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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第7章 鑑定スキル発見編

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第69話 アイテム変化、バグ。

更新1ヶ月以上、滞ってすいません。

よろしくお願いします。

 お金がない。


 ぼくは頭を抱えていた。


 神豆ビジネスは順調だ。

 高名な冒険者たちが次々と契約を結び、販売量は日を追う事に増えていっている。


 ただお客さんが増えるのはいいことなのだけど、供給が追いついていない。


 ガラスハウスを増設して、畑は増やした。

 けれど、農業ってのは、農地を増やせばいいってもんじゃない。


 収穫するためには人手が必要だし、道具が必要になる。


 供給が増えるとともに、当然支出も増える。

 大きな投資をすれば、簡単に赤字に転じてしまう。


 今、ぼくの農地はそんな微妙なバランスにあった。


 ロダイルさんからは供給を増やしほしいと、再三打診されていた。

 実は、大口の顧客から依頼があったらしい。

 なんと爵位を持つ貴族らしく、冬に領民を飢えさせないために神豆がほしいのだそうだ。


 民を救うため、といわれるとぼくも弱い。


 元々神豆は、ロダイルさんのところにいる奴隷さんたちや、貧しい人に分けるために作ってきた。


 ロダイルさんも、その領主さんの心意気に打たれた形で、ぼくにお願いしてきた。


 ガラスハウスを発注するのは構わない。

 お金はないけど、借金してもすぐに返せるぐらい、商売は順調にいっている。


 でも、折角発注するのなら、もっと大きいガラスハウスを作りたい。


 越冬のための食糧にしたいと考える領主さんは、他にもいるだろう。


 ならいっそ、もっと大きなガラスハウスを作った方がいいんじゃないか。

 ぼくはそう考えていた。


 けど、そうなると先立つものが必要だ。

 すべて借金となると、王都にあるような大銀行にいかないと貸してくれないらしい。


 王都に行くのは簡単だ。

 でも、与信がないぼくとの取引を、素直に応じてくれるか怪しいところだ。


 屋敷の居間でうんうんと唸っていると、パーヤがやってきた。


 事情を話すと、こう言った。


「ご主人様にはアイテム増殖という方法があるのではありませんか」


 もちろん、ぼくも真っ先に考えた。

 けど、あれは商売レベルの量を確保するのも難しい。

 ぼくが朝から晩まで裏技を使っても、1000個ぐらいが限度だろう。


 だけど、1000個増殖できても、販売量の1日分しかない。

 それぐらい神豆の需要は高まっていた。


 お金を増殖するというのも考えたけど、倫理的に気が引ける。


 もっと別の方法が考えないとなあ。


「たとえば、買値が安いものを売値が高いものに変える裏技とか……」


 ぼくはいつの間にか心の声を口にしていた。


 あ……。


 ピンと来た。


 よし。ちょっと試してみよう。




 ガヴを連れ、ぼくは屋敷の近くにある道具屋にやってきた。


「こんにちは」

「おや。魔法使い様。今日はどのようなご要望で」

「回復薬を99個いただきたいんですけど」

「え? 99個ですか?」

「もしかして、在庫ないですか」


 道具屋の店主はぶるぶると首を振った。


「とんでもない。いきなり99個なんていわれたからびっくりしただけです。どこかのダンジョンにでも潜って、モンスター退治ですか?」

「まあ、そんなところです」


 店主は回復薬を取りに店の奥に下がる。

 待っているとガヴが、ぼくの服の袖を掴んだ。


「あまりおかね、つかっちゃ()


 どうやら、お金がないことを感覚的にガヴも感じていたらしい。

 黄金色の頭をぼくはそっと撫でた。


「大丈夫だよ、ガヴ」

「がう゛?」


 店主は回復薬が入った木箱を持ってきた。


 お金を払い、ぼくは一旦店の外に出る。

 少し開けた場所に箱を置いた。


「これでよし! 頼むぞ」


 ぼくは祈るように呪文を唱えた。



「とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし」



 鑑定呪文をかける。


 回復薬にではない。

 99個の回復薬(ヽヽヽヽヽヽヽ)に魔法を使った。



 名前 99個の回復薬

 じょぶ 99かい、しょうかいふくする。

 レベル1

 こうげきりょく  0

 ぼうぎょりょく  0

 たいきゅうりょく 10

 めいちゅうせいど 0

 まりょくほせい  ±0

 ぞくせい     なし

 うらわざ     なし



 なるほど。

 まとめて鑑定するとこうなるんだ。


 感心しながら、また別の呪文をかけた。


 さあ、ここからが問題だ。



「ほりい○う じえにつ○すど ら○くえす とだよ」



 強制レベル50の呪文を、99個の回復薬にかける。


 もう1度、鑑定呪文を唱えた。



 名前 99個の回復薬

 じょぶ 99かい、しょうかいふくする。

 レベル1

 こうげきりょく  0

 ぼうぎょりょく  0

 たいきゅうりょく 10

 めいちゅうせいど 0

 まりょくほせい  ±0

 ぞくせい     なし

 うらわざ     アイテムへんか



 よっしゃ!


