第88話 ゲームを作ろう。
久しぶりに投稿しました。
「きゃあああああ!! やった! やった!!」
歓声をあげたのは、パーヤだった。
つるつる滑る氷山の上で、雪兎みたいに飛び跳ねる。
横で木槌を持ったガヴもVサインを出した。
こちらもご満悦のようだ。
「ちょっとぉ……。早く助けてくれない」
側で頬を膨らませていたのは、怪鳥に攫われた設定になっているクレリアさんだ。
珍しく半泣きになっている。
ちょっと可愛い。
「ごめんごめん。すぐに助けてあげるから」
ぼくはクレリアさんにタッチした。
何かの拘束魔法にかかっていた彼女は、すっくと立ち上がる。
「ありがとう、トモアキ!」
ぼくに抱きついた。
ちょ……。クレリアさん、む、胸が当たって……。というか沈む。
「ちょっと! 何をしているんですか、クレリアさん。ご主人様が苦しそうしてるじゃないですか!!」
「がう゛がう゛!」
パーヤとガヴは抗議の声を上げる。
魔法使いからぼくを奪い返すと、今度はパーヤが抱きついてきた。
先ほどのクレリアさんよりも、豊かで弾力がある感触がぼくの頬一杯に広がる。
ああ……。至福だ。
危なく昇天しかけた。
「やりましたわ、ご主人様。とうとうクリアしましたわ」
パーヤが喜んだのは、例のレトロゲームだった。
時々、こうして家族で遊んでいる。
最近色々ごたごたしてて遊ぶ暇がなかったから、みんなでプレイするのは久しぶりだ。
パーヤは無邪気に喜んでいる。
ぼくの助けを借りず、クリアしたからだ。
――とはいえ、まだ1面だけどね……。
ぼくは苦笑した。
すると、ゲーム世界が崩れる。
残念ながら、1日1時間までだ。
「もう終わってしまいました。これからが面白いところですのに」
パーヤは不満顔だ。
クレリアさんや、小さいガヴはともかく、真面目な彼女がゲームにはまっているのはちょっと意外だった。
最初はぼくに合わせてくれているのだとばかり思っていたけど。
そもそも今日ゲームをやりたいと言いだしたのは、パーヤなのだ。
何か溜まっていなければいいのだけど……。
その横で、クレリアさんは何かぶつぶつと呟いていた。
何か考えているようだ。
「えっと……今日は人質役ごめんね。次はぼくが人質になるからさ」
「それは良いんだけどさ。トモアキ、このゲームってもっといろんな人にプレイしてもらうことはできないかな?」
難しいことじゃない。
ここに来てもらえれば、誰だってプレイすることが出来る。
「そういうことじゃなくてさ。平たくいえば、ゲームを量産して、売ることは出来ないかなってこと。こんな面白いゲーム。みんなが知らないのは、なんか損じゃない」
「ゲームを売る!」
時々、クレリアさんには驚かされることがあるけど、そんな発想はなかった。
ぼくはゲームが出来れば、それで良かったからね。
でも、確かにみんながゲームに熱中したら、変なことを考えなくてすむかもしれない。
世界が平和になったりするかな……。
でも、みんな引き籠もりになっちゃうかもだけど。
「けれど、ゲームってどうやって作るんですか?」
パーヤの言うとおりだ。
ゲーム機はこれ1台しかない。
さすがにレベルマになっても、ゲーム機は作れない。
そもそも材料がないんじゃどうしようもないしね。
けど、ゲームを作るか。
それはそれで面白そうな気がする。
「あ――」
ぼくはふと閃いた。
◇◇◇◇◇
ぼくは王都近くの森にガヴを伴ってやってきた。
ガヴはいつも通りスライム狩りに精を出す。
スライムを見ると、反射的に追いかけてしまうらしい。
魔物からしたら、溜まったものじゃないね。
ぼくは1本の木に手を置く。
「これがちょうどいいかな」
当たりを付ける。
呪文を唱えた。
「ゆう○い――」
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。
レベルマになる。
なんでだろ? なんか凄い久しぶりな気がする。
さらにぼくは呪文を詠唱した。
さっきルーイさんの魔導書専門店で覚えてきたばかりの魔法だ。
「風の精霊エルマよ。その指先に宿る力。我が契約の元果たせ!」
風斬刃!
