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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第8章 王国激闘編!?

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第80話 魔法使い、軍隊に勝利する。

久しぶりに2話連続更新です。

楽しんでください。

 ぼくはあっという間に近衛兵たちをのしてしまった。

 輿を担いでいた兵は逃げだし、司令官も泡を吹いて昏倒している。

 残ったのは、王様だけだ。


 お尻を地面につけ、タイツのようなズボンはしっとりと濡れている。

 どうやらもよおしてしまったようだ。

 まあ、お年だし。多少はね。


「こ、こんなことをしてタダで済むと思っておるのか!?」


 抗弁するのだが、どこか弱々しい。

 小便漏らしていう言葉でもないと思うけどな。


 ぼくは気にせず、王様に近寄った。

 すると、空を切る音が聞こえる。

 高速で発射されたそれは、ぼくの前で着弾した。


 王様もろとも吹き飛ばされる。

 ぼくは大丈夫だったけど、泥と炭を被った王様は真っ黒けになっていた。


 おそらく火系魔法だろう。

 国の元首まで巻き込んでいいのかな。

 それとも、この王様。見た目通り、人望がないのだろうか。


「こらー! 余がおるのだぞ。気をつけぃ!」


 着弾した穴の中から、王様は顔を上げる。

 しぶといなあ。愚王ほど長生きするのは、こっちでも同じらしい。


 ザッと地面を踏み、兵たちが進んでくる。

 どうやら、真っ先に事態に気づいた後衛部隊が本陣へと戻ってきたらしい。

 弓兵、魔法兵がぼくを囲む。


「くはははは! これで終わりじゃ、魔法使い!」


 弓兵は弦を絞る。

 魔法兵は呪文を唱え始めた。


 王様は「ひぃ」と悲鳴を上げて逃げる。

 安全が確認すると、まず魔法が放たれた。


『精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!』


 火の弾(ファイヤボール)


 一斉に火の魔法が解き放たれる。

 数百もの炎が放物線を描き、ぼくへと殺到する。

 第1階梯とはいえ、数が多い。

 四方から放たれた魔法に対し、ぼくはたじろぐことすら許されなかった。


 爆音――。


 火柱が沸き上がる。

 上空から「トモアキ!」というクレリアさんの悲痛な叫びが聞こえた。


 大丈夫だよ……。


 炎に包まれたぼくは、手を薙ぐ。

 あっさりと炎が消えた。

 ちょっとチリチリしたけど、熱めの温泉に入ってる程度にしか感じない。

 レベルマのおかげで、魔法耐性も上がっているからだろう。


 ぼくは軽く手を振って応える。

 クレリアさんがホッと息を吐いた。


「トモアキ、あたしも戦うよ」


「大丈夫だよ。この程度で、ぼくは倒されたりしない。今日は見ていてよ。少しクレリアさんたちの前で格好をつけたい気分なんだ」


「トモアキ……」


 クレリアさんの頬をぽーと赤くなる。

 魔力制御をおろそかになり、危なく墜落しかけた。


 ぼくは兵たちに向き直る。

 残念ながら、彼らの攻撃は皮膚にちょっとした火傷を負わせることもなかった。


 さて、お返しだ。


 ぼくも呪唱した。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 先ほど魔法兵が撃った火系第1階梯魔法。

 だが、ぼくの手の平に生まれた火の塊は、彼らを遙かにしのいでいた。

 周囲が紅蓮に染まる。

 魔法兵が戦く声が聞こえた。



 火の弾(ファイヤボール)



