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ダンジョンマスターは魔王ではありません!!  作者: 静電気妖怪
一章〜盤外から見下ろす者、盤上から見上げる者〜
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1話「終わった戦い、始まるゲーム」

地球編が始まりました!

異世界編の方を見ていない方はそちらから読んでだ方が良いと思います。

 

 その “声” は唐突にやって来た。



『これからゲームのルールを説明しよう』



 頭の中に直接響いてくる “声” は楽しげな口調でそう言った。


 あどけなさが残る子供の声。男とも、女とも取れる中性的な声。新しいオモチャを貰ったような楽しみで仕方ない声。


 そんな声が話しかけてくる。



『参加者は魔王が一人、ダンジョンマスターが九人、そして全人類だ』



 聞いた限りではお巫山戯でしか思えないその内容。鼻で笑いたくなるが “声” は挑戦的だ。信じなくても良いが、後で後悔するよ? そんな風な口調だ。



『次は各々の勝ちとなる条件だ。魔王は一番シンプル。死んではいけない、これだけだ』



 確かに単純だ。当然すぎてそれがルールとして存在すること自体が不思議だが、将棋、チェスなど様々なゲームに置いて王やキングという様な存在なのだろう。



『次にダンジョンマスター。ダンジョンマスターはどんな手段を用いても構わない。人類より先に魔王を倒せ。そして、倒したダンジョンマスターがこのゲームの勝者となる』



 ダンジョンマスターは王として君臨する魔王を倒す存在となった。守る存在ではなく敵対する存在に。


 更に、それは全人類との競争でもあった。加えて、倒したダンジョンマスターが勝者になるのだからダンジョンマスター同士も敵対することになった。



『ここまでくれば人類の勝ちの条件はわかるだろう? 当然、ダンジョンマスターより先に魔王を倒すことだ』



 全人類と各ダンジョンマスターの魔王討伐戦競争が完全に図面化された。



『さて、最初に言ったがこれはゲームだ。ゲームなら勝者には褒美、これが鉄則だろう?』



 楽しげに話す “声”。悪戯前の子供の様な雰囲気で話すを続ける。



『勝者にはどんな願いでも一つ叶えよう。富、名誉、地位⋯⋯そんな単純なものだけじゃない。星が欲しいなら作ってあげよう。逆に壊したいのなら跡形もなく塵にしてあげよう。過去をやり直したいなら戻してあげよう。未来へ行きたいなら連れて行ってあげよう』



 そう言って “声” はより一層語気を強めた。まるで相手の欲望を掻き立てる様で、相手の痛むを慰める様で “声” は小さく嗤った⋯⋯そんな気がする。



『ご覧に通りどんな願いでも叶えよう! どんな難題だって応えよう! 君達の欲望のままに溺れてあげよう!』



 徐々に興奮を露わにしていく “声”。

 しかし、言い終わると同時に声のトーンが一気に元に戻った。



『さて、目の前に吊るすだけではゲームに面白さはない。勝つための条件があるなら当然、負ける条件もある。


 魔王に関しては勝つも負けるも同じ様なものだ。だが、他は違う。


 ダンジョンマスターの敗北条件はダンジョンマスターの死亡、もしくはダンジョンコアの破壊だ。どちらか一方でもあった場合即座に敗北が決定だ。


 そして人類は全人類が死亡、もしくは全人類の戦意喪失した時だ』



 見方によっては圧倒的に人類が有利であり、ダンジョンマスターが不利なゲーム。しかし、“声” の説明はまだ終わりではなかった。



『これで説明を終わりにしても良かったけど少しだけヒントをあげよう。


 まず、魔王のダンジョン(・・・・・)からは定期的に自我を失った魔物が地上に放たれる。放たれる魔物は千差万別だ。


 龍の様な強大な魔物が放たれることがかなり少ないが無い訳では無い。逆に、ゴブリンの様な比較的弱い魔物は多いだろう。魔王とは魔物の王だ。様々な魔物が現れるだろう。


 そして、ダンジョンマスターが持つコアについてだがこれは破壊すると特殊な能力を与えてくれる。これは、ダンジョンマスターを倒した場合でも適応される。


 当然、人類が壊してもダンジョンマスターが壊しても貰うことが出来る。積極的に壊すことをオススメしよう』



 徐々に声が聞こえ難くなっている、そんな感覚を不思議と感じる。



『さて、説明は以上だ。君達が目を覚ますその時、戦いは始まる。健闘を祈るよ』



 全く案じている様に聞こえない声色だ。

 そして、その言葉を最後に “声” が頭の中に響いてくることはなかった。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「ニュースをお伝えします」


 多くの人にとってはよく見る光景。


 テレビと言う革命的な発明品が現代では一家に一台以上あるこの現代。小さな箱の中に人が入り込み情報を伝える。


 そして今も一人の男性ニュースキャスターがニュースを伝えていた。


「◯月X日、ーーー高等学校で一時的に全生徒が閉じ込められる事態が発生しました。その後、生徒は無事解放されましたが四人の生徒が行方不明となり現在も緊急捜索が行われており、警察、自衛隊は今後の捜索範囲を広げるとの見通しです。また、この一連の犯行は組織立った動きである可能性を考慮して警察が慎重に捜査を進めています」


「△月◇日、日本で突如発生し、多くの死者を出した感染症。今は世界各地でも発生していることは明らかになりました。また、各国の統計が公表され、現在では死者は約18億人。率にして世界の人口の25%が死亡する人類史上最悪の厄災として認定。また、感染の疑いがあるのは約18億人。その中で、体の一部が欠損、意識不明などの重体になった方は約80人となっております」


「◽︎月×日、本日、跡部内閣総理大臣が先日行われた世界各国緊急首脳会談の内容を発表しました」


 映る人物は変わり、一人の男性が映った。字幕には『跡部内閣総理大臣の発表』と映っている。


「今現在、世界各国で感染症に似た症状の被害が出ております。これらを受け我々は新たにWCE、世界侵略者対応機関を設立いたしました。世界各国で綿密な連携を取り、これから起きるだろう様々な事態に全世界で対応していく組織でございます」


 そしてまた映像が移り変わる。


 また変わる。そして消える。変わる、消えるを繰り返して語られる一連の物語。伝いたいことが多くてでも伝え切れない。


 誰かが映る。

 喜ぶ人、悲しむ人、逃げ惑う人、戦う人。各々がそれぞれの感情を作り出す。そして、それ等は明々と映され見ているこちら側にも同じ感情を抱かせる。


 そしてまた⋯⋯映像が映った。


「◯月X日、突如に全世界を襲った大地震や大型台風などの自然災害は多数発生した昨日から一日が経ちました。世界各地で多くの爪痕を残した人類史上初の大規模災害ですがこの事による犠牲者は⋯⋯()()()()()()()。医療機関などもガラスが破損するなどの被害は出たものの停電や火災などの二次災害がなかったとのことです。また、この大規模な自然災害により⋯⋯地球上に存在する大陸が⋯⋯大きく移動しました」


この映像を最後に新たな映像が映ることはなくなった。


ただ黒く暗い闇だけが世界を包み込んでいた。


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