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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第8章 王国激闘編!?

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第83話 冬の最強の魔導具

めり~くりすます!(本編とは関係ありません)

 王国のことがひとまず落ち着いた。

 ぼくに挑戦する人の数は目に見えて減った。

 来ても1対1のタイマンみたいになって、文句だけいって帰っていった。

 ライドーラ王国――正確には王都の方だけど、今はどうなっているのだろうか。

 ぼくには関係ないけどね。


 ともかく、久しぶりの日常だ。


 ぼくはふと目を覚ました。

 すると、下腹部が重いことに気付く。

 布団を上げると、ガヴがしっかりとぼくの腰をホールドしていた。


 いつかの|グリードフォックスの子供みみの件以来、自分の部屋で寝ていたのだけど、最近すっかり元通りになってしまった。

 まだまだ甘えたいというのもあるのかもしれない。

 ぼくとしては、ちょびっと嬉しい。

 家を出ていった娘が戻ってきた時の父親の心境ってこんな感じなのかな。


 それにガヴはとっても温かい。

 尻尾がふわふわだから尚更だ。

 ぼくは思わず手を伸ばす。


 もふもふ……。もふもふ……。


 いい手触りだ。

 でも、第三者が見たら、きっと危ないシーンなんだろうな。

 元会社員、狐耳の幼女をベッドでモフモフ……。

 あまり教育上良くないので、この辺にしておこう。


 ハイミルドはここのところ寒くなってきていた(話題変更)。

 風は冷たいし、山の方を見ると、すっかり枯葉色に染まっていたりする。

 日本でいうところの“冬”が始まったのだろうか。


 ぼくも寒くて目を覚ましてしまった。


「ガヴ、朝だよ。そろそろ起きないと」


「がーう゛う゛う゛」


 家主以上にお寝坊さんの肩を揺する。

 どうやら起きているらしいのだけど、ぼくから離れようとはしない。

 いやいや、首を横に振ってむずがる。


 どうしたのかな?

