第55話 魔法使い、釣り竿を作る。
不定期とはいったが、更新しないとはいっていない。
朝食を食べ終え、ぼくはガヴと一緒に屋敷を出る。
すると、パーヤが七曜祭りで使ったサッサを片づけていた。
「パーヤ、そのサッサどうするの?」
「これですか? 決められた廃棄場所があって、そこに捨てる予定です」
「じゃあ、いらないんだね」
「はい。ご主人様……」
「悪いけど、捨てないで置いといてくれないかな」
「……? かしこまりました」
畑へ行き、今日のノルマをこなす。
摘み取った神豆をロダイルさんの販売所へもっていく。
店の奥へ行くと、ロダイルさんが迎え入れてくれた。
前と比べると、幾分顔の血色が良くなっているような気がする。
どうやら商売は順調らしい。
「好調みたいですね」
「おおよ。お前のおかげだ、魔法使い」
パンパンと肩を叩き、鰻登りのグラフを見せてくれた。
青い箱船騎士が専属契約した――というのは、ロダイルさんの営業活動によって瞬く間に広がった。
それを聞いてた冒険者から、かなりの数の問い合わせがあったらしい。
生産数に限りがあるため、今では予約待ちなのだそうだ。
やり始めた頃から考えると、考えられないことだ。
「ところで、ロダイルさん。釣りってやります?」
「釣り? なんだ、それは?」
「え? 知らないですか? ほら、竿を使って魚を捕るんですよ」
「竿? 物干し竿なんかで魚を捕るのか?」
首を傾げる。
あれ? もしかして、エルドラドって『釣り』がないのか?
聞けば、魚は手、もしくは銛、あるいは網を使って捕るのが、エルドラドでは一般的らしい。
確かに網とかで捕る方が大量に取れるだろうけど、『釣り』をやらないというのはもったいないなあ。
結構、ぼくは釣り好きだ。
社会人になってからは時間がなくてやってなかったけど、学生の頃はよく近くの池や川、海にいって魚を釣っていた。
「おい。魔法使い」
考え事をしているぼくの目に、ロダイルさんのどアップが映る。
思わず椅子からひっくり返ってしまった。
「失礼なヤツだ」
「驚かない方が無理ありますよ」
「言ってくれるな。何か金の匂いがするアイディアでも思いついたか?」
「いえ。そこまでは……。ただちょっと余暇の過ごし方に、1つくわえようかなって思っただけです」
ぼくはにこやかに笑うと、ロダイルさんは首を傾げた。
家に帰ると、パーヤが残してくれたサッサを手に取る。
名前のニュアンスと、七夕に似た七曜祭に使われていたから、サッサは笹だと思っていたのだけど、どちらかといえば竹に近い。
特に幹の部分は、硬いし、粘りもある。
祭りに使われているのは、細いものが多く、もちやすいからちょうどいい。
もうわかってると思うけど、ぼくはこのサッサを使って、釣り竿を作ろうと考えていた。
実は、昔おじいちゃんから作り方を習ったことがあるのだ。
それをエルドラドで実践しようというわけ。
まずはざっとナイフで枝を落とす。
汚れを落とし、火であぶった。
浮き出てきた油を拭き取ると、これだけで釣り竿ぽく見える。
そこからさらに、枝を丁寧に落とす。
また火であぶって、竿の曲がりを直していく。
ただ曲がりが気になりすぎて、長時間火であぶるとたまに爆発してしまうのでご注意を。
あとは、先端に糸をつけて完成だ。
軽く振ってみる。
ふぉっ、と懐かしい音が耳に入ってきた。
「パーパ! ごはん!」
自室にガヴがやって来た。
え? もうごはん。
顔を上げると、窓の外は真っ暗だ。
相当、集中してやっていたらしい。
ぼくは作業を止め、食堂へ向かった。
食事を食べながらも、ぼくの頭の中は釣りのことで一杯だ。
あとは釣り針がほしいなあ。
売ってないよなあ。
自作で作るか。
モンスターの牙とか使えないかな。
歯の鋭いモンスターなら、案外そのまま流用できるかも。
クレリアさんに頼んで、探してもらおうか。
出来れば、ルアーも作りたいよね。
いい素材ないかな。
重りは揃えること出来るけど、アクションにこだわりたいよね。
茶碗をもちながら考えていると、ふとパーヤとガヴの会話が耳に入った。
「ガヴさん、その木の実は外側が硬いですから、食べなくていいですよ」
「がう゛?」
「ガヴはなんでも食べちゃうからなあ。そのうち、椅子の脚とか食べたりして」
「クレリアさん、それは言い過ぎです」
「がう゛う゛う゛う゛」
