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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
間章 異世界の夏編

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第52話 魔法使い、星に願う(前編)

数時間前ぐらいにネタを思いついて、突発的に更新してみました。

久しぶりの更新ですが、よろしくお願いします。

 ふと、ぼくは目を覚ました。


 時計を見ようと寝返りをうつと、ホールド感がある。

 毎朝いつものことだが、ガヴが夏の蝉のようにくっついていた。


 前にあったグリードフォックスのミミの一件で、自立したのかと思ったのだけど、最近また甘えんぼさんだ。


 まあ、朝からガヴの耳をモフモフ出来るので、ぼくはこの方がいいけど。

 どうやら、自立していないのはぼくの方だ。


 ガヴを抱えるように抱いて、ぼくは二度寝を決め込む。

 畑仕事に出るには、まだちょっと早い。

 再び夢の中へと没入する。


 とんとん……。


 瞼を閉じた瞬間、外から音が聞こえた。

 随分と遠くだ。

 澄んだ音色にはどこか懐かしさがある。


 目を擦り、起き上がった。

 ガヴも聞いたらしい。

 黄色い狐耳をピクピクさせると、起き上がった。


「パパ、(お)はよ」

「うん。おはよ」


 朝の挨拶を交わすと、ガヴはキョロキョロと見回す。

 音の出所が気になるらしい。


 ぼくはカーテンを引いた。


 朝の強い光が差し込む。

 窓を開けると、とんとん……という音がより一層クリアに聞こえてきた。

 市街の中心から聞こえる。


 すると、庭の方で作業をするパーヤを見つけた。

 何やら苗木を植えている。

 あれ? どこかで見たことがあるぞ。

 笹じゃないかな?


 ぼくは気になって、階下へ降りる。

 ガヴと一緒に寝間着のまま部屋に出た。


「パーヤ。おはよう」

「おはようございます、ご主人様」


 パーヤは作業を止める。

 すると、その場で回転してくれた。

 ふわりとスカートが浮き上がる。

 いつもながらも、綺麗なターンだ。


 ぼくはほっこりする。


 パーヤは頭を下げて、挨拶する。

 さらりと綺麗な黒髪が大きな胸の中に落ちた。


「ばーや、(お)はよ」

「はい。ガヴさん、おはようございます」


 相変わらずガヴは、パーヤの名前をいえないようだ。

 前にクレリアさんと一緒になって、名前の発音を矯正しようとしていたみたいだけど、悉く失敗した。

 これでもまだましになった方なのだ。


「今日はお早いんですね」

「うん。音に目が覚めてね」

「音? ああ。お祭りの音ですね」

「お祭り? お祭りがやってるの?」

「ご主人様は異界から来られたので知らないんですね。今日は七曜祭といって、年に1回だけ神様が願いを叶えてくれるといわれているお祭りがあるんです」

「へぇ……」


 なんか七夕みたいだな。


「祭りには曰わくがありまして、ヘカテとデルカという神様の子供がいて、とても愛し合っていたのですが、あまりに仕事をしなくて神様がお怒りになり、2人の間に大きな川を作ってしまい、会えなくしたんです」


 本当に織り姫と彦星(たなばた)だった。


「そのヘカテとデルカが会えるのが、今日ってわけ?」

「なんで知ってるんですか?」

「ぼくの世界でも似たような話があるんだよ」


 おそらくこの祭りを発案したのは、ぼくの世界の住人なんだろうな。


「でも、それは表向きの理由でですね」

「表向き?」

「本当は仕事をしなかったのはヘカテで、怒ったデルカが子供と一緒に出て行ったそうなんです。で、今日がヘカテが子供に会える唯一の日とか」


 ちょ! ちょっと!

 理由が生々しすぎるよ!

 何、その離婚調停の条件みたいな理由は!


