第77話 魔法使い、世界を滅ぼす!?
サブタイトルで煽っていく。
ぼくは しゅごりゅう から せいけん をもらった。
昔のロールプレイング風にいってみたところで事態は変わらない。
今、ぼくの目の前には聖剣があり、刀身をギラリと光らせている。
見れば見るほど、綺麗な剣だ。
魂が吸い込まれそうになる。
刃物系が苦手なぼくも、この剣だけは何か親近感のようなものを感じていた。
「トモアキ、見てないで使ってみれば?」
リビングで日がな1日聖剣を眺めているぼくに、クレリアさんは提案する。
うーん、でもなあ……。
こんなに美しいんだから、斬ったりするのはもったないと思うんだよね。
前の世界にいた時は、刀剣とか集める蒐集家の気持ちが全然わからなかったけど、今ならちょっとわかる気がする。
その話をすると、クレリアさんは驚いていた。
「剣は使ってなんぼだろ?」
ハイミルドではそうかもね。
こっちでは、まだまだ主力兵器なんだから。
「わたしもご主人様が格好良く聖剣を振っているところを見てみたいですわ」
「がーう゛」
パーヤとガヴまでぼくを焚きつける。
そこまでいうなら、使ってみようかな。
というわけで、例のスライム平原に来た。
「トモアキ……。聖剣をスライムで試そうってのかい?」
「だって、他のモンスターとかあんまり遭遇したくないし。スライムだったら安全だからいいかなって」
「守護竜と差しで戦ったとは思えないね。トモアキらしいからいいけど」
クレリアさんは呆れていたけど、結局笑顔を見せた。
ぼくたち家族は、一緒にスライムを探す。
時間はあまりかからなかった。
「ご主人様、いましたわ。スライムです」
パーヤがゆび指す。
にゅるにゅると身体を動かし、活きの良いスライムがいた。
ぼくたちを見つけると、途端好戦的になる。
これまでに散ったスライムの仇だ、とでもいわんばかりだ。
いくら頭が空っぽとはいえ、そろそろ恨まれているよね、ぼく。
聖剣を持ち上げる。
なんか重い。
あ、そうだ。まだレベルマじゃなかった。
「ゆう○い――」
ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。
いつもの呪文を使う。
危ない危ない。
いくら聖剣を持っているとはいえ、レベルマじゃないぼくなんて、スライムより弱いからね。
気を取り直し、持ち上げる。
うん。全然軽いや。
ぼくは適当に剣を構えた。
それを待っていたかのように、スライムは襲いかかってくる。
ぼくらは交錯した。
バシュッ、となんか勢いのいい音が出るかと思った。
けど、聞こえてきたのは。
ポコッ。
子供の頭をこついたような音だった。
あれれ?
振り返る。
当然、スライムはなんともなかった。
にゅるにゅると動いていて、特にダメージを負った形跡はない。
ぼくは刀身を見た。
太陽の光を受けて、反射する。
刃こぼれ1つしていない。
まるで己が聖剣であるという威厳すら感じられる。
もしかして、なまくらなのかな?
スライムが斬れないって相当な欠陥品だと思うけど。
もう1度、試してみよう。
ぼくが振り返ると、スライムは襲ってきた人間に興味を失ったのか。
それとも不利と考えたのか。
明後日の方向へと動き出した。
「トモアキ、何やってるの?」
「何かお加減が悪いのですか? ご主人様」
「がーう゛」
女の子たちは心配そうに視線を送ってくる。
そういうわけじゃないんだけどな。
どっちかといえば、絶好調だし。
もう1回、試してみよう。
ぼくは逃げたスライムの代わりを見つける。
別の活きのいいのが、ぼくに襲いかかってきた。
今度こそ――!
ポコッ!