ガヴがポカポカとクレリアさんを叩く。
楽しそうだ。
けど、ぼくはそれに付き合わず、皿に乗った木の実を見つめた。
ピスタチオみたいな木の実……。
「これだ!」
思わず椅子から立ち上がった。
「次のお休みの日に、みんなで釣りに行こう」
食事が終わって、居間でまったりしている家族に、ぼくは提案した。
みんな「釣り?」って顔をしている。
ぼくは簡単に説明した。
「面白そうじゃん!」
「それでは、わたしはお弁当を作ろうかしら」
「がう゛がう゛!」
概ね納得してくれたらしい。
「そこでみんなには、ルアーを作ってほしいんだ」
ぼくは今日食事で出てきた空の実を見せた。
宇宙船を使い、ぼくたちはアリアハル近くの川へと向かった。
最近、かなり暑くなってきたけど、水辺はひんやりとして気持ちがいい。
川の音が涼やかだ。
ぼくは早速、あらかじめ作っておいた全員分の釣り竿を取り出す。
準備を始めた。
その間はパーヤは敷物を敷いて、休憩場所を確保する。
「あれ? パーヤ。……クレリアさんとガヴは?」
「そういえば……。どこ行ったのかしら」
しばらくすると、2人が木の陰から出てくる。
現れた2人を見て、ぼくは思わず悲鳴を上げそうになった。
「み、水着!」
そう! 2人とも水着姿だった。
まずクレリアさんは、シックな大人の黒ビキニ。
反則なのは、その表面積だ。
乳房の本当に先端部分と、下腹部のところしか隠れていない。
おへそも丸見えになっていて、くびれの部分もはっきり見える。
紐も細くて、何かの弾みでほどけそうだ。
「どう? トモアキ」
クレリアさんはしなを作り、その美脚とお尻をこちらに向ける。
完全にむき出しになっていて、つるりとした美尻が陽の光を反射していた。
お尻に浮かんだ汗が、またエロティックだ。
ぼくは思わず呆然とする。
顔が赤くなり、今にも鼻血が吹き出てきそうだった。
「ちょ、ちょっと! クレリアさん」
「なによ、パーヤ」
パーヤに向かって正面を向く。
思わず彼女も顔を赤くした。
同性でもさすがに刺激が強いらしい。
「そ、その格好はご主人様には――」
「何よ、はっきり言いなさい。そもそもあんただって着てるでしょ」
「きゃあああああ!」
クレリアさんはパーヤの着ていたワンピースを掴むと、力任せにはぎ取った。
揺れるワンピースの中から、こちらも水着姿のパーヤが現れる。
オーソドックスな白のビキニ。
何の飾り気もない。
しかし、それはもはや一種の兵器だった。
ぼくはパーヤの胸に釘付けになる。
本来であれば、乳房を隠すものであるはずなのに、パーヤの大きさの前では何の意味もなかった。クレリアさんのマイクロビキニと一緒だ。まるで隠れていない。今にも肩紐がほどけて、胸がミサイルみたいに発射されそうになっている。
「み、見ないでください」
手で胸を隠して屈む。
胸が寄って水着からこぼれそうになっていた。
むしろ、そっちの体勢の方があざとい。
あざといといえば、最後の1人の水着が一番あざとかった。
「がう゛がう゛!」
2人の水着姿に圧倒されているぼくの袖を、ガブが引く。
どう? という感じで、パーヤ並のターンを見せつけた。
オーソドックスといえば、この水着ほどのものはないだろう。
濃い群青色に、しっかりと秘所を隠した鉄壁の守り。
しかし、そこに何故か「がう゛」と名前が書かれるだけで、男が燃え立つという不思議。いや、現代のオーパーツ!
そう!
ガヴはスクール水着だったのだ。
――って! なんでや!
ここは異世界やろ!
スクール水着はおかしいやろ!
どこで売ってんねん!!
「どうどう、トモアキ」
「そ、そうですわ。ご主人様も殿方。……興奮するのはわかりますけど」
「あ。ああ……。ごめん。なんていうか。思わず取り乱して、地方の方言を使っちゃった」
ともかく、落ち着こう。
「あ、あの……。ご主人様」
「ねぇ、トモアキ。なんか言うことあるんじゃないの」
「がう゛がう゛」
「あ……ええっと」
ぼくは赤くなった頬を掻く。
はにかみながら、彼女たちに本当の気持ちを伝えた。
「似合ってるよ、3人とも」
「ありがとうございます、ご主人様」
「えへへ……。ありがと、トモアキ」
「がーう゛! がーう゛!」
3人とも、とても嬉しそうに微笑んだ。
釣り竿からのまさかの水着回なんて……。
釣りもいいけど、ゲーム(ネタ)しろよ。