「そうか。じゃあ、今日は農作業はお昼までにして、お祭りに行こうか。パーヤも今日は家事を休んで。夕食は外で食べよう」

「いいんですか?」


 パーヤは目を輝かせる。

 待ってましたといわんばかりだ。


「それじゃあ。まずは、このサッサを立てたら、すぐに朝食を作りますね」


 サッサというのは、この笹に似た木のことらしい。


 すると、パーヤは何かを思い出した。

 パンと手を叩くと、エプロンドレスのポケットの中から、札を取り出した。


「ご主人様もどうぞ。神様に願うことを書いて下さい」

「願い事か。うん。じゃあ、考えておくよ」

「ガヴさんもどうぞ」

「ここに願い事を書くんだよ、ガヴ」

「ねがい……?」

「ここに願い事を書いたら、神様が叶えてくれるんだ」

「おお……」


 狐耳幼女の目が、ペカーと光り輝いた。


「なんでも?」

「ああ。なんでもいいよ」

「うーん……」


 真剣に考え始めた。

 最近、ガヴは文字も習得しつつある。

 簡単な願い事なら書くことが出来るだろう。

 ぼくは朝食を食べた後、願い事を書いて、サッサに吊した。


 ガヴは相当悩んでいた。

 ぼくが農場に行って、クレリアさんを呼んでくるまで、ずっとダイニングテーブルの上で考えていたほどだ。

 ようやく書き終わると、風呂場で汗を流したクレリアさんが尋ねた。


「ガヴぅ、何書いたの?」

「ひみづ」

「なになに……。見せてよ」


 ガヴの札を引っ張るが、頑なに見せようとしない。

 見かねたパーヤがたしなめると、クレリアさんは退散した。

 ガヴは自分でサッサにつけると、熱心に神様にお祈りしていた。


 一体、何をお願いしたんだろう。

 あとでこっそりと見てみよう。




 一方、ぼくはクレリアさんと屋敷に帰る道すがら面白いものを店先で見つけた。

 少し値が張ったが、最近事業は順調だし、奮発することにした。


 家に持ち帰り、パーヤに見せる。

 生憎とぼくはそれ(ヽヽ)の着方を知らなかったのだけど、パーヤはしっかりロダイルさんの職業訓練所で習得していた。


 3人の女の子はしばし部屋に籠もる。

 キャッキャッウフフフというかまびすしい声が、階下まで聞こえてきた。

 やがて、玄関ホールに3人が並ぶ。


「…………!」


 ぼくは思わず絶句した。

 頬が赤くなるのを感じる。

 今、ぼくの目には浴衣姿の女の子が映っていた。


 それぞれ柄が違う。


 パーヤのは、白地に赤い花柄がちりばめられた生地だ。

 黒髪の彼女にとても似合っていて、その髪もしっかりと上でまとめ、うなじが見えるようになっている。とても色気があって、思わず彼女の匂いを嗅いでしまいたくなる。


 ガヴは膝丈が短い子供用の浴衣を着ていた。

 桃色の下地に、桜の柄がちりばめられている。

 合わせて買ったピンク色のリボンがとてもキュートで、よく似合っていた。


 クレリアさんは、紺色に大きな朝顔の柄が描かれた浴衣を着ていた。

 狙い通りというか、とても大人っぽい。

 これで15歳なんて反則だ。


「あれ? クレリアさん、足が――」


 実は、クレリアさんの浴衣にだけスリットが入ってた。


「ああ。これ……。ちょっと動きづらいから、切ったのよ」

「信じられませんわ。折角、ご主人様が買ってくれた浴衣を」

「いいじゃない。その方がトモアキも喜ぶでしょ」

「う、うん……」


 ごくりと喉を鳴らし、ぼくは言われるがまま頷いてしまった。

 スリットから見える生足が、今日は一段と綺麗に見える。

 魔法使い姿なら、いつでも見ているのに、浴衣になるとまるっきり印象が変わるから不思議だ。


「みんな、ちゃんとサイズが合って良かったよ」

「1人サイズがあってないような気がするけど」


 クレリアさんはいやらしく笑う。


 視線の先にあったのは、パーヤ――その胸だった。

 うまく帯で止めてはいるが、大きな胸が今にもこぼれでてきそうだ。


 パーヤ……。もしかしてまた大きくなったんじゃないだろうか。


 たわわに実ったお胸をガン見してしまう。


「ご主人様。そんなに見られたら、困ってしまいますわ」


 恥ずかしそうにパーヤはしなを作る。

 その姿すら、ぼくには愛おしい。


 胸をむさぼり尽くしたい!

 という欲求を抑えつつ、ぼくは咳を払った。


「じゃあ、行こうか。お祭りへ」

「待って、トモアキ」

「なに? クレリアさん」

「トモアキは浴衣を着ないの」

「ぼく? え? ぼくはいいよ」

「あたしたちが着るのに、トモアキが着ないのはズルい」

「そうですわ。下々のものが着飾っているのに、主人のトモアキ様が普段通りでは周りに示しがつきませんわ」

「がう゛がう゛」


 他はともかく、パーヤは意地悪な言い方をするな。


「わかったよ。途中で浴衣を買った店に寄ろう」


 屋敷を出ると、ぼくの浴衣を買った。

 その時に店主に聞いたのだけど、この世界の浴衣は祭りの時にだけ着る伝統的な衣装らしい。きっと、七曜祭を伝えたぼくの世界の住人が、浴衣にこだわったんだろうな。


 シックな黒に縞柄が入ったものを選んだ。


「ご主人様、とてもお似合いですわ」

「へへへ。かっこいいよ、トモアキ。男をあげたね」

「がーう゛!」

「そ、そうかな。ありがと、みんな。じゃあ、改めていこうか。お祭りに」


 ぼくはガヴの手を引き、パーヤとクレリアさんを両側に侍らせ、お祭りへと向かうのだった。


今日中に最後まで書きたかったのですが、時間の都合でギブアップ。

後編は明日、投稿します。


みなさんが短冊に掛けた願いが、叶いますように!

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『ゼロスキルの料理番』
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