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「可愛くても足はない! 癒し女のおみっちゃん!」
この物語は、クセのある幽霊が国民的テレビアニメになれるようなキャラ文芸的な日常を描く。
「それを拒否する。」
拒否女の乃木子とおみっちゃんの友情の物語である。
「エヘッ。」
エヘ幽霊のおみっちゃんが笑って誤魔化して始まり。
「さあ! 最後はヒルズに遊びに行った時の写真よ!」
「おお! 見たい! 見せて!」
「これこそ現代の妖怪・あやかしの塔よ!」
能天気なおみっちゃんや餓ッ鬼ーは写真に飛びつく。
「すごい! 妖怪・あやかし城よりも大きいわね。」
「大きな建物を魔境ダンジョンにして中の人間を食べ放題にすれば、面白いストーリーができるわ。」
「それを拒否する。」
マイペースなおみっちゃんと餓ッ鬼ーにタジタジの乃木子。
「乃木子さん。」
「どうしたのお汁ちゃん?」
「百目さんが放心状態です!」
「ギャア!? 百目ちゃん!?」
コンビニ店員のカワイイお化けの百目ちゃんは青山霊子とのキャラ設定の違いにショックを受けていた。
「どうせ私はコンビニ店員ですよ・・・。」
「い、いじけてる!?」
「どうしましょう!? 乃木子さん。」
「どうって言われても・・・。」
困った乃木子は助けを求めるような目で、おみっちゃんと餓ッ鬼ーを見る。
「この写真、私がテレビ局というカラクリ屋敷を貫通した時のだ! エヘッ。」
「私も映画館で奉公しようかな? 人間が次から次へとやって来て食べ放題!」
「キャハハハハ!」
「こいつらに助けを求めようとした私が馬鹿だった。」
次に乃木子は青山霊子を見る。
「霊子さん、百目ちゃんを励ましてあげて。」
「しょうがないわね。」
霊子は百目に近づき声をかける。
「今度、ヒルズの会員制VIPルームに連れて行ってあげるから。ニコッ。」
「ヒルズもVIPなの!?」
「そうよ。もちろんハイアットもVIPよ。だって私は青山霊園の女王だもの。」
恐るべし青山霊子の財力。もちろん支払いは都民の税金である。霊子は何か変なことを言ってますか、という感じで首を傾げる。
「乃木子さん!? 百目さんが死んでます!?」
「どうせ私なんか、どんなに真面目に働いても安月給ですよ。保健に年金惹かれたら20万以下ですよ。」
「うわあ!? 魂が体から出ている!? ・・・ん!? でも百目ちゃんは元々お化けだから正常か。」
ホッと胸を撫で下ろす乃木子。それでも百目ちゃんはダメージを受けて起き上がれない。
「それは私の芸よ! 百目ちゃん! 起きなさい!」
写真より、百目が気を失うより、自分の実は私、死んでますという芸を奪われることに反応するエヘ幽霊。
「うわあ!? ここはどこ!?」
おみっちゃんに体を振り回されて目を覚ます百目ちゃん。
「百目ちゃん!? 気がついた!? 良かった!?」
「おみっちゃんは気を失った私のことを助けてくれたんですね。ありがとう。」
抱きしめ合う二人。
「私の芸は誰にも使わせないんだから。エヘッ。」
おみっちゃんは百目ちゃんに見えない所でエヘっと笑う。
「はい、もしもし。乃木神社です。」
その時、乃木子の家の電話が鳴った。
「初めまして。私共は六本木ヒルズですが、お客様から妖怪・あやかしが出ると苦情がありまして、是非とも除霊をしていただきたいと思いまして。」
電話はヒルズからだった。
「すいません。明日はミッドタウンで除霊をするので、明後日でもいいですか?」
「急いでるんです。ヒルズの評判にも関わりますし、今日来てもらえませんか? 謝礼は弾みますから!」
「分かりました! 走って5分で行きます!」
こうして電話は切られた。乃木子の顔はニタニタ笑っていた。
「行くぞ! 野郎ども!」
「全員、女なんですけど?」
ズコっとこける乃木子。
「そんなことはどうでもいい!? 今からヒルズで除霊ごっこよ!」
「除霊ごっこ!? なんだか楽しそう!」
乃木子は早着替えで巫女の姿になり、升に塩を盛って走っていく。
「行くぞ! ヒルズ!」
「おお!」
その後を追いかけていくおみっちゃんは、自分に塩がぶつけられるとは思いもしなかった。
「それにしても、私の人生の方向性はこれでいいのかしら?」
乃木子は神社仏閣ロワイヤルで神社とお寺を占領していくはずが、近所の青山霊園と自作自演の除霊ごっこで、ミッドタウンとヒルズを手に入れようとしていた。
「エヘッ。」
最後もおみっちゃんが笑って誤魔化して終わり。
つづく。