表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む。  作者: 天宮暁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/188

15 ダンジョン前

 ダンジョンの入り口は、とてつもなくにぎわってた。


 冒険者たちのみならず、各ギルドの出張所には、ギルドの職員が常駐している。戦士、魔術士、盗賊士ギルドのそれぞれが天幕を張り、所属冒険者の入構状況や安否情報の管理を行っていた。

 三ギルド合同の天幕では、ドロップアイテムの買取・販売もやっている。


 領主の兵も詰めている。ダンジョンの入り口に向かって陣地を築き、万一の事態に備えてるようだ。


 が、いちばんにぎやかなのは出張酒場だ。

 酒保商人たちが食糧や酒や生活用品などを持ち寄り、一大バザーを開いてる。

 近くにはテント張りの仮の宿まで作られていた。


「はぁ~。なんかイメージと違うなぁ」


 もっとこう、おどろおどろしい雰囲気を想像していたのだ。


「まぁ、たしかに、生身の冒険者がダンジョンに潜ろうと思ったら、準備が必要だもんね。ファストトラベルなんてないわけだし」


 私自身、街から一時間ほども歩いてきてくたくただ。


 でも、


(私にしては体力あるよね)


 疲れたはしたが、ちょっと立ち止まってると元気が出てくる。

 そうでなければここまでたどり着くことすら怪しかっただろう。

 いくら適正が高いとはいえ、私はろくにスポーツもしてこなかった現代人女子なのである。ゲーム脳のせいで、すぐに着くだろうと思ったのは無謀だった。


「とりあえずごはんかな」


 私は出張酒場に向かう。

 酒を飲んで大声で話してる屈強な冒険者たちがちょっと、いや、かなり怖い。

 気配を忍ばせてその脇を抜け、酒場のマスターに話しかける。


「あはは⋯⋯軽いものはありますか?」


「おっ、嬢ちゃんも冒険者か? サンドイッチと薫製肉ならあるぜ」


 海坊主風のいかついマスターが、案外気さくにそう答える。


「ほらよ、笑顔の素敵な嬢ちゃん」


 マスターがサンドイッチと薫製肉を出してくれる。

 見栄えは正直よくないが、食べてみるとまあまあイケた。


「飲み物は? あ、お酒以外で」


「炭酸水ならあるが、酒より高くなるぞ。この近くにはあまりいい水場がなくてな。炭酸にしないと飲めたもんじゃねえんだ」


「うう、じゃあそれで」


 おそるおそる注文したが、飲んでみるとフツーに炭酸水だった。


「ダンジョンはどんな状況なんですか?」


 せっかくなので、マスターに聞いてみる。


「どうもこうもねえな。大半の冒険者は一層の途中で帰ってくる。よほど精密にマッピングできる盗賊士がいねえと道に迷うらしい」


「あれ? コカトリスは?」


「おいおい、嬢ちゃんはアレを狙ってる口か? 悪いことは言わん、やめておけ。コカトリスのレアドロなんて狙った日にゃあ、命がいくつあっても足りねえぞ」


「あ、うん。そこまで無理をする気はないかな」


「そうしとけ。これまででも、ここに顔を出してた連中で、欲をかいて戻ってこなかったやつらがけっこういる」


「難しいダンジョンなんですか?」


「一層は、モンスターは強くねえし、罠もそこまで凶悪なもんは見つかってねえ。

 だが、どうも迷路を超えた先に『山』があるくせえな」


「山?」


「なんつーかな。同じダンジョンでも、途中からガラリと雰囲気が変わることがあるんだ。冒険者のスラングでは、『ダンジョンが本気を出した』なんつーけどよ」


「おもしろい表現だね」


 私の言葉に、マスターが私のことをちらりと見た。


「嬢ちゃんは肝が座ってるな」


「その『山』について、何かわかってることは?」


「おっと、そこから先は情報料がいるぜ」


「いくら?」


「これくらいだな」


 マスターが指で金額をしめす。


 私は即金でそれを払う。


 マスターが驚いた顔をした。


「城ちゃん、こういうときは少しは値切るもんだぞ」


「情報は大事だから。お金をケチって、情報を出し渋られたら困るし」


「こりゃ一本取られたな。

 いいぜ、わかってることは全部話そう。

 おっと、隣で耳を立ててるやつ、こいつをやるから違う席に行ってくれ」


 マスターは隣の客につまみを一品出して追い払う。

 客も文句はないらしく、酒とつまみを持って別の席に移動した。


 マスターは、それを確認してから、私に身を乗り出して口を開く。


「じゃあ、結論から言おうか。一層の迷路の先は⋯⋯モンスターハウスなんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