ムーブ>で飛んだ。

 建物の影からケッティが顔を覗かせ、周囲に人がいない事確認し<港町シパリラ>に降り立つ。

 街を東西に貫く列柱道路では人々が上空を見上げ、北東にあるアラトト山脈の方を指差している。


「ここから先は静に街を抜けるわ、気をつけなさいよ」

「了解なのニャ」

「わかってるんだよ」

「は~い、なのぉ」


 交易都市であるこの街は多数のキャラバンも滞在していた事もあって、人だかりで道が埋めつくされていた。


 丁度よく人混みに紛れ怪しむ人はいないようだ。


 途中で見上げて空を確認したが、確かに青く光る巨大な箱舟(クジラ)が上空を旋回しながら上昇していた。

 何か四角い箱のようなものが腹の下を追随している。


 あの箱は何なのだろうか……


 気になる事もあるが、今は街を抜ける事が優先事項だ。

 人混みを縫うように東へ進む。


 街の至る所で兵士達がいたが空を見上げていた為、呼び止められる事無く街を抜けれた。



「あの岩の陰でスコルとハティは元の姿に戻ってくれる?

 あそこから背中に乗るわ」


「これでいい?」

「大丈夫なのぉ?」

「ああ、あろうがとう。宜しくね」

「お願いするのニャ」



 スコルの背中に私が、ハティの背中にケッティが乗り、全速力で川沿いを南東方向にひた走る。

 目指すはグリゴリ教団本部がある<エパルロラの砦>。

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