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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第8章 王国激闘編!?

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第72話 守護竜降臨

連休中なんとか間に合ったぜ!

 おれは勇者だ。

 この世界を救うため、異世界から転移してきた。

 よくわからんが、ギルドというところでステータスカードってやつを引いたら、勇者になってた。祭り上げられたといってもいいだろ。


 ぶっちゃけ、面倒だと思った。

 モンスターだの、魔王だのを倒さなければならんらしい。

 そのために徒歩で旅をしなきゃならんのだそうな。

 勇者なんだからさ。そこは魔法でバシッと魔王のところまでいけないもんだろうか。


 勇者になってメリットはあった。

 ともかくモテる。モテまくる。

 町へ行くたびに歓迎されるし、タダ酒タダ食いは当たり前。

 ついでに女もタダだし、ある程度の犯罪は許されていた。


 それにおれには優秀な部下(パーティー)がいる。

 こいつらに任せておけば、たいてい丸く収まるし、おれのレベルも自然と上がっていく。


 魔王討伐なんて楽勝じゃないか。

 現に本当に楽勝だった。四天王と呼ばれる強力な幹部も、なんか知らない間に倒されていたし、一部はおれが倒したことになっている。


 だが、ここに来ておれは躓いていた。


 理由は簡単だ。

 魔王討伐の道程において、めちゃくちゃ強いモンスターに遭遇したからだ。


 いや、モンスターといっていいものか。

 ともかくそいつは、魔王討伐に必要な『聖剣』とやらを守っているらしく、そいつを倒さないと手に入らないんだそうだ。

 めんどくせぇなあ、おい。

 おれは勇者なんだから、ちゃっちゃと渡せばいいのに。


 ところが、そのモンスターは頑として譲らない。

 何度か部下(パーティー)を突撃させているが、全く歯が立たない状態だった。

 もしかして、こいつ。魔王よりも強いんじゃね。


 どうすっかなあ。

 ここいらで、おれの勇者伝説を終わらせたら良いじゃないの?

 そろそろ飽きてきたし。

 いい女でも見つけて、適度に静かなところで暮らしたいわ。


「勇者、ライドーラ王国の王より、このような密書が」


 部下の1人がおれに手紙を預ける。

 なんだよ。またあそこの王様かよ。

 勇者保護法とか色々感謝してるけどさ。

 ぶっちゃけ人使い荒くないか。

 保護してるんだったら、もうちょっとそれらしいアクションがほしいもんだぜ。


 目を通さないわけにはいかないか。

 やれやれとおれは辟易しながら、文面を読んだ。


 どうやらアリアハルで反乱の兆しがあるらしい。

 アリアハルっていやあ、おれが最初に訪れた町だ。

 懐かしいな。

 そこでおれは勇者になったんだっけ。


 そんなことを考えながら、内容を読むと、思わぬ名前が出てきた。



 アイダトモアキなる首謀者を討て。



 アイダトモアキ?

 ――ってあいつか?

 おれの同僚の名前じゃないか。


 あいつ、生きてたのか。

 どっかで野垂れ死んでのかと思ったけど。

 しかも、あいつ魔王の幹部クラスを倒せるほど強くなっているらしい。

 その上、王国の兵をのしちまったそうだ。


 なにやってんだ、あいつ。

 相変わらず、要領悪いな。国を相手にするなんて。

 適当に相づちを打っときゃいいのによ。


 いや、待てよ。

 これ……。結構使えるんじゃないか?


