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三話「三日勇者」

忘れたどころでない程経ってから続きを投下してみる。

「どういうことだ?」


 思わず耳を疑った。私は勇者****。国王陛下より魔王討伐の任を受け、旅立って二日目の駆け出し勇者だ。だが、それも終わりにしろと言われたなら、私が少々乱暴に問いを投げたとしても仕方はないと思う。


「だから、そろそろ転職した方が良いよって言ってるの」

「始めたばっかりなんだろ? 最初の職業一本で伸ばしていけば先のエリアや戦場の必要レベルを果たすのは早いかもしんねぇけど、一点伸ばしって条件満たせてもだいたい足手まといの雑魚だしなぁ」


 ムッとした私に彼らが言うには、他の職業に転職して経験を積み色々覚えることが勇者として私がこれからやってゆく助けとなるらしい。


「だ、だが、私は勇者なのだ。そんなに簡単に勇者を止めていい筈が……それに、転職して経験を積むと言うが、他の職とて一朝一夕でどうにかなるようなモノではないだろう!」


 城の兵士達とて厳しい訓練を日夜積んでいるから王城を守る屈強な兵士であるわけだし、宮廷につかえる魔法使いも幼いころから魔道の道を歩んで今があるはずだ。


「まぁ、確かに一朝一夕ではない、かな」

「だろう? だか」

「滅びの谷を朽ちた城塞抜けるルートなら二時間もあればいけるもんな?」


 へっ、と私は間抜けな声を漏らし。


「昨日のこと、忘れちゃった?」

「あぁ」


 言われて思い出したのは、廃村や廃城での蹂躙劇だ。よくよく考えれば、何もしていないのに私のレベルはあれで一気にあがった。おかげで色々な技や技能を覚えられはしたのだが、同時に釈然としない思いもしたものだ。


「つまり、アレをまたやるのか」


 確かに効果的だった。さすがに元からの本職、十年以上その道を歩んでる者には比べるべくもないが、心得があると言える程度には力をつけることが出来るかもしれない。


「じゃ、納得したら早速転職よろしく。最初は魔法使いね」

「わ、わかった」


 周りからの至れり尽くせりでほとんど何もせずに強くなっていいのかという思いもあるが、私は魔王を討伐しなくてはならないのだ。それにここまで協力してくれた猛者達に何も報いてないというのに私の感情だけを理由に拒絶するなど、ただの我儘ではないか。


「それで、転職だがどこに行けばいい?」


 魔法使いになるというのだ。なら、高名なその魔法使いに弟子入りすればいいのだろうか。


「え? メニューからサクッと変えられるでしょ?」

「めにゅ?」


 私の問いにきょとんとした猛者の一人が何やらわからないことを言うが、めにゅとはいったい何なのだろうか。


「あー、ダメダメ。この人ロールプレイ派なんだから。手間だけど神殿行くよ」

「おー、懐かしいな。まぁ、チュートリアル以外でも色々お世話になるけどさ」

「つーか、ログインボーナス受け取るのもだし、一部のクエストの受注とかもあそこだし、懐かしいって言ってる人、何?」


 再びよくわからない単語が混じるが、どうやら猛者たちの言う神殿なる場所で職業を変えることが出来る、と言うことらしい。


「しかし、神殿か……我が国にそのようなものがあっただろうか……」


 私の故郷も国王陛下に呼ばれ赴いた王都にも教会はあったが、神殿と言うモノはなかったように思われる。


「混雑してないといいな」

「この時間だと混雑不可避だろ。レイド戦の受付始まってるしよ」

「あー、そっか。レイド……まぁ、行きたいけど、今日はいっか」


 ぼそりと漏らす少年剣士、身の丈より大きな剣を背負った男は腕を組んで言い放ち、聖職者らしい身なりの少女は何やら悶々としていたようだったが、すぐに顔をあげ。


「いいのか? 何やら悩んでいたようだったが」

「いいの。勇者ちゃんと一緒に居るのもそれなりに楽しいし」

「楽しい?」


 私は人を楽しませるようなことはした覚えがないので、少女の言葉はただただ不思議だったが。


「勇者ちゃん……」


 よもや人からそのような呼び方をされることになるとは思っても居なかった。勇者様とか勇者殿ならばともかく。


「うん? いつの間に」


 呼び方を反芻している間に突然周囲の景色が変わり、慌てて周囲を見回せば、眩しいぐらいに混じりけのない白い石材で造られた荘厳な建物が目の前には聳えていて。


「一瞬で移動したと……いうのか」

「はーい、こっちだよー」

「ちょうどいいや。俺、アーチャーになってくる」


 呆然とした私の手を猛者の一人が引いて建物へ入ろうとする、いやそれは確かに彼らは私を転職させるためにここに来たのだ、だからそこに今更文句はないが。


「そんな、あっさりと」


 私が驚いたのは、台所の食材を物色して今から食べる飯のメニューを決める程度の気軽さで転職してしまう者が存在することだった。


「これが、カルチャーショックというモノなのか……」


 尚、そのあと魔法使いに転職した私は、猛者たちの前でいきなり下着一丁にされた。それまで着ていたモノは荷物入れに入れられていたが、正直訳が分からない。一瞬でほぼ全裸にされたのだ。魔法使いとしての才能を確かめるだとか、魔法使いについての説明だとか何もない。気づけば下着一丁で魔法使いになっていた。

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