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118 死刑!

若干の残酷な描写ありです。

「海賊!?」


 私が聞くと、


「は、はい。ちょっと前に海賊の船がへそに流れ着いて……ここからちょっと離れたところにアジトを作り始めたんです。希望の村では冒険者ギルドを中心に警戒をしてたんですが……」


「そういえば、キエルヘン諸島から海賊が消えたって言ってたっけ」


 てっきりオケアノス・クラーケンの海鮮二種盛り合わせにやられたんだと思ってたけど、生き残りがこっちに流れ着いたんだろうな。

 セレスタの船員が流れ着いてるなら、海賊たちも流れ着いてるのは当然だった。


「希望の村の戦力は?」


「冒険者が五、六人です。一人はこのあいだのモンスターとの戦いで怪我をしててまともに動けなかったはずです」


「やばいね。私も出るよ」


 私はベッドから立ち上がり、ベッドの脇にあったアビスワームの無限胃袋を肩にかけ、同じくそこにあった無念の杖を取る。

 黒鋼の剣が見当たらなかったので、胃袋から予備の黒鋼の剣を取り出した。黒鋼の剣ならあと十数本はストックしてある。


「そんな、病み上がりなのに」


「魔族でもなんでもないただの海賊ならなんとでもなるよ」


 私はドロップアイテムのマントを羽織り、部屋を出る。


 出てから、部屋に顔だけ戻し、


「……どっち?」


 とマリアンヌに聞く。


 しまらないことこの上ない。


「わかりました、ご案内します」


 マリアンヌの案内で家を出る。

 マリアンヌの家は、小高い塚の上にあった。

 塚と言っても、土ではなく石造だ。

 巨大なブロックのような石が積み重ねられ、周りよりちょっと高い陣地を作ってる。


 そのブロックには、手製の縄ばしごや流木で作ったらしい階段がかけられてて、それらをいくつも降りて地面につく。


 なお、この地面も石張りだ。


 降りたところは、ゆるく弧を描く回廊になっていた。

 騒ぎが起きてるのは弧のずっと先らしい。


 私は早足で歩くマリアンヌを追いながら、希望の村を観察する。


 いま進んでる弧の回廊の内径側には塀がある。

 その奥に、ひときわ高い塔のようなものがそそり立っていた。

 ここからはかなり遠そうで、うすく靄がかかってる。

 あれが、アーシュの目的地である魔王立万物館なのだろうか。

 県立の博物館みたいなのを想像してたが、むしろスカイツリーみたいな高層のタワーに近い外見だ。


(いや、その前に海賊だね)


 五分もしないうちに、私とマリアンヌは希望の村の外縁らしい、(やぐら)のついた高い石塀へと行き着いた。

 石塀には流木を組んで造られた城門がついてるが、いまは固く閉ざされてる。


「マリアンヌ!」


 城門のそばにいた壮年男性がそう言った。


「お父さん! 状況は?」


「海賊どもが村の娘を人質に、城門を開けろと言っておる」


「娘って……」


「エッヴィだ……かわいそうに……」


「そ、そんな……!」


 マリアンヌが青い顔をする。


 壮年男性――マリアンヌの父が、私を見た。


「目が覚めたのか。連れの娘はおまえを助けてほしいと大騒ぎだったぞ」


「すみません、ご迷惑をおかけしました」


「よい。ここはそういう村だ。誰もがここに流れ着いてやってきた。助け合うのは当然だ。

 もっとも、そうは思わぬ(やから)もいる」


「海賊ですね。敵の数は?」


「三十人ほどもいるらしい。水と食料が尽きて半死半生だったあいつらを助けてやったというのに……」


 マリアンヌ父が悔しそうに言った。


「そういう連中なら、手加減は無用ですね」


 私が言うと、


「お、おい。話を聞いていたのか? 身なりからすると冒険者のようだが、あの数をやれるというのか?」


「あはは……まぁ、見ててください。助けてもらった恩はちゃんと返します。優しい人が割りを食うようなことがあっちゃいけないんだ」


「そ、そうか……だが、無理はするな。おまえは若い娘だ。海賊どもに捕まったら……」


「わかってます」


 私は浮遊魔法を使って宙に浮かび、石壁の上の櫓に乗る。

 海賊を見張ってた冒険者が、いきなり現れた私にのけぞった。


「海賊っていうのは……あれか」


 壁の向こう、百メートルほど離れた辺りに、アイパッチ、バンダナ、皮鎧、シミターといった海賊装備に身を包んだ連中がたむろしてた。

 その中心には、服を裂かれ、全身あざだらけになって泣いてる若い女性の姿があった。

 私の頭がすうっと冷える。


「死刑――でいいよね」


 私はガトリングタレットの魔法を発動、エーテルショットの発射装置を空中に数十個作り出す。

 不可視の発射装置は同時に火を吹き、針のように絞りこまれたエーテルショットが、海賊どもの頭を、首を、肩を、腕を、胸を、腹を消し飛ばしていく。

 もちろん、人質の女の子には当たらない。


 何人か、当たりどころが「よくて」生き残ってる海賊もいるみたいだけど、その処断は希望の村の人たちに任せよう。


「こ、これは……!」


 息急き切って櫓へと登ってきてたマリアンヌ父が驚愕してる。


「あはは……ざっとこんなもんかな」


 私は頬をかきながらそう言った。

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