第十七話:黒影刀<闇竜>
――ヴィーヴィルを輪切りにし、水晶のあった場所で一振りの黒い刀を見つけた。
ケッティが黒い鞘から抜いて見ると、反りが無く直刃で漆黒の刀身に竜を模した刃紋が浮かぶ。
一瞬見ただけでそれがかなりの業物だと解る。
「この刀はウチが貰ってもいいかニャ?」
「私には<死せる戦士の剣>があるし、よいと思うわよ」
両腕で抱きしめるように黒刀を持ちケッティが恍惚な表情をしている。
「では残り半周を狩って上に戻るわよ、気を引き締めなさいっ」
「ウチに試し斬りさせて欲しいのニャ」
「スコルとハティと仲良くね」
どこかまだ目がうっとりとしているが大丈夫だろう。
「ガウッ!」
「はいなのぉ」
進みだすとやはりと言うか……。
ひたすらにネズミとコウモリだった。
それは先程の広場までの道中以上にビッシリと床を埋めつくしている。
――だが、ケッティ、スコル、ハティの快進撃は凄まじく鬼気迫るものがある。
ヴィーヴィル戦で活躍しきれなかった鬱憤を晴らしているかのようだ。
おかげでゆっくり歩いてもいられず、走って後ろを追いかけている。
距離にすれば同じぐらいの距離だったはずだが、行きのハイペースを超えるペースで城の地上階に戻る階段に到着。
手前の石造りの橋に一角黒馬が再発生していたが、こいつは私が貰って瞬殺しておいた。
「ボク達強くなったねぇ」
「そう思うのぉ」
「ケッティの近接で戦うところはじめて見たが、結構様になってたわね」
「ウチも一応貴族なので嗜みとして剣技も磨いてたニャ」
「なるほどね、今度手合せしてみる?」
「それは遠慮しておくニャ……」
「残念――――さて、闇鏡の間で女王スカーサハ様に報告しないとね」
◇◆◇◆
ベルベットの絨毯が敷かれた大広間謁見室、闇鏡の間の扉を開けた。
「スカーサハ様、只今戻りましたニャ」
「随分と早かったな!」
「一応水晶に入っていた蛇竜を倒し、周囲を索敵しましたが他に強そうな反応がありませんでしたので」
「妾も闇鏡で見ておったぞ!
だが、肝心の水晶でのあたりが黒くてよく見えなかったのじゃ」
「ヴィーヴィルの攻撃に対応する為に黒い霧を出してしまいました――」
「細かく聞かせて欲しいぞ!」
闇鏡の間には、整列している猫耳ローブに身を包んだ者たちがいるが、そんな者などお構いなしにスカーサハ様、とても興奮気味である。
とりあえず、水晶から蛇竜ヴィーヴィルが出てきたが倒し、黒い刀を手に入れて帰還した事を詳細に報告した。
「なるほど―――――まず、蛇竜を討伐してくれた事に礼を言うのじゃ。
妾の国に及ぶであろう被害を未然に防いだ功績は勲章に値する」
「勿体ないお言葉ですニャ」
「妾との手合せした時に使わなかった――面白そうな漆黒剣については別途追及するとして、後は黒い刀についてだな」
私が手合せで全てを出さなかった事根に持ってるのか…………。
そんな事を考えて居ると横に立っていた猫耳ローブの一人が前に出てきた。
鞘から抜き上に掲げて光に当てながら鑑定している。
そして、一呼吸息を吐き口を開いた。
「鑑定結果を申し上げます。
冥界より更に下層にあるとされるタルタロス。
その穢れ澱んだ空間にある金属、タルグテンを使って作られた刀。
名を黒影刀<闇竜>ですにゃ」
「黒影刀<闇竜>――――」
「地上より深くにある冥界が<闇黒の城塞都市>に近い場所とは言っても、タルタロスの金属は容易くは手に入りませぬにゃ。それに大業物…………にゃ」
「ウチがこれ貰って良かったのかニャ?」
「それは妾の名において許す」
「蛇竜討伐の報酬と言うわけではないだろうけど、相応しい物が手に入った事は喜ぶわ。良かったわねケッティ」
ケッティは漆黒の刀身に浮かぶ刃紋を見て気を引き締めた。
「部屋を用意させるのでしばらく休んでくれ。
後程、招宴を催したいので参加して欲しい」
「了解致しましたニャ」
ケッティに続いて私、スコル、ハティは一礼し闇鏡の間を後にした。
今いる影の世界での三ヶ月が現実世界の一日。
よって、影の世界での一時間は現実世界の四十秒と言う事で、現実世界ではまだ五、六分しか経っていないのが本当か確かめたくなるな。




