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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第8章 王国激闘編!?

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第73話 竜は天才か否か。

今日、掃除してたら、ファミコンとディスクシステムが出てきた作家のお話はこちらになります。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」


 ぼくは叫んだ。

 百歩譲って戦うのはいいとして、今戦うのはまずい。

 町の中だし、そもそもぼくの家の前だ。

 まだ買って1年も住んでないのに、廃墟になるのは勘弁してほしい。


「なんだ? 怖じ気づいたか、勇者の部下」


 部下じゃないって。

 ちなみに友人でもないから、あんなヤツ。


「せめて場所を変えませんか? お隣さんにも迷惑がかかるし」


 そもそもぼくの家の庭だし。


「私は一向に構わん!」


 ぼくが構うんだよ。

 烈海王か、お前は!!


「ともかく、場所を変えないとぼくは戦いません」


「お前が戦う気がなかろうとあろうと、関係ない」


 ああ、もう!

 聞き分けのない守護竜だな。

 守護っていうぐらいなんだから、もうちょっと慎重な性格設定じゃないのかよ。


「久しぶりに山から離れたのでな。少々高ぶっているのかもしれん」


 今、高ぶるところじゃないような気がするけど。


 仕方ない……。

 ぼくは両足に力を込める。

 レベルマ状態の全力でジャンプした。


 うわ――!


 やってみて、自分で驚いた。

 気がついたら、雲の近くまで飛んでる。

 下を見ると、アリアハルの街がまるでミニチュアみたいに小さくなっていた。


 わわわわ……。

 ちょっと! ちょっとちょっと!

 怖い怖い。


 こんなに飛ぶとは予定外だ。


「逃がすか!」


 声が聞こえた。

 振り返ると、竜が大きな顎門を開いて、ぼくに向かってきている。

 速い!

 あんな巨体なのに、どんだけ機敏なんだよ。

 竜なのにチートか!


 ぼくはパタパタと宙を掻く。

 レベルマになったとはいえ、さすがに方向転換が出来ない。

 こんなことなら、宇宙船か戦闘機を持ってくれば良かった。


 ドラゴンが迫る。

 ぼくはその初撃を闘牛士のようにかわした。


「すばしっこいヤツめ!」


 旋回してくる。

 もうやめて! ぼくの回避能力にも限界があるんだから。


 その時、ようやく自由落下が始まる。

 みるみる地面が近づいてきた。

 これがまた怖い!

 ジェットコースターみたいだ。


「ひええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」


 我ながら情けない悲鳴を上げながら、地面に着地した。

 痛ったぁ!

 身体はなんともないみたいだけど、衝撃でビリビリする。

 レベルマ状態じゃなかったら、バラバラになっているところだ。


 良い感じの平原に出る。

 アリアハルはかなり遠くだ。

 適当に飛んだにしては、まあまあじゃないだろうか。


 遅れてドラゴンがやってくる。

 地響きを起こしながら、ぼくの目の前に降り立った。


「ここで戦うのか?」


 長い首を使って見回す。


「いや、それよりも聞いてほしいんだけど、ぼくが勇者の部下って誰がいったの?」


「勇者自身だが?」


 あいつめ!


