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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第8章 王国激闘編!?

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第70話 魔法使い、貴族になるのを断る。

唐突ですが、新章スタートです。


特に理由はないのですが、前のタイトルに戻しました。

ライドーラ王国は、10の小さな領地とはじまりの街『アリアハル』を含むいくつかの街と村で構成された比較的小さな国だ。


 しかし、その役目と歴史はもっとも長く、古くから魔族と戦ってきた実績を持っていた。


 そのライドーラ王国国王サマーノ・ムーブル・ローラジア・ライドーラの元に、内務大臣が急ぎの用ということで、謁見を申し出た。


「どうした、大臣。急ぎの用とは」


 サマーノは最近取り寄せた北で取れる宝石に見惚れていた。

 窓に向かって掲げながら、薄青い光が乱反射する様を見つめている。

 その様相は海を裏側から見ているかのように美しかった。


「は……。そろそろ王の耳に入れる頃合いかと思い馳せ参じました」

「して。なんじゃ?」

「アリアハルのことでございます」


 サマーノの眉間がピクリと動いた。

 宝石に向けていた虹彩を、大臣の方に向ける。

 空気を察してか、大臣は言葉を続けなかった。

 王の機嫌を伺いつつ、話の先を促されるのを待つ。


 アリアハルと王国は微妙な関係にある。

 むろん、国の一都市、領地であることに疑いはない。


 だが、アリアハルの歴史は古く、さらに経済的にも自立していた。

 ライドーラ王国王都よりも歴史は長く、いくつかの国の庇護の下で栄えてきた。

 はじまりの町といわれているのも、町としての機能を大成させた初の都市ゆえに名付けられたという諸説もあるほどだ。

 また経済的にも成熟しており、十分都市単体で自治が出来る力を秘めていた。


 故に、アリアハルの住人の中には、ライドーラ王国の属都市であることを認めていない者も存在する。独立思考が高く、歴史を紐解けば自治権を求められ、争いになるのもしばしばだった。。

 近年ではそうした直接的な行動を見られない。だが、事あるごとに自治権の要求をちらつかせ、有利な条件を引き出そうと、税率交渉をするアリアハルの出身の大商人が後を絶たなかった。

 しかし、小国ライドーラにとって、アリアハルの税収は貴重なものだ。

 おいそれと、それらを放棄するわけにはいかなかった。


 王にとっては、アリアハルとは目の上のたんこぶだったのである。


 サマーノは玉座に座り直す。

 垂れた頬に手を押しつけ、肘掛けに頬杖をついた。


「アリアハルが何を言ってきた? また税率を下げろとでも言ってきたのか?」


 最近、野菜の不作で食料品が高騰していることは、王の耳にも入っていた。

 そのため作物にかけている税を下げろ、といってくることは、予想されていたことだった。


「いえ。今日はそのことではございません」


 大臣が首を振ると、王は眉を顰めた。


「これまで確認のため王には報告が遅れてしまっていたのですが……」

「言い訳ならよい。して、なんじゃ?」

「恐れ入ります。実は、最近アリアハルに魔族の幹部が立て続けに現れました」

「なんだと!!」


 サマーノは身を乗り出す。

 勢いが尽きすぎて、玉座から転がりそうになった。


「確認したところ、キングシャドルとジャイアントオークの弟であると確認いたしました」

「ちょっと待て! それは大事件ではないか! アリアハルは今、どうなっておる?」


 いくら小憎たらしい都市のこととはいえ、自分の領地のことである。

 さすがのサマーノも顔を青くした。


「ご心配なく。すでに事態を収拾しております。ただ報告がこうして遅れたのは、1つ気になる人物が、アリアハルにて支持を集めていることです」

「気になる人物?」

「名前は――」


 大臣は1度、手に持ったメモに目を落とした。


「“アイダトモアキ”と申しまして」

「名前からして異世界人だな」

「ご慧眼――さすがでございますな」

「世辞などよい。続けよ」

「仰るとおり異世界人です。勇者様と一緒にハイミルドに来た者のようでして」

「ほう」

「本人曰く、勇者に命じられて、アリアハルを守るよう使命付けられたとか」

「誠か。それは?」

「現在、勇者殿に確認中でございます。ただこの男がキングシャドルとジャイアントオークの弟を倒したことは事実です。また未確認ではありますが、ジャイアントオークを倒したのも、男の仕業と聞いております」

