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不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む。  作者: 天宮暁


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54 目的のブツ

 ――三層での狩りが終わった。


 それはもう、あっさりと。


 壁の中に引きこもり、のぞき穴からエーテルショット。相手は死ぬ。

 これを、徐々に難易度を上げながらくりかえした。


 インフェルノでも安全だったので、ヘルモードまで試してしまった。


 あっというまに、コカトリスの(くちばし)が数十本も集まった。


 ほかのドロップにいたっては、数える気すら起こらない。

 全部、アビスワームの胃袋|(という名の四次元ポケット)につっこんだ。


「さすがです、救世主さま」


「君のおかげだよ。助かった」


 本心から私は言う。

 実際、このノームの献策と貢献がなかったら、もっとめんどうな戦いになってただろう。


 なお、コカトリスは、ウロコと羽毛を持った、子牛大のニワトリみたいな見た目だった。

 そのレアドロであるコカトリスの(くちばし)は、砂色のくちばしの下に垂れた、紫色の巾着のようなものだ。これだけ見せられても、ふつうくちばしだとは思わない。たぶん、石化を中和する腺がこの中にあるとか、そんな理由なんだろうな。


「二層へのトンネルはどこに作りますか?」


 ノームがそう聞いてくる。


「うーん⋯⋯あんまり目立たない場所がいいかな」


 そうでないと、トンネルから出たところでほかの冒険者とばったり⋯⋯なんてことになりかねない。


(それがレイティアさんと派遣騎士だったりしたら最悪だ)


 私は自分の運のなさを信じてる。まさか出くわさないだろうなんて甘い期待は抱かない。

 油断してたら確実に出くわす。

 それくらいの気持ちでいるべきだ。

 実際、二層をいまいちばん精力的に探索してるのはあの二人のパーティのはずだ。現実的に言っても、出くわすおそれはふつうにある。


「二層の地図と照らし合わせると⋯⋯この先がいいかな」


 コカトリスとの不意の遭遇にだけは気をつけつつ、私とノームはトンネル候補地に行き着いた。

 この真上は、入り組んだ通路の先の行き止まりになってるはず。


 ちょうどいいことに、ここにはダンジョンの裂け目もあった。

 一層の裂け目とちがって湧き水はないが、崩れた壁から木の根が見える。

 ただの木の根でも、外の世界のものが見えると安心するね。


「せっかくだから聖域化しよっか。

 他の人がコカトリスの(くちばし)を取ってくれると、シズーさんやアーネさんの心労が減るんだけどなぁ」


 一抹の期待を抱きながら、私はその場所を聖域化する。


「まぁ、誰も手に入れられないようだったら、ギルドに匿名で(くちばし)を置いてく、みたいな手かな」


 とにかく、私は目立ちたくない。

 「コカトリスの(くちばし)をダース単位で確保しちゃいました。テヘペロ☆」なんて申し出るつもりはまったくない。


「あの子の病気が治ればそれでいい。

 売り払って儲けたいとかもないし。お金なら一層のモンスター狩ってドロップを換金すればいいしね。

 病気の王子様は気の毒かもしれないけど、それは特派騎士の仕事だよね」


 私がひとり言を言ってるあいだにも、ノームは作業を進めてくれてる。

 壁から斜め上に向かって、らせん状にトンネルを掘ってくれてるらしい。


(私だけなら浮遊魔法でもいいんだけど、まぁ、後続の人へのサービスだね。シズーさんやアーネさんのためにもなるし)


 十数分ほどしたところで、トンネルのなかから、疲れ顔のノームが下りてきた。


「終わりました、救世主さま」


「お疲れさま。ありがとう」


「いえいえ、もったいなきお言葉。救世主さまは、エーテルの尽き果てるまでわれらのために戦ってくださったのですから」


「あ、あははは」


 心酔しきった様子のノームを、笑ってごまかす私。


 それにしても、


(十数分で階段を作っちゃうのか。ダンジョン泣かせの種族だね)


 協力を得られて本当によかった。


「じゃあ、ここでお別れだね」


「名残惜しいですが、地上の人をいつまでも地中に引き止めるわけにはいきません。われらの力が必要なことがあれば、いつでも訪ねてきてください」


「うん、ありがとう」


 でも、あとになってから、「あのとき助けてやったよな? ちょっと力を貸してほしいんだけど」なんて頼むのは、私にはちょっとハードルが高い。

 私は人を助けるのは嫌いじゃないが、人に助けられるのは苦手である。まして、自分から助けを求めるなんてとんでもない。


 だから、これは正真正銘、ノームたちとの別れだと思う。


「ポポラックさんにもよろしくね。いろいろお世話になったよ」


「とんでもございません! 酋長への伝言は承知いたしました」


 大きな緑の帽子のつばをなおして敬礼らしきものをとるノームと別れ、私は掘りたての階段を上ってく。


 二層へはビル数階分くらいでたどり着いた。


 盗賊士の勘で気配を探り、魔術士の力でエーテルを探り、ミニマップで周辺を確認してから、私はおそるおそる二層に出た。


 するとそこにはレイティアさんが! ⋯⋯なんてことはなく、ふつうに誰もいなかった。


 見覚えのある場所に出たことに、ほっと安堵のため息をつく。


「あははっ。じゃあ、早く戻って、シズーさんたちを安心させてあげなきゃね」


 私は二層と一層を駆け抜け、ひさしぶりにダンジョン広場のまえに出た。

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