5-6
「可愛くても足はない! 癒し女のおみっちゃん!」
この物語は、クセのある幽霊が国民的テレビアニメになれるような日常を描く物語である。
「エヘッ。」
おみっちゃんが笑って誤魔化して始まり。
「おみっちゃん! あなたを乃木神社の正式な所属の妖怪・あやかしに任命します!」
「はい! ありがとうございます!」
乃木子とおみっちゃんは正式に契約をした。これでおみっちゃんは乃木神社の所属になった。
「なんだか恥ずかしいわ。エヘッ。」
「おみっちゃん、妖怪・あやかしなのに恥ずかしいなんて、カワイイ。」
「もうやめてよ!? カワイイだなんて!? 足がないのに!? エヘヘヘヘッ。」
幽霊なのでおみっちゃんに足はない。
「それでは神社仏閣ロワイヤルの説明を始めます!」
「おお!」
乃木子の部屋で説明が始まる。
「て、神社仏閣ロワイヤルって、どうやって進めていくの?」
「まず全国神社仏閣協会に申請を出し、受理されると参加票が届く。これで手続きがOK。」
受験票みたいなものである。
「次にネット検索で青山霊園の周辺の神社仏閣を探して、そこに攻め込んで領土を増やすの。」
「なんだか国盗り物語の神社仏閣版ね。」
その通り。
「甘い!」
乃木子は気楽に考えるおみっちゃんを牽制する。
「え!?」
驚くおみっちゃん。
「神社仏閣ロワイヤルは、そんな生易しいものじゃないわ! 勝てば、神社やお寺が手に入り、お金もガッチリ儲かるけど、負けたら巫女の生き血を吸われるのよ! 乙女の危機なのよ!」
詳細は定かでない。
「別にいいんじゃない? だって私、死んでますから。エヘッ。」
おみっちゃんは得意の幽霊ネタで可愛く笑う。
「甘い! 甘い! 神社仏閣ロワイヤルは勝てば相手の所属妖怪・あやかしを仲間にすることもできるけど、現世から浄化・昇天させて、地獄に落とすこともできるのよ!」
「じ、地獄!?」
恐るべし、神社仏閣ロワイヤルの詳細に驚くエヘ幽霊。
「そ、そんな・・・。せっかく何百年ぶりかに現生に甦ったのに・・・。まだお団子も食べてない・・・綺麗な着物も来ていない・・・それに、男よ! 男! 男前を見つけて恋をするんだ!」
おみっちゃんの野望である。
「・・・ということで、さようなら。」
おみっちゃんは乃木子に一礼して青山霊園に帰ろうとする。
「待ちなさい! 逃がさないわよ! おみっちゃん! あなた契約したでしょ! 正式に乃木神社の所属妖怪・あやかしになったのよ!」
乃木子は契約を盾にする。
「そ、そんな!? 聞いてないわよ!? 詐欺よ!? 詐欺!?」
激しく抵抗するおみっちゃん。
「内容を確認せずに契約した自分を責めるのね。」
「人間に騙された・・・。」
肩を落とすおみっちゃん。
「せっかく都心で奇跡的に捕まえた幽霊。そう簡単に逃がしてなるものか。」
乃木子の運命はおみっちゃんが握っている。
つづく。