第90話 魔法使い、森の精霊に怒られる。
こっちも更新しました。
オセロの商売も軌道に乗った。
ぼくは利益の数パーセントをもらうことで、ロダイルさんと契約した。
おかげで、かなり生活に余裕が出来た。
7日に1回ぐらい、ちょっと高い料理を家族全員と外で食べるぐらいの贅沢は出来るようになった。
お金が入ることも嬉しかったけど、自分の世界のゲームがハインザルドの人たちに浸透していくのも嬉しかった。
――いつかTVゲームをプレイしてもらいたいなあ。
そんな淡い期待を抱きながら、午後の紅茶を楽しんでいたある日、ぼくのところにお客さんがやってきた。
それはガヴより小さくて、緑色の肌をした森の精霊だった。
「あなたね、相田トモアキって魔法使いは?」
いきなり喧嘩腰だ。
ちっちゃい身体の割りに、人間に全く物怖じしていない。
さすがは森の精霊ってところかな。
「あんたが、オセロなんて広めてくれたから、こっちは滅茶苦茶迷惑してるのよ」
「お、落ち着いて、森の精霊さん。えっと……」
「フォーリルでいいわよ」
「ごめん……フォーリル。君のいってることがいまいち理解できなくて。オセロを広めたら、なんで君たちに迷惑がかかっているの?」
「そんなことも知らないの!」
緑色の肌を真っ赤にしながら、顔を近づける。
木の枝なのか根なのかわからない髪は、2つに結ばれ、ちょうどツインテールみたいになっていた。
森の精霊だけど、性格はツンデレっぽいなあ、この子。
「じゃあ、私たちの森に招待してあげる。その目で見るといいわ!」
フォーリルにいわれて、ぼくは森へとやってきた。
いや、森だったところにやってきた。
「これは……」
あったのは、切り株だった。
それがずらりと並び、山裾まで続いている。
禿げ山ならぬ、禿げ森だった。
「オセロを作るために、人間が木を伐採していったのよ」
「ええ!? こ、こんなに木を切ってるの?」
知らなかった。
確かにオセロの材料は主に木材だけど……。
それにしても、こんな森がなくなるまで、使うかなあ。
ともかく、今はなんとかしないと……。
これではフォーリルが怒るのも無理はない。
「ごめんね。こんなことになるとは思わなかったんだ」
「謝って済む問題じゃないわよ」
「ともかく、木の苗を植えて……」
「はあ!? そんな悠長なことをしてたら、森はいつ戻るのよ」
「でも、今はそれぐらいしか」
「そうね。……じゃあ、あんたの魔力をちょうだい。それで森を直すから。そもそも森が吸う魔力がなくなって、こんなちっちゃくなったわけだし」
ああ、なるほど。
元々は大きいのか、フォーリルって。
今でも結構可愛いけど、ナイスボディになったりするのだろうか。
「ねぇ、この森を直す魔力ってすごい量がいるんじゃないの?」
「そりゃそうよ。あんたの魔力を全部使いきっても、直せるかどうか」
「使い切ってって……。ぼく、魔力が切れたらどうなるの?」
「魔力が完全に枯渇したら、そりゃ死ぬわよ」
フォーリルはあっさりいう。
ぼく、まだ死にたくないんだけど……。
「それぐらい当たり前でしょ。あんたたち、どれだけ木を切ったと思ってんのよ」
「それは謝るけど……。さすがに死にたくはないよ。他の方法――」
ぼくは今1度、小さいフォーリルを見る。
小さな手を腰にやって、むくっと膨れた顔をぼくに向けていた。
「じゃあ、君の魔力を強くすることが出来れば、木を元に戻せる?」
「そうね。全部ってわけじゃないけど」
「よし。じゃあ、ちょっとじっとしてて」
ぼくは呪文を唱えた。
「とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし」
鑑定魔法をフォーリルにかける。
フォーリル
じょぶ もりのせいれい
れべる 1
ちから 50
たいりょく 98
すばやさ 33
ちりょく 102
まりょく 90
きようさ 54
うん 39
へー、さすがは精霊だな。
初期ステータスから高い。
これならいけるかも。
ぼくはさらに呪唱。
「ほりい○う じえにつ○すど ら○くえす とだよ」
レベル50まで引き上げる魔法をかける。
「なにこれ……」
フォーリルは驚いた。
ぼくも驚く。
レベル50になった彼女が、本当にナイスバディに成長していた。
胸が張り、お尻も大きくなる。
心なしか顔も大人っぽくなったような気がした。
問題は彼女は何も着ていないことだ。
「ちょ、こっち見ないでよ!」
手から根を伸ばし、ぼくの視界を塞ぐ。
さっきまで裸だったのに。
成長したら、途端に恥ずかしくなったらしい。
精霊にもそんな感情があるんだな。
フォーリルは自分の枝を身体に巻く。
ぼくは鑑定し直した。
フォーリル
じょぶ もりのせいれい
れべる 50
ちから 850
たいりょく 799
すばやさ 279
ちりょく 682
まりょく 999
きようさ 602
うん 234
おお。すごい。
レベル50だけど、魔力がカンストしてる。
前に精霊って存在自体が魔力の塊だって、ルーイさんに教えてもらったことがあるけど、ステータス上の値も高いんだな。
もしかしたら、ぼくのように内部上の数値はもっと高いかもしれないね。
「どうかな?」
「自分じゃないみたい。力が漲ってくるわ! あんた、なかなかやるじゃない」
バシバシとぼくの背中を叩く。
身体が成長しても、どうやら性格はあんまり変わっていないようだ。
フォーリルは木々に自分の魔力を分け与えた。
すると、切り株から芽が伸びる。
一気に成長すると、次々と大木が生まれた。
青々とした葉を茂らせ、太陽の光を遮る。
いきなり森が生まれてしまった。
「ふー。こんなものかしら……」
樹液を拭ったフォーリルは、また小さくなっていた。
でも、おかげで森は元に戻っていた。
空気がおいしい。
やっぱり自然は大事だ。
「とりあえず、一件落着だね」
イェイ! とぼくたちはハイタッチをする。
でも、喜んでばかりいられない。
また木を切られたら、今度こそフォーリルにぼくの魔力を絞り取られかねない。
なんとか問題を解決しないと……。
新作の強凡伝も新話を更新してます。
諸事情で貼り直しになってるので、気をつけて下さい。