「魔王の幹部クラスを短期間で立て続けに……。3匹も――」

「はい。ちなみに勇者様はまだ1匹も倒しておりません」


 サマーノは1度、唸りをあげた。

 ポンと肘掛けを叩くと、玉音を漏らす。


「それは勇者より強大な力を持っているということか」

「可能性はございます」

「そのもののジョブは?」

「魔法使いです。ギルドにも確認を取りました」

「魔法使いという職業は、かくも強くなれるものなのか」

「“爆撃の魔女(エクスブローラー)”という2つ名を持つ魔女がおりまして、そのものが、幹部クラスを撃退しております」

「なるほどな」


 サマーノは顎髭を撫でる。


「如何致しましょうか?」

「如何とは? 勇者以外にも魔王幹部を倒せるものが現れた。それは僥倖というべきではないか」

「仰るとおりでございましょう。しかし、陛下。魔法使いでは(ヽヽヽヽヽヽ)

魔王は倒せない(ヽヽヽヽヽヽヽ)。それは陛下もよくご存じのことと思います」

「うむぅ」

「問題はそこではございません」

「どういうことだ?」

「…………」


 大臣は内心でため息を吐いた。


「恐れながら、陛下。その者がアリアハルにいて、爆発的な人気を得ているのでございます。その未来をご想像になられれば、小臣の心配の一端を垣間見えることができるかと」


 大臣は王を試す。

 家臣としてはやや不敬な言葉ではあったが、サマーノは気にしなかった。

 眉間に皺を寄せ、しばし考える。

 やがて、あっと口を開けた。


「そうか。アリアハルというのが不味いのか」

「ご慧眼さすがでございます」

「うむ……。確かに、そのものを祭り上げ、アリアハルが一気に自治の流れに傾く可能性もあるということか」

「その通りでございます。また、もう1つ心配なことがございます」

「なんじゃ?」

「その相田トモアキなるものは、大神の慈悲(ジョブシステム)についても、疑問を持っているそうです。職業選択の自由がある方がいいと、民衆に訴えたとか」

「不敬な! 大神に対する侮辱だぞ、それは!」


 玉座から立ち上がる。

 その顔は赤い。


「はい。しかし、男の実力は本物です。実力行使では多くの兵が死なせることになるかもしれません」

「もったいぶるな、大臣。何を言いたい」


 脂肪で圧迫された瞳を、ギラリと光らせた。


「恐れながら、男に爵位と領地を与えてみては如何でしょうか?」

「は!? 正気か! お主は!! 爵位はともかく、領地などどこもないぞ」


 今は魔族との戦いの真っ最中だ。

 与えられる領地は、すでに他の貴族が占有してしまっている。


「陛下。落ち着いてください。名ばかりのものです。ようは男とアリアハルを引き離す方便ですよ」

「なるほどな。考えたな、大臣」

「恐れ入ります」

「しかし、その男は貴族ではないのだろう。魔法使いに爵位を与えるなど、大神の慈悲に逆らう行為ではないか」


 とはいえ、別のジョブでありながら、領地経営を行っているものはいる。王もそのことは知っていた。そのほとんどが金を持つ大商人たちだ。

 サマーノが危惧しているのは、そうと知りながらも、王が爵位と領地を与えることにあった。


「ご心配なく。男の側には、貴族令嬢がおります。名目上、そのものの婿となったとすれば、大神の裁きもないかと」

「ほほう。すべて手はずが整っているということか」

「誠に恐れ多いことながら」

「よい。早速、実行に移すがよい」

「はっ……」


 大臣は下がっていった。



 ★



 王の勅使という人が、ぼくの屋敷を訪れたのは、昼を過ぎた頃だった。


 大きな馬車を門の前につけ、如何にもお大臣というゆるやかな服装に身を包んだ男は、兵士を伴って上がり込んでくる。

 客間にぼくを呼びつけると、書状をバッと広げた。


「相田トモアキ殿。その方に男爵位とエミルダ領の一部を与える。ライドーラ王国サマーノ・ムーブル・ローラジア・ライドーラ」


 読み上げるなり、勅使は書状をぼくの方に向けた。


「王からのお達しである。謹んで受けるがよい」


 ぼくは書状を見ながら、軽く首を傾げる。

 やがて答えた。


「あ。別にいいです」


新作『リトルオークと呼ばれるぼくが、学園一の美少女【姫騎士】からご指名がかかったのだが、どうしたらいいだろうか?』もよろしくお願いします。


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