 おれは至急部下(パーティー)を集めた。

 今から聖剣を守るモンスターを倒すため討伐に向かうことを伝える。

 若干士気が下がり気味だが、こいつらは単純なヤツなので、ちょいちょいと勇者っぽいことを呟けば、すぐにのってくる。

 おれがいた世界も、この世界の人間も、大して変わらないな。


 はは……。

 やっぱおれは勇者のうえ、天才らしい。

 こんなこと、大神だって思いつかなかったはずだ。



 ◆◆◆



 窓が激しく揺れる音に、ぼくは目を覚ました。

 寝ぼけ眼を窓外に向ける。

 街路樹が今にも吹き飛んでしまいそうなほど曲がっていた。


 強風がまるでアリアハルを包むように渦を巻いている。

 巨大な竜巻の中にでもいるようだ。

 砂を巻き上げ、朝だというのに真っ暗になっていた。


 何が起こってるんだろう。


 ぼくは空へ顔を向ける。

 何かが飛んでいるのが見えた。


「ご主人様!」


 パーヤがぼくの部屋の扉を開ける。

 後ろにはクレリアさんもいた。

 何か焦っている。ガヴだけが眠たい目を必死に擦っていた。


「おはよう、パーヤ。クレリア。ガヴ」

「あ。おはようございます、ご主人様」

「がーう゛」


「ちょ! トモアキ。呑気に挨拶してる場合じゃないってば」


 みたいだね。

 一体何が起こってるんだろ。

 なんかアリアハルの上空で何かが飛んでるみたいだけど。


「ドラゴンだよ」


 え? またぁ!?


 ぼくは以前、魔王四天王の1人サラマンダーという竜を撃破してる。

 もしかして、その部下が仇討ちにでもやってきたのかな。

 その割には随分時間が経ってるけど。


「はい。ですが、今回のドラゴンは魔王とは関係ないようです」


「あれは恐らくだが、聖剣を守る守護竜様でしょう」


「守護竜!」


 しかも聖剣を。

 そんなドラゴンがどうしてここに?

 てか、聖剣を守護するのどうしたの。

 この世界では役割が決まってるんじゃないのか。


「それよりも、トモアキ。よく耳を澄ましてくれ」


 クレリアさんに忠告され、ぼくは耳をそばだてた。



 出てこい……。

 出てくるのだ、アイダトモアキ。



 げっ!

 なんかぼくの名前を呼んでる。

 うわー。このパターンって絶対なんかあるよ。


 朝からぼくはげんなりする。


 でも、気落ちしてばかりもいられない。

 よく聞くと、ぼくが出てこないと、このアリアハルをバラバラにするといって、脅しをかけてきた。

 ちょっと……。仮にも守護竜なんだからさ。

 善人側なんでしょ。

 町の人を人質にとってどうするんだよ。


 行かないとダメかな。

 ダメだよな。

 あまり気乗りしないけど、この町にはお世話になっている人が結構いるし。


 町を救うとか柄じゃないんだけど。

 ぼくは静かに暮らしたいだけなのに。


 渋々外に出た。

 凄い風だ。

 1歩、玄関を出ただけで、吹き飛ばされそうになった。

 ぼくはレベルマにして挑む。


「トモアキに何かあったら、あたしも加勢するよ」

「私もです!」

「がーう゛!」


 心強いエールだった。

 ぼくはクレリアさんとガヴをレベル50の状態にして、万全の態勢で挑んだ。


「おーい。ドラゴン。ぼくはここだよ」


 砂煙でなんも見えないけど、ともかく手を振って呼びかけてみた。

 大きなドラゴンの影が転進する。

 こちらに向かってきた。


 どすん……。


 地響きを起こし、ぼくの家の庭に降り立った。

 途端、風が止んでいく。

 嘘のようにアリアハルの空は晴れ渡り、静かな朝の喧騒に戻っていった。


 ぼくはドラゴンを見上げる。


 大きい。

 そして身体は金色に光っていた。


 ドラゴンはいわゆる西洋風だった。

 長い首に、大きな翼。

 獰猛な牙と爪を生やし、咆吼を上げている。


 首を動かし、ドラゴンはぼくを睨めつける。

 蛇のような目が、何度も開いたり、閉じたりしていた。

 何だか値踏みされてるみたいだ。


「お前が、アイダトモアキか?」


 個人的にドラゴンというか、モンスターとかが人間の言葉を喋るのって違和感があるんだよね。

 特に大きいとさ。どうやって発声してるんだろ、とか思っちゃうんだ。


「ええ……。まあ……」


「勇者の部下の――?」


「勇者の部下?」


 はあ? なんのこと?


「違うのか?」


 少なくとも部下ではない。

 友人でもないね。

 前の世界の同僚ってだけだ、あんな薄情なヤツ。


「だが、勇者よりもお前は強いと聞いたぞ」


 最近会ってないからわからないけど、多分強いと思う。

 レベルMAXだし。


 こくりと頷く。

 ドラゴンは翼を広げた。


「ならば、我と戦え。アイダトモアキ! そなたが我が聖剣にふさわしい相手かどうか見極めてやろう!!」


 そういって、ドラゴンはいきなり戦闘モードになった。


作者の別作品の守護竜とは特に関係はありません。

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『ゼロスキルの料理番』
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