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「スポンサーも変わる! これはチャンス!? 癒し女のおみっちゃん!」
この物語は、クセのある幽霊が国民的テレビアニメになれるような日常を描く物語である。
「意外に良かったわね。」
おみっちゃんは気分上々だった。
「どうしたの? おみっちゃん。」
又ちゃんが尋ねる。
「私が幽霊だから煙突じゃなくて、壁をすり抜けてクリスマスプレゼントを子供たち届けるのは、妖怪・あやかしものとしてオリジナル性が活かされていて良かったと思わない? 又ちゃん。」
「いや~ん!? 恥ずかしいから又ちゃんと呼ばないで!?」
ここまではお約束。
「12月のイベントも終わったし、今回はなんの話をすればいいんだろう?」
「クリスマスの次は、お正月に向けての大掃除か、御餅つきなんかでいいんじゃない。」
「う~ん。」
おみっちゃんと又ちゃんは考え込んでしまう。
「どうしたんだい?」
そこにろくろ首が現れた。
「女将さん、クリスマスの次は何をすればいいんですか?」
「苦しみます?」
「クリスマスです!」
「悪いけど、年寄りの私には西洋かぶれなイベントは分からないね。」
「そうですか。」
「でも日本の12月なら分かるよ。」
「本当ですか!」
「12月は旧暦では師匠も走る忙しさと書いて、師走って言うんだよ。」
「師走!」
おみっちゃんたちは少し賢くなった。
「あれ? でも、私の師匠の女将さんは走ってませんよね?」
「私? どうして私が走らなくっちゃいけないんだい? 私が走らなくても、私の会社の部下の妖怪・あやかしたちが走り回っているよ。」
今やろくろ首の女将さんは大企業の社長である。会社名は・・・おみっちゃんの店の名前が五寸釘だから、ろくろ首の会社の名前は呪いの藁人形でいいや。
「提灯おばけも、唐傘おばけ、のっぺら坊、河童親子、それに最強のお岩さん。」
「お岩お姉ちゃんも入社してるんですね。会いたいな。」
お岩さんは、サンマ定食屋にいたおみっちゃんの後輩であり、仲の良い年上のお姉ちゃんである。
「今じゃ、お岩さんはうちの部長の一人だよ。ああ~早く川徳悪徳商会との戦いにケリをつけたいね。」
「川徳商会って、まだ、あったんですか!?」
「だって、相手も妖怪・あやかしだもの。私たちだって生きてるんだから、相手も生きてるよ。」
昔、おみっちゃんたちは悪の妖怪カンパニー、川徳商会と戦っていた。
「あの・・・もう千字を超えたんですが・・・。」
「なんだい? この空気の読めない猫又は?」
「捨て猫の又ちゃんです。」
「いや~ん! 恥ずかしいから又ちゃんと呼ばないで!?」
「この子、頭は大丈夫かい?」
又ちゃんのセンスにろくろ首は首を伸ばして傾げる。
「エヘヘ。」
可愛く笑って誤魔化すおみっちゃんであった。
つづく。