 きっと厄介事をぼくに押しつけてきたんだ。


「仮にぼくが勇者の部下だからって、ぼくと戦う理由がわからないんだけど」


「理由ならある。勇者は私にこういったのだ」


 そこでドラゴンは回想シーンに入った。



 ◆◆◆



 おれは勇者(以下略)。


 現在、おれたちは聖剣を守る守護竜のところにやってきた。

 ヤツはこっちに気づくと、長い首をもたげる。

 白い息とともに、覇気を吐き出した。


 怖ぇなあ。

 こんなのとガチるなんてごめんだぜ。


 だが、おれの部下どもはやる気満々だ。

 竜も戦闘準備完了といわんばかり、口内を赤く光らせている。


「待った待った。守護竜さんよ。今日はお前に話があってきたんだ」


「戦では勝てず、今度は口で勝負しようというのか? 我をだますことなど不可能だぞ」


「よく聞けよ、守護竜。一応、確認だ。おれたちがあんたを倒せば、聖剣をもらえるんだろ?」


「私を倒せればな」


「そうか。そいつは難しい。実はおれは今まで全く本気を出していなかったんだ。あんたにずっと手心を加えていたのさ」


「手心だと?」


「そうさ。おれは殺生を好まねぇ、優しい勇者なのさ。たとえ、あんたが倒せといっても、そうそう全力はだせねぇ。そもそもあんたは良い人みたいだしな」


 守護竜は首を軽く動かす。

 いまいちわかってないみたいだ。

 おれは続ける。


「おれには、ここにはいない部下がいる。そいつはあんたより確実に強い。そしておれはその部下よりも強い。つまり、あんたはおれよりも弱いことになる」


 竜の野郎(もしかして女かもしれないが)は、長い首を捻った。


「なるほど。筋が通るな」


 バカだあぁぁぁぁぁああ、こいつwwwww


 所詮、トカゲがちょこっとでかくなっただけだな。

 おれにかかればこんなもんよ。


「よし。ならば、早速そいつの居場所を教えろ。お前の部下を倒して、私が強いことを証明してやる」


 早速、と守護竜は大きく羽を広げる。


「落ち着けよ。教えてもいいけど、交換条件だ。聖剣をよこしな。おれはお前よりも強いんだからな」


「良かろう。持って行け。その代わり、そいつを倒したら返してもらうぞ」


「かまわねぇよ。もし倒せたらな」


 にやりと笑う。

 あっさりと挑発に引っかかった巨大蜥蜴は、天に向かって炎を吐いた。

 やがて、大きく羽ばたくと、あっという間に雲の中に消えてしまう。


 おれは岩に突き刺さった聖剣をあっさりと引き抜いた。

 なかなかカッコいいな。

 さすがは聖剣か。

 軽く振ったりしながら、鞘に収める。


 ま。おれの知謀にかかれば、ドラゴンなんてこんなもんよ。


「くくく……。あはははは……。だっははははは!」


 少し離れたところで、神官の「さいてー」という声が耳に残った。



 ◆◆◆



 完全に騙されてるじゃん、それ。


 てか、そんな口八丁に乗せられる守護竜ってどうなの?

 高齢化真っ盛りの日本の老人でも引っかからないよ。


「あの~。ぼくはそんなに強くないですよ」


 本当はあんた騙されてるんだよってはっきり言いたかったけど、逆上しそうで怖いので、ぼくは遠回しにいった。

 大きい身体だけど、なんかナイーブそうだしね。


 けれど、守護竜は即否定する。


「嘘をつけ! あれほどの跳躍力を持つ人間が弱い訳がなかろう!」


 なんでそういうところは気づくのに、簡単に騙されるんだよ、この竜は。


 そもそも論理としておかしいとは思わないのか。

 戦ったこともない相手なのに、そいつより弱いといわれただけで、自分が弱いって決めつけるなんて。絶対この守護竜、勇者より強いはずだ。


 こんな感じのことを優しめに説明したにもかかわらず、守護竜は首を捻った。


「わからん」


 この竜ってバカなのか、天才なのかわからねぇ。

 まあ、どっちとも紙一重っていうしね。

 こっちが納得するしかないか。


 仕方ない。

 戦うか……。

 あの勇者(どうりょう)の謀略に乗せられることになるけど。



「ふ」



 ぼくはリピートの呪文でレベルマをかけ直す。

 適当に構えを取った。


「行くぞ! 勇者の部下!」


 その部下っていい方、やめてくれないかな。

 いちいち虫酸が走るんだけど。


 守護竜はいきなり炎のブレスを吐いてきた。

 地を這うように広がってくる。ぼくはあっさりと回避した。

 横に回り込むと、一気に距離を詰める。

 守護竜は迎撃しようと首を回した。

 速い対応だったけど、ぼくのスピードにまるでついていけてない。


 思いっきり、横っ腹にパンチ!


 すると巨体がポーンと飛んで行ってしまった。

 そのまま100メールぐらいで吹き飛ばされる。

 やっぱ重たいなあ。

 全力で叩いたんだけど、こんなものか。


「おのれ! やったな、勇者の部下!」


 げぇ! まだ生きてるの。


 段々めんどくさくなってきた。

 戦うことは好きじゃないし、長期戦なんて以ての外だ。


 しゃーない。

 魔法を使うか。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 通常の火の弾(ファイヤボール)と比べて、およそ50倍以上の炎を捻り出す。

 それはもう小さな太陽に近かった。


「お……おお……」


 今頃、驚いても遅いよ。

 これで決着だ。


 着弾――。

 瞬間、爆炎が守護竜はおろか半径100メートル内のものを吹き飛ばした。

 ぼくは一旦距離を置く。

 濛々と上がる煙を見つめた。


 やった、か……?


 煙の中の影が動く。

 すると、長い首が現れた。

 鱗は真っ黒になっているが、動いている。


 うそ!!


 守護竜の口内が光った。

 ぼくに照準を向けると、一気にブレスを解き放つ。

 それはもはや光線に近い。

 空気を切り裂くと、ぼくの側の野原に火柱が立ち上った。


 ひぇぇぇえええ!


 一瞬前に回避してたから良かったけど、直撃だったらどうなっていたんだろ。


 いや、それよりも……。


 ぼくは守護竜を見上げた。

 のっしのっしと、さながら特撮映画の怪獣のように近づいてくる。

 無傷というわけではなかったけど、まだピンピンしていた。


「なるほど。勇者が強いというだけはある」


 守護竜はぐふっと煙を吐き出し、笑うのだった。


早く勇者ざまぁしなきゃ(使命感)

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『ゼロスキルの料理番』
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