第十五話:蛇竜ヴィーヴィル
――水晶が崩れ、中からヴィーヴィルと呼ばれる蛇竜が現れた。
ヴィーヴィルの広げた翼が巨体を空中に留める。
私の赤黒い髪は激しい風圧でなびき、じわりと汗が頬を流れた。
後のスコルとハティは毛を逆立て、唸り威嚇。
ケッティは冷静にヴィーヴィルを凝視する。
「あれは全てを出して本気で挑まないと死ぬな……
何かあれの情報はないのかしら?」
「こいつを倒す方法は今見極め見つけ出すしかないのニャ」
<死せる戦士の剣>を納刀したまま、漆黒剣を展開し直した。
「グワウォォォォッ!」
ヴィーヴィルが咆哮し左右に揺れ、鱗に覆われ胸を波打たせる。
直後、私達に向って尾の振り上げられた。
「集え、漆黒の刃!」
尾は巨躯ではあるが、動きは軽く、空中から叩きつけるように迫る。
鈍い音を立て尾の攻撃を漆黒剣で受けた。
――が、砕け、飛散。
ヴィーヴィルの額にある赤い宝石に魔素が吸い込まれ輝きが増す。
「この魔素はなかなかに美味いな」
「!?」
「今度はボク達の番だっ! 行くよハティ!」
「はいなのぉスコルっ」
赤と銀の二重奏を奏でるようにスコルとハティが対となり、下りてきたヴィーヴィルへ襲い掛る。
蝙蝠のような翼を旋回し往なされたが、二匹は動きは止めなかった。
すぐさま背後で再跳躍し、両翼を貫き風穴を開けてみせた。
「くっ、小癪な事に犬風情に翼をやられるとは……
素直に死んでおけばよいものを!
逃がさぬ、生かしては返さん、覚悟せよっ!」
地へ落されたヴィーヴィル。
蛇のように尾で這い、不気味な瞳の輝きを一層強くした。
そして、穴が開いた事により翼の動きが速度を上げ、鋭い爪が襲い来る。
私は後ろに下がり、スコルとハティは左右に飛んだ。
「なかなか厄介な相手ね」
ここまでまだ被弾はしてないが、当れば一撃でかなりの致命傷を受けそうだ。
気は抜けない。
スコルとハティが一瞬の隙を突き攻撃にでる。
尾と胴へそれぞれが噛みつくが鱗に阻まれてしまった。
鋭いはずの牙が刺さらず、翼の骨部分で掃われる。
そして、先程開けたはずの翼の穴が見る見るうちに塞がって行く!
「くそっ、自己修復だと――!?」
「そろそろ遊びは終わりだ」
その一言でヴィーヴィルはもう一段速度を上げた。
暴れまわり、近づくのが難しい。
漆黒剣で遠隔攻撃するにも壊され魔素を吸収されてしまう。
どうするのが最善か――?
腰に下げる剣――<死せる戦士の剣>
アザゼルが鍛錬した一振り。
刃は煉獄鉱石で作ったパガトリオア鋼だが、刃の芯鉄と鍔に黒竜の牙が使われ、柄頭に魔石が填め込まれている。
初めて相対した際には意識を引き込まれそうになっていたが、ケッティの助勢で抑え込む事に成功した。
元々私は光を司っていたが堕天した事で、闇を司る黒竜とも相性がよいと言えるよう。
それでも、本当の力を解放できていないように思る。
あれ以来剣の言葉を聞けていなかったからだ。
愛剣と呼ぶまでには至っていないだろう――――。
この剣で駄目なら、現時点でヴィーヴィルへの対抗手段はほぼ無い。
「今更悩んでもしょうがないわね」
――――抜刀。
【使用者……ノ……魔素量ガ……必要値……ニ達シタ……事ヲ確認…………】
【我ガ……刀身ニ……魔素充填セヨ……】
初めて相対した時よりも言葉が滑らかにも聞こえた。
刀身に魔素を……?
今までは纏わせていたが、そうではないと言う事なのだろうか…………?
言われた通りに刀身を包むイメージから、中心に集めるイメージに変えてみる。
【<死せる戦士の剣>……人工遺物制御知性…………我ガ 名ハ 黒竜】
【魔素充填…………完了】
【解析……開始…………】
【………………作業完了】
次々と<死せる戦士の剣>から言葉が流れ込んで来る。
そして、使った事のない詠唱句を口にした。
「この身に宿りし魔素を解放す、<エンハンス・リンフォースメント>!」
これまで薄らと紫に光っていた刀身。
それは赤紫へと色を変えた。
芯鉄の内部で魔素が凝縮。
密度を高めたエネルギーは刃に帯電。
更に刃から放電し、青と黄の閃光を走せている。
【リンフォースメント 成功 シマシタ】
【オハヨウ ゴザイマス マスター】
【闇ノ輝キ 取戻シタト 報告】
【ワタシ 黒竜 ガ サポートスル】
「あのヴィーヴィル、魔素吸うし、牙も通らないけどいけるかしら?」
急な変化に驚きつつも質問してみた。
【敵勢対象討伐目標確認】
【……………………】
【五竜タル ワタシ 問題アリマセン】
【可能 デス】
私は帯電閃光状態の<死せる戦士の剣>を構えた。
ヴィーヴィルを見れば傷が無かったかのような状態に戻っている。
再び翼を広げ――――飛翔した。
額の宝石が輝き、生える二本の角も燃えるように赤い。
「さぁ第二回戦と行きましょうか」
「ぬかせ小娘、蹂躙してれる」