さっきより強く斬ったはずなのに、また間抜けな音が聞こえた。
同じくスライムは全く変化はない。
しかも、さっきと同じく逃げ出してしまった。
やはり、何かおかしい。
「ガヴ! そのスライムを捕まえて」
ほりい○う じえにつ○すど ら○くえす とだよ
ガヴをレベル50にする。
任せろ、という風に獣人幼女は飛び出していく。
獲物を追い込む狼のようにスライムの行く手を遮る。
スライムの動きが止まった。
すかさず、ぼくは呪文を唱える。
とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし
鑑定呪文を発動する。
脳裏にスライムのステータスが映し出される――。
――――はずだった。
「あれ?」
思わず声を上げた。
おかしい。
スライムのステータスが出てこないぞ。
「ぱーぱ、どうする?」
ぼくが迷っている間も、ガヴはスライムの行く手を遮り続ける。
呪文の詠唱を間違ったかな。
そう思い、もう1度呪文を正確に唱えたけど、結果は一緒だった。
とりあえず、ガヴにはスライムを放すようにお願いする。
にゅるにゅると身体が波立たせ、森の方へと逃げていった。
パーヤとクレリアさんが駆け寄ってくる。
「どうしたんですか? ご主人様」
「鑑定呪文がおかしいんだ」
「試しにあたしにかけてみてよ」
クレリアさんが自分の胸に手を置いた。
そういえば、人に使ったことはないな。
ステータスカードがあるから当たり前だけど。
クレリア・ミル
じょぶ まほうつかい
れべる 90
ちから 382
たいりょく 589
すばやさ 823
ちりょく 901
まりょく 966
きようさ 700
うん 688
さすが、クレリアさん。
初めて見たけど、魔力がカンストしかかってる。
――って、感心してる場合じゃない。
どうやら呪文は正常に作動してるみたいだ。
念のため魔法袋にも使って見たけど、同様の結果だった。
じゃあ、やっぱりスライムがおかしいのか。
もう1匹、スライムを見つける。
活きのいいヤツだ。
ぼくたちに気づくと、颯爽と襲いかかってきた。
攻撃をひらりとかわしながら、すかさず呪文を唱える。
とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし
今度はステータスが脳裏に浮かび上がる。
スライム
じょぶ もんすたー
れべる 1
ちから 3
たいりょく 8
すばやさ 4
ちりょく 1
まりょく 1
きようさ 1
うん 3
スライムの仕事って「モンスター」なんだ(だから、感心してる場合じゃないって)。
うん。
なんとかなくわかってきたぞ。
ぼくはもう1度、スライムを聖剣で斬ってみた。
ポコッ!
すかさず鑑定呪文を唱える。
だが、ステータスが見えなくなっていた。
「やっぱり、この聖剣の力なんだな」
しげしげと聖剣を見つめる。
「ご主人様、守護竜様からいただいた聖剣に鑑定呪文をかけてみてはいかがですか?」
提案する。
うん。ぼくも同じ事を考えていた。
というか、なんでももっと先に鑑定しなかったのか不思議だ。
とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし
脳裏にステータスが浮かんだ。
名前 ルールブレイカー
じょぶ せいけん
レベル1
こうげきりょく 1
ぼうぎょりょく 1
たいきゅうりょく ∞
めいちゅうせいど 1
まりょくほせい ±0
ぞくせい 無
ルールブレイカー。
なんかカッコいい名前だな。
ジョブが聖剣って。
そんなのわかってるのに。
攻撃力が1か。これじゃあ、スライムも斬れないのは当たり前か。
その割には耐久力が無限って。
あと気にあるのは、属性が「なし」じゃなくて「無」って書かれていることだな。
つまり「無」属性ってことだろうか。
「無属性だって」
ステータスの結果を話すと、クレリアさんは素っ頓狂な声を上げた。
「知ってるの、クレリアさん」
すっごい嫌な予感がする。
「伝説の属性っていわれているんだ。理論としてはあったんだけど、まだ誰も使用したことがない属性だよ」
「へー」
「でも、曰くあってね。トモアキ、落ち着いてきいて」
「う、うん」
ぼくはごくりと喉を鳴らす。
クレリアさんは神妙な顔でこう忠告したんだ。
「もし無属性を操るものが現れれば、ハイミルドは滅ぶといわれているんだ」
主人公は、実は魔王だった!?