 何か病気だろうか。

 おでこを触って、熱を計ってみたけど、特に問題ない。

 パーヤにも診てもらおうかな。


 ぼくは布団を持ち上げる。

 すると、ガヴは総毛立つと、ぼくの温もりが残る布団にくるまってしまった。

 どうやら寒いから出たくなかったようだ。


 なるほど。

 最近、ぼくのベッドに入ってくるのは、そういうことか。

 パパとしては、ちょっと寂しいかも……。


 ぼくはカーテンを開け放つ。

 強い陽の光とともに見えた光景に、息を飲んだ。


「うわ……」


 一面の銀世界になっていた。

 近くの屋敷の屋根や我が家の庭に雪が積もっている。

 真綿のような新雪は、光を受けてキラキラと輝き、異世界をさらに神秘的に彩っていた。


 ハイミルドでも雪が降るんだな。

 まあ、雨も降るし、雪が降ってもおかしくはないか。


「へっくし!」


 思わずくしゃみをしてしまう。

 ぼくは反射的に二の腕をさすった。

 これだけ雪が降っているのだ。寒くて当たり前かもしれない。

 布団を被るガヴの気持ちがわかった。


 とはいえ、お腹も空いている。

 ぼくはひとまず台所に行くことにした。

 何か温かいスープとか飲みたいなあ。


「ガヴ、下に行こう。スープを飲んだら温まるよ」


「がう゛!」


 がばっと起き上がる。

 純真な眼は、キラキラと輝いていた。

 口には涎が垂れている。


 どうやら、寒さも食欲には勝てなかったらしい。



 ◇◇◇◇◇



 階下に行くと、パーヤがスープを用意してくれていた。

 さすが我が家のメイドさんだ。


 ガヴと一緒にスープを飲む。

 温かい。

 腹の中がポカポカする。


「ありがとう。パーヤ。生き返ったよ」


「いえいえ。どういたしまして。今日は寒いですものね」


 くるりと日課のターンを見せてくれる。

 ひらりと浮いたスカートがとても華麗だ。

 ぼくは「ぽややん」となって、ほっこりする。


「ありがと、ばおや」


「ガヴちゃんはいつになったら私のことをパーヤと読んでくれるんでしょうか?」


 ニコニコ顔のままこめかみの辺りをヒクヒクさせる。


 抑えてパーヤ。

 いつかきっといえるようになるから。


 でも、こういう雰囲気久しぶりだな。

 最近は戦ってばかりいたからね。

 一応、ぼくとしてはスローライフを送りたいのだけど。


「クレリアさんは?」


「朝からハウスの方にいかれました」


 寒くても神豆はどんどん実っているらしい。

 それがガラスハウスのおかげか、それとも元々神豆が寒さに強いのかはわからないけど、生育は順調のようだ。


 ガラスハウスか。

 きっとぽっかぽかなんだろうな。

 後でガヴを連れて行ってみようか。


 朝食が終わると、屋敷に客がやってきた。

 まさかまた王国からの使いだろうか。

 ちょっと警戒したけど、杞憂に終わった。


「久しぶりだな、兄ちゃん」


 暖かそうなファーがついた帽子を取ったのは、タケオさんだった。

 以前会った時とは違って、分厚いコートを着込んでいた。

 すっかり冬の装備だ。


「お久しぶりです、タケオさん。どうしたんですか? またゲームを発掘したんですか?」


「いやー、それがまだなんだ。今度、また闇市に行って、一緒に探そうぜ」


 うーん、面白そうだけど、勘弁かな。

 マティス屋敷(あそこ)に行くと、いつもろくでもない目に合うし。

 自分からは極力近づきたくない。


「今日は、兄ちゃんに見てもらいたいものがあってな」


 すると、タケオさんが見せてくれたのは、脚の短いローテーブルだった。

 基本的に家の中を土足で上がる文化であるハイミルドでは珍しい。

 ない分けじゃないんだろうけど、少なくともこっちに来てからは、1度も見たことがない。


 それに、もしかして……。


 ぼくはテーブルの底を覗き込む。

 思わず「あ」と声を上げた。


「これってコタツですか?」


「よくわかったな」


 タケオさんはガマガエルみたいに笑った。


 褒めてくれたことは嬉しいけど、こんな寒い日に元日本人のタケオさんが、ただのテーブルを持ってくるとは考えにくい。

 底を確認したら、ちゃんと熱源が取り付けられていた。


「もしかしたら、兄ちゃんならこれを使えるんじゃないかと思って持ってきたんだ」


 詳しく聞くと、どうやらこのコタツは、電気を点けても動かないらしい。

 コンセントらしきものもなく、闇市でたたき売られていたそうだ。


「俺の推測だけどよ。このコタツは兄ちゃんのゲーム機と一緒で、魔導具化してるんじゃないかなって思ってよ」


「なるほど。確かにあり得ますね」


 ぼくは頷く。

 やりとりを聞いていたパーヤが質問した。


「あの……。ご主人様、このテーブルに何かあるんですか? それにコタツというのは……」


「ぼくの世界にあった暖房器具だよ。とっても暖かくなるんだ。そうだ、パーヤ。もし良ければ、いらない布団とかあったら用意しておいてくれないかな」


「布団ですか。わかりました」


 パーヤはパタパタと屋敷の倉庫へ向かった。

 残ったガヴは寒そうにしている。もうスープの効果が切れたのかもしれない。

 ぼくは狐耳を撫でてやった。


「もう少ししたら、暖かくなるからね。ちょっと待って、ガヴ」


「がーう゛!」


 再び獣人幼女は目を輝かせた。


 早速、ぼくは鑑定魔法を使う。



 とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし



 ぼくの脳裏に、ステータスが浮かんだ。



 名前 こたつ(まどうぐ)

 じょぶ だんぼうきぐ

 レベル1

 こうげきりょく  7

 ぼうぎょりょく  0

 たいきゅうりょく 10

 めいちゅうせいど 0

 まりょくほせい  ±0

 ぞくせい     なし

 うらわざ     あり



 お! 裏技ありだ!

 具体的なことは書いてないけど、きっと熱源が動くのだろう

 ぼくはもう1度、鑑定魔法を使う。



 とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし



 あり

 1.スタートボタンを押す



 へ? これだけ?