風の魔法を放つ。
空気の刃は、ぼくの腰よりも大きな樹木をあっさりと切り裂いた。
どーん、と大きな音を立てて、木は倒れる。
第1階梯の風属性魔法だけど、レベルマだと凄い威力だ。
美味く使いこなせば、DIYが捗りそうだ。
ぼくはさらに木を切り、手頃な大きさにカットする。
ついでに板状にカットしておこう。
最近、建材が足りないって馴染みの道具屋がぼやいていたし。
ぼくはガヴに半分もってもらいながら、王都へと帰った。
◇◇◇◇◇
家に到着。
早速作業をはじめる。
まず作った木の板をさらにカットする。
一辺を人の肩幅ぐらいの正方形を作った。
そこに8×8のマス目になるようナイフで切れ目を入れる。
さらにあらかじめ拾っておいた石を丸く成形した。
高出力の自分の魔力をコントロールするのは難しい。
それでもなんとか丸くしていった。
「ふう……」
さすがに64枚も作るのは骨が折れた。
その作業が終わると、ちょうどパーヤが洗濯を取り込みにやってくる。
庭で黙々と作業するぼくを覗き込む。
「ご主人様、何をやっているんですか?」
「パーヤ、ちょうど良かった。黒い絵の具みたいなのないかな?」
「黒の絵の具ですか? 服を染めるための染料ならありますが」
「とりあえず、それでいいや。持ってきてくれない」
「かしこまりました」
パーヤは頭を下げる。
スカートを掴むメイド的な一礼を忘れない。
用意してくれた黒の染料を、ぼくは丸形の半面に塗る。
64枚すべてに施すと、ようやく完成した。
「出来たぞ!」
思わずガッツポーズを取る。
気がついた時には夜になっていた。
周りにはパーヤはおろか、畑から帰ってきたクレリアさん、ガヴも不思議そうに眺めていた。
いつの間に……。
どうやらぼくは凄く集中していたらしい。
出来上がったものを居間に置く。
「出来たよ。ぼくが作る最初のゲームだ」
オセロ――俗にいうリバーシっていうゲームだ。
「これがゲームなのですか?」
「なんだか。あのゲーム機と比べると呆気ないというか」
「がう゛う゛う゛う゛……」
みんなは首を傾げた。
ゲームっぽくないからだろう。
確かにゲーム機のゴテゴテした姿と比べたら、あっさりしすぎてるかもしれないな。
あと、ガヴ……。
これは食べ物じゃないよ。
「がう゛!」
なんでわかった、みたいな顔しないで。
そして、君までぼくの心を読むのかい(このネタ懐かしいな……)。
「これはゲーム機の中のゲームとは違うんだ。アナログゲーム。まあ、トランプと一緒だと思ってほしい」
「どうやって、やるんだい?」
「そんなに難しくないよ。表と裏で色が違うだろ。それを交互に打っていくんだ。――で、黒石で白石をはさむ黒石になる。逆に白石で黒石をはさむと、白石になる。これが基本のルール。そうやって、交互に石を置いて盤面で多い方が勝ち。どう?」
「面白そう!!」
「やってみたいですわ!!」
「がう゛!!」
手を叩いて喜んだ。
良かった。
最初の反応を見て、ちょっと不安だったんだ。
「じゃあ、最初はぼくとやろう。誰が相手をする?」
3人はじゃんけんする。
勝ったのはクレリアさんだった。
「ふふーん。いっちばーん!」
「きぃぃい! くやしー」
「がう゛ー」
「2人とも落ち着いて。クレリアさんも煽らない。3人仲良くね」
「「「はーい」」」
早速、クレリアさんとオセロを始める。
ルールはすぐに飲み込めたらしい。
だが――。
「54対10……。ぼくの勝ちだね」
圧勝だった。
クレリアさんは椅子を蹴る。
「あれ? ちょっとおかしいんじゃない! 最初はあたしが勝ってたと思ってたのに!!」
「ふふん。クレリアさん、ちょっと弱すぎるんじゃなくて」
「パーヤ! そんなこというなら、あんたがやってみなさいよ」
「わかりました。こんなゲーム……。ルールを把握すれば」
10分後……。
「56対8……。そんな……」
「ご、ごめんね、パーヤ」
「ぷっ! あたしより負けてるじゃん」
「ご、ご主人様。レベルマを使ったのでは?」
いや、何もしてないけど。
単純に素人と玄人がやると、こういう大差になるんだよな。
「つ、次! もう一回、あたしにやらせて!」
「がーう゛!!」
「駄目だよ、クレリアさん。次はガヴの番だよ」
「ええ……。もう――」
その後、オセロにはまった3人の女の子は、ぼくを朝まで寝かせてくれませんでした。
超不定期になるかもですが、
ちょこちょこ更新していきますので、よろしくお願いします。
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