第十八話:ドレスに身を包んで
――地下迷宮から戻り、女王スカーサハに報告後、用意された部屋で疲れを癒すように休んでいた。
ケッティは黒影刀<闇竜>をずっと見つめており、私はベットで横になった。
スコルとハティは魔素操作が上達したようで、大きな体をケッティの猫型時と同じぐらいの大きさにして私の隣で丸くなっている。
先程女王に『後程、招宴を催したいので参加して欲しい』と頼まれ控えているところだ。
しばらくベットでウトウトしていると部屋の扉が叩かれた。
「ルシファー様、招宴の準備は間もなく整います。お召し物の準備を手伝いに参りました」
「そうか、このまま鎧って分けにもいかないか……ケッティお願い」
「今開けるのニャ」
ケッティに扉を開けてもらう。
「リゼシアと申します。宜しくお願いします」
「ルシファーです。宜しくね」
少し強張った声で丁寧に挨拶された。
起き上がりながら名乗り返してしておく。
白いブラウスに濃紺の膝上スカート、肩紐がついた腰巻エプロン。
彼女、リゼシアは可愛らしい猫耳のメイドだった。
「何着かお召し物をお持ちしましたが如何致しましょうか?」
「それなら手持ちがあるので大丈夫」
ちょっと忘れていたが、<縮崩収納庫>からアザゼルに貰った衣装箱をゴソゴソする。
――良さそうなのがあった。
白いビスチェタイプのロングドレス。
黒竜の鱗鎧を外し、白いオイルレザーワンピースも脱ぎ拘束する物がなくなる。
開放された二つの巨大な球体はゆったりと揺れ落ち、リゼシアの視線が注がれた。
「ルシファー様のそれ凄いですね……」
リゼシアの言葉に頬が少し熱を帯びるが、気にせず下着姿になった。
コンプレックスではないが、私の胸は隠すには大きくなり過ぎた…………。
――なので思い切った。
上半身が太って見えないよう肩紐がなく胸元まで大胆にカットされ、グラマラスなバストラインをキレイに出す為にビスチェタイプのドレスだ。
猫耳メイドのリゼシアに手伝ってもらい、セミロングの髪はシンプルに後ろで纏め上げた。
立体的なビスチェラインがウエストで一度絞られくびれを強調。
丈は長いがアシンメトリーな裾が動く度に揺れ軽やかだ。
「実に綺麗でカッコイイです!」
リゼシアが自分はメイドと言う事を忘れているように目を輝かせて興奮気味だ。
ケッティの方はと見てみると、いつものように魔素で作っているのだが――――
長い黒髪は前髪も全て上げ、後ろで縛りポニーテールにまとめており、黒ワイシャツに細身の黒スーツだった。
もともと人型時は体のラインが細やかで妖艶な女性だったが、男装姿もかなり似合っている。
「ケッティ様も女性ですが美男子ですね……」
「今日はウチがルシファーをエスコートするのニャ」
「会場には既に集まり出してはいるようですが行かれますか?」
「待っていても休んでいるだけだし行きましょうか。エスコートお願いねケッティ」
跳ねるのを堪えているような軽い足取りで歩くリゼシアに着いて廊下を進む。
小さな姿になったスコルとハティも一緒だ。
――招宴だと聞いていたので、てっきり室内だと思い込んでいたのだが外へと案内された。
内郭城壁から闇鏡の間へ向かう途中に通った噴水庭園ではなく、建物の反対側に位置するであろう黒石英の石畳に彫刻が施された丸柱が立ち並ぶ外回廊。
噴水庭園と同様の黒薔薇や黒紫のネモフィラが咲き誇っている大きな庭園だ。
開放的な空間で刻一刻と移り変わる夜空も美しい。
外回廊のテーブルには真っ白なクロスのかけられ、オードブルなどの食事が並べられている。
石畳の一角にはバーベキューグリルも運び込まれ、肉か何かが焼かれているようだ。
庭園には既にかなりの人数がいた。
他の来賓と同じようにウェルカムドリンクを受け取りグラスに口を運ぶ。
スカイブルーのスパークリングな飲み物は一口含むと甘みがあり飲みやすい。
何杯でも飲めてしまいそうだ。
それから少しして――――
女王スカーサハが庭園に姿を見せた。
「招宴とは言ったが妾は堅苦しいのが好きではない。
皆、自由に寛いでくれると嬉しく思う」