 なんか肩すかしをくらった感じだな。

 もしかして、レベルに応じて難易度とか変わるのかな。


 ぼくはゲーム機を持ってくる。

 スタートボタンを押した。


 突如、炬燵から炎が立ちのぼる。

 客間を赤く染めた。

 目の前に現れたのは、子供ぐらい大きさの火の化身だった。


「ふははははは! よくぞ、俺様の封印を解いてくれたな、人間。俺様の名前はディフリス! 火魔人ディフリス様とは俺様のことよ!」


 いきなり自己紹介してきた。

 どうやら、ぼくたちは如何にも(頭)悪そうな魔人の封印を解いてしまったらしい。


「お礼にお前たちを俺様の業火で焼き付くしてやろう! 嬉しかろう! 死んでからの火葬代がいらなくなるんだからな」


 死んだ人が自分の火葬代のことを気にするかな。

 やっぱ頭が悪そうだ。

 自分から遠赤外線とか放ってそうなのに、サングラスとかしてるし、この魔人。ちっさいのに偉そう。


 一方、ディフリスはぼくたちを威嚇するように炎を燃え上がらせる。

 タケオさんは恐れ戦いて腰砕けになり、ガヴは「がう゛う゛う゛う゛」と威嚇している。

 ぼくはどっちかというと、普通――だった。

 守護竜ゴールドドラゴンに比べたら、小物も小物だしね。

 実際、小さいし……。


 ぼくは呪文を唱えた。



「ゆう○い――」


 ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。



 ディフリスは笑う。


「なんだ、それは? 呪文のつもりか」


 あーあ。負けフラグ立っちゃった。


 レベルマ状態になったぼくはさらに魔法を唱える。



「精霊の一鍵ウェーダルよ。水を()りし、尾を持つ乙女よ。我が声に耳を傾けよ。其の湖より静かなる力以て、我が前に立ちふさがる騒乱を鎮めよ!」


 静かなる水の反逆(ウェーブ・ライダー)



 大量の水がディフリスに放たれる。


「ぐわ……。ごぼぼぼぼぼ……。やめろ! やめ――」


 大量の蒸気が上がる。

 すると、みるみるディフリスの身体が小さくなっていった。

 水を全部受けきった時には、元の半分ぐらいまで縮んでいた。


「てめぇ! 何しやがる! 俺は火魔人――」



「ふ」



「ごぼぼぼぼぼぼ! ちょ! もう、やめて! お願い」


 火魔人は懇願する。


 水の魔法の追撃を受けたディフリスの身体は、ガヴの手の平ぐらいになっていた。

 炎の勢いもなく、水分が抜けてカラカラに昆布みたいだ。

 ガックリと項垂れ、ぼくの前で跪く。


「お願いです。なんでもいうこと聞きますから、炎を絶やすだけはご勘弁を」


 さっきの勢いはどこへやら。

 すっかり火魔人は悄然としていた。

 登場してすぐにやられるなんて可哀想だけど、仕方がない。


「じゃあ、このコタツの熱源になってよ」


「え? またかよ」


 ディフリス曰く、このコタツの持ち主も似たような使い方をしていたらしい。

 小さくなったディフリスをぼくは、金属の缶の中に入れる。

 それを熱源として設置した。


 これでコタツが完成だ。



 ◇◇◇◇◇



 ハウスから帰ってきたクレリアは、屋敷の居間へ行く。

 そこにはトモアキとガヴ、パーヤが、布団を置いたテーブルに入って眠っていた。

 奇妙な光景にクレリアは首を傾げる。

 何か魔法の攻撃を受けた様子もない。

 ただ3人とも幸せそうだった。

 それになんだか暖かそうだ。


 クレリアはテーブルに綺麗な足を入れる。


「はあ~」


 思わず吐息が漏れた。

 畑仕事で冷えた足に、心地よい熱が浸透していく。

 常夏の砂浜に足を埋めたかのようだ


 布団も良い。

 ふかふかで柔らかく、熱を帯びてポカポカしていた。

 何より、ちょっとトモアキの匂いがするのが気に入った。


 足だけ入れていたが、皆のように腰まで入れたくなった。

 テーブルの下は人の足で一杯だったが、構わない。

 中から何かブツブツと愚痴のようなものが聞こえたが、すぐに襲ってきた眠気に抗えなかった。


「はあ……。幸せ」


 家族と足をもつれ合いさせながら、クレリアは眠りについた。


ディフリスのCVは岩田●央さんをイメージしてます。


明日も投稿するかもです(時間は未定)。

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