第二十話:後席と再認識
――女王スカーサハのガーデンパーティで多数のケット・シーを紹介してもらった。
後から知ったのだが、ケット・シーの貴族は二種類に分かれていて、現実世界で街の縄張りを仕切っている存在と魔女の遣い魔となった存在だ。
前者は街に猫の相互共有網を構築しており、<闇黒の城塞都市>の闇鏡の間が拠点となり、ケット・シー全体で情報を共有しているのだそうだ。
ちなみに、ケッティは娘で盲目の魔女アラディアの、シュトレールは樹木達と繋がる事ができる魔女ディオニュソスの遣い魔で後者。
『我らケット・シーは、これよりルシファーの目となり耳となり協力を誓おう』
――女王スカーサハの言っていた意味が理解できた。
ケット・シーの男性陣は男性陣で集まり庭園で語らっている。
女性陣は後席で庭園から場所を移すと言う事で、私はスコルとハティを連れ場所を変えた。
ケッティも男装ではあるが♀なので一緒だ。
ちなみに、この場に女王スカーサハはいない。
他の女性陣と城内の黒い床に白いラグがひかれ、天井の周りを囲むように彫刻のような装飾が施された部屋に入った。
白レザーのカバーにフェザーを使用し、背あたりのよいクッション、程好い硬さで低めの安心感あるソファに座る。
膝の上でハティが横になり、隣でスコルが欠伸しているがティーカップに手を伸ばした。
「低温でゆっくり抽出したようで黄金色に輝き透明感ありますわね」
「香りは立っているのに喉越しよく渋みが少なく飲みやすいわ」
ほのかな甘みを感じつつ、しっかりと奥行きがある素晴らしいお茶だ。
女性陣から感想が口々に語られる。
「こちらのお菓子は味が濃く苦みの中に深いコクのあるチョコレートかしらね」
砂糖を使ってないのだろう、甘みのあるお茶と相性が実に良い。
お茶を片手に懇談がはじまった。
「――街のパン屋の息子が女主人に恋心を抱いている」とか
「砦で夜な夜な人間の娘が攫われている」とか
「山脈の方に飛ぶ光るものを見た」とか
この場では影の世界の事だけでなく、現実世界の事まで様々な噂が飛び交う。
女性と言うのは噂が好きなのだろう。
恍惚とした表情で噂を聞き、語り、共有することで結束感を高め、関係を強固にしているようだ。
噂のついでに、猫の相互共有網での情報伝達はどうしているか聞いたところ、闇の魔素を練り精神感応波を作り出す<ダークネス・チャネリング>と言う魔法を使う事で、闇鏡の間の壁面に填め込まれている無数の黒い大きな鏡と交信可能で、自分側は影か水面を闇鏡の代わりにしているそうだ。
「大分話し込んでしまったようですわ」
「そうでにゃりんすね」
「そろそろ男性陣に合流しましょう」
程なくしてそれぞれ流れるように解散していった。
私達はどうするべきか……。
迷っていると猫耳のメイドのリゼシアがやってきた。
「ルシファー様、宜しければお泊りになられては? と女王陛下より言付かっております」
「ケッティ、どうしようか?」
「お言葉に甘えるのもいいですニャ、あとは街の方を散策するか家に帰るかですニャ」
「――――ゆっくりしたい気持ちもあるけど、時間を無駄にはできないの帰る事にするわ」
「畏まいりました。そのようにお伝えします」
◇◆◇◆
――プロエレフシの森。ディオニュソスの待つ守護樹の家へ戻ってきた。
地下迷宮で多数の雑魚と黒き一角黒馬、蛇竜ヴィーヴィルを討伐。
スコルとハティは額から角が生え、<死せる戦士の剣>は覚醒し帯電閃光状態になれた。
同時に水晶から一振りの黒い刀、黒影刀<闇竜>を獲得しケッティも武器を得た。
そう言えば、黒き一角黒馬の鋭く尖った一本角は何か素材として使えるだろうか?
女王スカーサハ主催のガーデンパーティでは、ディオニュソスの遣い魔シュトレールに出会った。
結構色々あって長かったように感じるが、あちら側での一時間は現実世界の四十秒なので、こちら側ではまだ十分前後しか過ぎていない。
創世主に挑む為に力を集める。
その為に次にすべきは堕天した同士達の作った教団<グリゴリ>への接触。
夜が明けたら途中の<港町シパリラ>まではケッティの影移動<シャドー・ムーブ>でショートカットし、グリゴリ教団本部がある<エパルロラの砦>を目指す事になる。
<港町シパリラ>からも成長したスコルとハティに跨って進めばかなりのスピードで向えるはずだ。
地上でこれまで遭遇した敵戦力は――
熾天使セラフィエルと側近天使のゼルエル、ツァフキエル。
多数の仮面の天使。
幻獣フェンリルに止めを刺した、光が滝のように叩きつけ降り注ぐ極大魔法。
それに加え、衛星軌道上での百五十日に及ぶ戦いで対峙した熾天使ミカエル、熾天使ガブリエル、熾天使ウリエル。
そして妻の仇、熾天使ラファエル。
これら四大熾天使達がどこで現れるかも分からない。
決して気が抜けない旅になるだろう事を再確認する――――。