 ガッツポーズする。


 予想通りだ。

 いや、まだ喜ぶのは早い。

 裏技を見つけただけだしね。

 その裏技がぼくの予想通りだと助かるんだけど。


 ぼくは「アイテムへんか」に鑑定呪文をかける。



 アイテムへんか

 1.回復薬を99個用意する。

 2.1度、戦闘をする。

 3.回復薬を1個以上入手し、Bボタンを押したまま魔法袋に入れる。

 4.魔法袋の中に“鉄の爪”99個入っていれば成功。



 やった。


 某大作RPGのやり方とちょっと違うけど、予想通りに別のアイテムに変化する裏技だ。


 早速、実行に移してみよう。


「ガヴ、行くよ」

「がう゛?」


 どこへと首を傾げた。


「外だよ。久しぶりにスライムを倒そう」

「がう゛~!」


 任せろ、と言わんばかりに、ガヴは両手を挙げた。




「よし。こんなもんだろ」


 ぼくはパンと手を払った。

 周りには無数のスライムのコアが転がっている。

 ガヴも久しぶりに目一杯身体を動かすことが出来て、満足そうだ。

 気持ちよさそうに耳の後ろを掻いている。


 あと折角だから、スライムのコアを拾っていこう。

 今はちょっとでもお金がほしいしね。


 戦闘が終わり、ぼくは街に戻った。

 また道具屋さんに行く。


「回復薬をもう1個ください」

「え? もう99個の回復薬を使い切ったんですか?」


 道具屋さんは怪訝な顔でぼくを睨む。


「ま、まあ……。そんなところです」


 ぼくは答えるしかなかった。

 変に疑われるのもイヤだし。次は違う道具屋でやろうかな。

 増殖魔法(バグ)を使ってもいいけど、変にコマンドをいじると、アイテム変化の裏技がリセットされそうだから、使いたくないんだよね。


 回復薬を買い、一旦道具屋に出る。

 今度はゲーム機を取り出すと、説明通りBボタンを押しながら、回復薬を魔法袋に入れた。


 ドスン!


 途端、魔法袋が重たくなる。

 紐を緩め開くと、『鉄の爪』がわんさと入っていた。

 数えてみると、99個が確かに入っている。


 成功だ!


「まほう……。パパ、すごい!」


 横で見ていたガヴは、パチパチと叩いた。

 ガヴの賞賛を受けながら、また道具屋に入る。

 本日、3度目の来店にさすがの道具屋さんも、目を細めた。


「すいません。今度は、買ってほしいものがありまして」

「買ってほしいもの?」

「これなんですけど」


 ぼくはカウンターではなく、店の床にパンパンに膨らんだ魔法袋を置いた。

 中を見せると、道具屋さんは腰を抜かす。


「て、鉄の爪だらけじゃないですか?」

「99個あるんですけど、買ってもらえないですか?」

「きゅーじゅーきゅー!!」


 目を丸くする。

 そりゃあ、驚くよね……。


 すると、道具屋さんは腕を組み、首を傾げた。


「多少なら買い取ってもいいのですが、さすがにお金がありません」

「ちなみにおいくらですか?」

「うーん。結構、良い鉄を使っているんだよね。ざっと見積もっても、6万ゴルぐらいにはなるんじゃないかな」


 6万!


