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一話「私の幸運」

ちょっとスランプ風味なので気分転換に別のお話を書いてみます。

 私は勇者****。国王陛下より魔王討伐の任を受け、今日旅立ったばかりの駆け出し勇者だ。魔王討伐の旅は困難となると見て旅の仲間を募ったが、私は幸運だった。


「私は、****。本日国王陛下より魔王討伐の任を賜った。私に力を貸してくれる者は居ないだろうか?」


 腕自慢が集うと噂の酒場へ足を運んで呼びかければ良いとアドバイスをいただき、その通りにしてみれば、すぐに一つの手が挙がった。


「はーい、質問。魔王って言うけど、何レベルくらい? それからキミのレベルは?」


「魔王のレベル? 少なくとも30を下回ることは無いと思うが……」


 もし魔王のレベルがこの国の将軍より低ければわざわざ私に魔王討伐を命じることなどないだろう。


「それから、私はまだ何の実績もない駆け出しだ」


「あー、初期レベルなんだー」


 正直に告白すると、返ってきたのは先程の質問者の微妙な視線。


「ロールプレイ派の初心者さんかな?」


「魔王なんていたっけ?」


「非公開系のクエストエネミーなんじゃね?」


「じゃあ、レア報酬とか有るかな?」


 続いて周囲の人々がざわめく。思い思いに口にする言葉の中には理解出来ない単語が混じっている者や魔王を知らないという常識を疑うような者もいたが、そもそも私はこの酒場を腕自慢が集う場所と聞いて足を運んだのだ。かけだし勇者と見て私を試したりからかっているのかもしれない。噂の通りならあちらは猛者で私はただのかけだし勇者なのだ。鼻で笑わず質問をしてくれる者が居ることにむしろ感謝すべきだろう。


「で、どうするよ?」


「『普通なら痛い奴、乙』って言うとこだけど、今、イベント消化って暇してるしなー」 


「あたしは22:00で風呂落ちだからそれまでで良いなら良いけど」


「まぁ、レベル1って言うならプレイヤースキル次第でパワーレベリングもありだよな」


「俺、サブキャラのジョブ変えたばかりだから、俺のサブで良かったら同行するよ?」


 相変わらず意味のよくわからない単語が混じったりしているものの、どうやら協力してくれる者は居るらしい。


「それは助かる。未熟な身だが、宜しくお願いする」


「「よろしくおねがいします」」


 私が頭を下げれば幾人かが口を揃えて応じた。全く同じ内容の言葉を全員が口にする様は異様であったがそんなモノ、猛者達に協力して貰えることになったことと比べれば霞むか吹き飛んでしまう。


「さてと、それじゃどうしよう? とりあえず城のすぐ外で勇者クンがどれぐらい出来るかを見て、それから廃城行く?」


「廃村ツナールサで良くないか? 経験値ならもっと良いとこもあるけど、お試しなら――」


「輝石余ってるし、納品マラソンするならアイテム負担するぞ?」


 ただ、どうしようとも思った。最初の一人の前半はともかく、後がわからない。私の知らない単語が入っているとか、挑んで帰ってきた者が居なかったりかなりの腕利きでもなければ生きて帰るのが難しいと噂される場所だったりするのだが。


「一気にレベル上げれば中間装備用意しなくて良いし、廃城のクエスト報酬に勇者クンの装備出来そうな武器有ったよね?」


「あー、まぁ、あのレベルのクエスト報酬にしてはそこそこのアレか」


「武器ならガチャ回した方が早い気もするけどな。あと二週間早く始めてればガチャ十一連ただで回せたんだけどなー」


「俺、サードキャラその時リセマラしたわ」


 やはり、一部の単語が理解出来ない。経験を積み彼ら程の猛者にならなければわからない何かの不調なのだろうか。


「色々意見別れたが、一人22:00までだろ? 話し合いの時間も勿体ないし順番にいかね?」


「賛成」


「「了解」」


「りょ」


 私が一人考えていると猛者の一人がした提案に殆どの者が賛同し、この日――私はぢごくをみた。



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