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131 何度でも蘇るさ!

「ていうか私たちべつに仲間ってわけじゃないんだけど。むしろ敵同士だよね?」


 わざわざ確認するのも変な気がしたが、グリュンブリンに聞いてみる。


「当然だ。わたしはいまでも自分が魔王になるべきだと思っている。人間など滅ぼすべきだとな。

 しかし、わたしを敵と認識していながら、さっきはなぜわたしを助けたのだ?」


 呆れ混じりに、グリュンブリンが聞いてきた。


「う……いや、まぁ。トウゴウに味方したくなかったし」


「敵の敵は味方ってわけでもねえわな。

 あ、言っとくが、俺っちはグリュンブリンとは立場が違う。アルミラーシュ様を魔王に推戴し、地上に魔族の国を築こうっていう現実主義路線だよ」


 グリュンブリンとボロネールすら、味方同士ではないらしい。


『では、各自バラバラに試練を受けるか?』


「「「…………」」」


 エルミナーシュの言葉に、実戦担当の私たち三人が黙りこむ。


『むろん、その場合でもグランドマスター三人のエミュレーションと戦ってもらう』


「じ、冗談じゃねえぜ。あんな化け物相手に正面から戦えるか!」


「せ、せめて一対一にならないか? エンドウかミナヅキ相手に一対一ならなんとか……」


『汝は魔王になったとき、敵に向かって同じことを乞うつもりか?』


 せせら笑うようなエルミナーシュの言葉に、グリュンブリンが口をつぐむ。


(トウゴウと一対一は無理ってさりげに認めてるよね)


 片腕をもがれたトラウマがあるんだろう。


 って、


「グリュンブリン、腕は大丈夫なの?」


「ん? ああ、これか」


 グリュンブリンは軽く言って、何やら精神を統一する。

 すると、なんということでしょう、根元からちぎれてた腕が、にょきにょきと生えてきたではありませんか!


「べ、便利だね」


「このくらいならばな。魔族にとって肉体は現世への足がかりにすぎぬ。さすがに戦闘中には難しかったが、落ち着いてしまえばこの通りだ」


 グリュンブリンが、心なしか得意げに言った。

 金髪碧眼の長身美人だけに、ちょっと子どもっぽいしぐさが妙にかわいい。

 いや、中身は人間絶対滅ぼすマン(ウーマン)なんだけどさ。


「ち、力を合わせましょう」


 誰も言い出せなかった正論を言ったのはアーシュだった。


「ミナトとグリュンブリン、ボロネールが力を合わせればきっとなんとかなります!」


「どうかな……」


 グリュンブリン<トウゴウ、私<エンドウorミナヅキと考えると、全体的に戦力不足だ。

 ボロネールがグリュンブリンより飛び抜けて強いってこともなさそうだし。頭脳派っていうからには、脳筋のグリュンブリンには敵わなそう。


 っていうか、戦ってないアーシュ(おまえ)が言うなと、この場にいる全員が思ったんじゃないかな……。


『十分なインターバルは与えたものと判断する。再開だ』


 私たちの間に流れた沈鬱な空気をものともせず、エルミナーシュがそう言った。


「ちょっ――」


 私が制止するいとまもなく、獰猛な笑みを浮かべたトウゴウが踏み込んできた。狙いは私だ。


「くそっ!」


 グリュンブリンには、ミナヅキがエーテルショットの雨を降らせてる。威力、弾速、軌道、配置、すべてにおいて私より上だ。


「おい、打ち合わせくらいは……うひぃぃっ!」


 残像を残して消えたエンドウが、ボロネールの背後に現れ、短剣を薙ぐ。


「やっば!」


「どうにもならん!」


「くそったれええっ!」


 それぞれ数秒で詰んだ私たちが悲鳴を上げる。


 と、そこで、トウゴウの大剣でミンチにされた私の視界が切り替わる。


 戦場を上から見下ろす視点だ。


(あ、あれ?)


 いま、私死んだよね?


 戦場では、グリュンブリンがミナヅキのエーテルショットで赤黒い霧となって消滅し、ボロネールは……なにがどうなったのか、自分の出した蔦で自分の身体を串刺しにして死んでいた。


 私を殺したトウゴウは、あっけにとられてるアーシュをいともたやすく肉片に変えた。


 そこで、グランドマスター三人の姿がかき消え、私の視点も地上に戻る。

 おもわず自分の身体を見ろした。


「……ちゃんとあるね」


 戦い始める前と寸分たがわない自分の身体がそこにあった。


『ここでは死ぬことはない。汝らの心が折れぬ限りは、な』


「なるほど、コンティニューありか」


「なんだよ! それなら最初からそう言えよ!」


 ボロネールが毒づいた。


『いずれわかることではあったが、最初くらいは緊張感を持たせたかったのでな』


「じゃあ、わたしらはこいつらに勝つまでここを出られない、と?」


『違う。設定した敵を疑いの余地のないレベルで圧倒するまで、だ』


「具体的にはどれくらい?」


 私が聞くと、


『状況にもよるが、危なげなく100連勝できる程度の力はほしい』


「ひ、百……」


 私たちは顔を見合わせる。


「ひ、ひとまず協力しようぜ? ここを出るまではな」


「う、うむ。そうだな。主義主張を戦わせるのは後でもできる」


「他にどうしようもないしね……」


「み、みなさん、力を合わせて頑張りましょう!」


「「「おまえが言うな」」」


 というわけで、過酷すぎる試練を乗り越えるまではという条件で、四天魔将二人との即席パーティが編成されたのだった。

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