 力強い言葉が戦地に響く渡る。

 巨大な火塊は大地を抉り飛ばしながら、魔法兵の一部に着弾した。

 人が吹き飛び、あるいは炎に飲み込まれる。

 断末魔の叫びすら上げられず、蒸発した。


「うわあああああ!」


 残った兵の叫び声が上げる。

 逃げる者がほとんどだったが、部隊長の檄に留まったものが、反撃を始めた。

 しかし、呪文が唱え終わる前に、ぼくは炎を生み出していた。


「“ふ”」


 連続呪文の魔法。

 たった1文字で、魔法兵何十人ぶんもの炎を捻り出す。

 間髪入れず、放った。


「ぐああああああああ!」


「“ふ”」


「ぬがあああああああ!」


「“ふ”」


「ひぎゃああああああ!」


 あちこちで悲鳴が上がる。

 いつの間にか、待機していた弓兵にまで着弾し、全滅していた。

 再び周りは焼け野原になり、ぽつんとぼくだけが残る。


 ちょっとやり過ぎたかな。

 でも、まあ……こっちは1人だし。

 軍人なんだから、命のやりとりは覚悟してるだろう。


 さて、と振り返った。

 王様が立っている。

 震えているのかと思いきや、腰に手を当て、仁王立ちしていた。

 おまけに、余裕の笑みを浮かべている。


 何をそんなにおかしいのだろうか。

 自分の兵が紙屑みたいに殺されて、精神がおかしくなったのかな。


「ここまでだ、アイダトモアキ」


 王様はびっと指を指す。

 振り返ると、前衛の歩兵と騎兵がアリアハルの壁に取り憑き、今まさに襲撃せんと集まっていた。


「これ以上、抵抗すれば、アリアハルの住民の命はないぞ」


 な――。

 ぼくは閉口した。

 仮にもアリアハルは、ライドーラ王国の国民だ。

 それを人質に取るなんて……。

 この王様、つくづくクズだな。


「アリアハルの中には、お前が世話になった者もおるのだろう。そいつらが殺されても良いのか」


 正直、あそこの住民には嫌な思いをさせられたこともあった。

 けど、ロダイルさんやルーイさん、宿屋のルバイさんや道具屋の主人とか、ぼくを認め、優しくしてくれた人もいる。


 そんな優しい人たちにも刃を向けるなんて……。

 許せるわけがない。


 すぅと、自分の中の血液が冷めていくのを感じる。

 ぼくは初めて「人を殺したい」と思った。


「やれるものならやってください」


「なに?」


「その瞬間、ぼくはあなたも殺しますけどね」


「――――!」


 みるみる王様の顔色が青くなっていく。

 先ほどまでの余裕は消え、1歩、2歩と下がった。

 生殺与奪は自分の手の中にある、と勘違いしているらしい。

 何かを決心すると、高々と声を上げ、命令を下した。


「やれ! 我が兵よ!」


 兵たちは壁にはしごを掛ける。

 よじ登ろうとした瞬間、それは上空から現れた。

 涙滴型の宇宙船が、戦場に大きな影を作る。

 2門のレーザーの砲座には、パーヤとガヴが座っていた。


「な、なんじゃ、あれは?」


 王様は目を大きく広げる。

 兵たちも異様な物体を見て、どよめいた。


 宇宙船は兵士の頭上で止まる。


『ご主人様。どうしますか?』


 拡声器を通したパーヤの声が、戦場全体に響き渡る。

 ナイスタイミング。

 さすが、ぼくのメイドだ。


 そしてぼくは命令した。


「やっちゃえ! パーヤ!」


『はい』

『がう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!』


 勇ましい返事が返ってくる。

 すると、パーヤとガヴは王国兵に向けて、レーザー砲を撃ちまくる。

 あちこちで爆発音がなり、そのたびに人間が紙人形のように吹き飛んでいった。

 いくつもの穴が広がり、野っ原を焼き払う。


「ぐあああああああ!」

「やめろ! やめてくれ!」

「降参! 降参しますから!」


 悲鳴があちこちから聞こえる。

 遠く本陣まで聞こえる阿鼻叫喚に、王様は再びもよおしてしまう。


「ずるい! パーヤたちだけに、格好つけさせないんだから!」


 空中で待機していたクレリアさんも参戦する。

 得意の爆裂系魔法が、王国の兵士に突き刺さると、一際大きな爆煙が上がった。

 戦場はもはや戦いの場ではなくなっていた。

 兵士からすれば、それは地獄だろう。


 結局1500以上いた歩兵は、5分もかからぬうちに、戦意を喪失してしまった。


 あちこちで白旗が上がる。

 大の大人たちが、泣き叫び、あるいはぼくに対して許しを請うた。


 ぼくは戦場が静まったのを確認する。

 再度王様と向き合った。


「どうやら、残りはあなた1人のようですよ。王様」


 ぼくはぬらりと剣を抜くのだった。


さーて、王様はどうしようかな?

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『ゼロスキルの料理番』
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