 普通のハウスの半分以上の値段じゃないか。

 いや、回復薬を買うのに600ゴル近くかかってるから――それでもほぼ6万ゴル総取りといってもいいだろう。


 残念なのが、売り先がないということだ。


「これを買い取ってくれそうな道具屋さんか武器屋さんってありますか?」

「即金ってなると難しいだろうね。よっぽど金持ちじゃない限りは」


 金持ちかあ。


 ぼくの脳裏にある人の顔が浮かぶ。

 すぐに頭を抱えた。

 はっきり言うとあまり会いたくないのだ。


 でも、こんなものを買い取ってくれる人なんて、おそらくアリアハルの中でも()ぐらいしかいないだろう。


「仕方ない。行こうか、ガヴ」

「がーう゛」


 ぼくは道具屋さんに礼をいい、件の場所へと向かうことにした。





「ようこそ、トモアキ様。再会できるのを一日千秋の思いでお待ちしておりました」


 脂ぎった濃い顔を近づけてきたのは、裏カジノと闇市を取り仕切る大商人マティスさんだった。


 まだ日が高いうちに屋敷に来たのだが、幸運にも(ヽヽヽヽ)本人は在宅で、すぐさま客間に通された。

 なかなか贅沢な部屋の中で、ガヴとともに冷えた果実ジュースを飲みながら待っていると、マティスさんは不気味な営業スマイルをもって、ぼくを歓待してくれたというわけだ。


「さて、何しましょうか? ポーカーですか? マージャンですか? ああ、そうそう。最近、バカラという遊びも覚えまして。どうです、一勝負」


 怪しく目を光らせる。

 そこに怨念めいたものを感じた。


 ぼくはどうどうと手で押さえつつ、用件を伝えた。


「い、いずれまた……。今日はマティスさんに買い取っていただきたいものがありまして」

「ほほう。私にですか? 察するに、トモアキ様がお持ちになっている袋の中身と見ましたが。どうやら、金属のようですね」


 中身を見る前からわかるなんて、さすがはマティスさんだ。

 そのうち、盲牌とかもできそうだな。


 ぼくは頷き、袋の中身を見せた。


「鉄の爪が99個あります。これを買い取ってもらえませんか?」

「全部ですか?」


 さすがのマティスさんも驚いたようだ。


 しかし、すぐに商売人の顔になる。

 袋に入った鉄の爪をじっと見つめた。


「この鉄の爪はどこで手に入れたのですか?」

「え? ああ……。いやあ、その――」

「企業秘密というわけですか」


 ピカーン、とマティスさんの瞳が光る。


 さすがに裏技で増やしたなんていえないよな。


 ぼくがしどろもどろになっていると、マティスさんは頷いた。


「まあ、いいでしょ。他でもないトモアキ様のお願いなら」

「いいんですか?」


 予想外の返答に、こっちが驚いた。


「ええ? 爪に興味ありませんが、使われている鉄には興味があります。なかなか良質な鉄を使っているようですね」


 道具屋さんも似たようなことをいっていたな。


「まさか……。良質な鉱石が取れる鉱山でも開拓したのですか?」

「ま、まあ……。そんなところだといっておきます」

「食えない人だ。いいですよ。昨今の戦で、鉄はどこでも需要がありますからね」


 なるほど。

 魔族との戦いで、武器や防具の需要は一定数あるもんなあ。


「それでおいくらで買っていただけますか?」


 つい揉み手になりながら、ぼくは尋ねる。


「5万でいかがでしょう? 即金がお望みなんでしょ?」


 くっ!

 道具屋さんの見立てより、1万ゴルも安い。

 しかし、マティスさん以外にさばいてくれる人は、アリアハルにはいないだろう。


「せ、せめて、5万3000ゴルじゃあ、ダメですか?」

「ふむ……。まあ、いいでしょ」


 あっさり頷いた。

 しまった。

 これは誘いだ。

 わざと低くいって、ぼくに妥協額をいわせたんだ。


 案の定、マティスさんは口角を上げて密かに笑っていた。

 さすがは商人。

 本業となると、向こうは1枚上手だ。


 ぼくは同意するしかなかった。


「じゃあ、5万3000ゴルで。ただマティスさん。それは即金でもらいたいのですが、他にも買ってほしいものがあるんですよ」

「ほう……。よろしい見ましょう」


 ぼくがマティスさんを案内したのは、屋敷の玄関だった。

 そこには、先ほど客間に持ち込んだ魔法袋と同じく、パンパンに膨らんだ袋が計10袋置かれていた。


「全部で990個あります。これらもすべて買い取ってもらえませんか」

「きゅーひゃくきゅーじゅー!!」


 マティスさんは叫んだ。

 ぼくは目を細める。


「大商人のマティスさんなら、買ってくれますよね。もちろん、1袋5万3000ゴルでいいですよ」

「トモアキ様……」


 ひやりとマティスさんの額から汗が流れる。

 しばし押し黙った大商人は、時間をかけ、頷いた。


「いいでしょう」

「交渉成立ですね」


 ぼくが手を差し出すと、マティスさんは少し躊躇ってから手を握った。


「相変わらず食えないお方だ、あなたは」


 口元を釣り上げる。

 ぼくは笑顔を通した。


 計11袋。

 583000ゴル。

 経費の回復薬を差し引いても、576400ゴルだ。


 大きなガラスハウスが2棟は建てる事が出来る。

 これで貧しい人に、神豆を分けることが出来そうだ。


今回の裏技はFF3のポーションバグを参考にさせてもらってます。

序盤でオニオン一式を揃えた人は、速やかに感想欄に報告することw

余談ですが、ミニファミコンでも再現可能だそうな……。

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