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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第6章 青い箱船騎士編

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第49話 ゲーム機を使ってダンジョン攻略

ダンジョン攻略の歴史が今、覆る。


「な、なんだ、これは!?」

「ふ、副長! と、飛んでいます!」


 狭い宇宙船のコクピットの中で、2人の冒険者は右往左往していた。

 一応、ベルトはしてもらっているが、今にも引きちぎって逃げださんばかりの勢いだ。


 クレリアさんみたいな魔法使いならともかく、空を飛ぶなんて経験は初めてのことなのだろう。

 それにしてもうるさいので、ちょっと静かにしてもらいたかった。

 割とウチュウセンのコントロールは難しいのだ。


 依頼を受けた次の日、ぼくは宇宙船を東へと向けて飛行していた。

 コクピットには、ぼくとリナリィさん、ハインツだけ。

 リナリィさんは残った青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトを連れて、ダンジョンに踏み込むつもりだったらしいが、ぼくが却下した。

 正直、足手まといだし、ボク1人でやった方が気楽だ。

 本来なら、後部座席で喚いている2人も連れてきたくなかったのだが、ぼくは団長さんの顔を知らないので、同行を許可した。


 ちなみにぼくの家族は留守番だ。

 クレリアさんは同行を求めてきたのだが、ぼくが不在の間、街を守れるのは彼女ぐらいしかいない。

 前みたいに魔王の幹部がやってきたら、対抗する術がないしね。


 ぼくの説得にクレリアさんは渋々応じてくれた。

 今度、何か埋め合わせしないとな。

 プレゼントとかどうだろうか。

 でも、異世界の女の子の好みとかわからないんだよなあ。


「あのリナリィさん」

「なんでしょうか、トモアキ殿」

「女の子って何が好きですか?」

「え?」

「今度、プレゼントしようと思うのですが」

「ぷ、ププププレゼントぉ!?」


 何故か、リナリィさんは凄く動揺している。

 何かおかしなことを言っただろうか。

 ぼくは首を傾げる。


 リナリィさん以上に苛烈に反応したものがいた。

 横に座ったハインツだ。


「貴様、うちの副長に賄賂――ふごぉ!」


 鉄拳が飛んでくる。見事、右ストレートが頬にハインツの頬を捉えた。

 世界が狙えそうだ。

 どうでもいいけど、リナリィさんってハインツに容赦ないよね。


「人聞き悪いことをいうな、愚か者! トモアキ殿がそんなことをする方に見えるのか、貴様は!」

「す、すびばぜん」

「すまない。トモアキ殿」

「いいんですよ。あと、プレゼントというのは、ぼくの家族にでして」

「あ……。ああ、そういうことか」

「同性のリナリィさんなら何か思いつくかなって……」

「ああ、そういうことか。すまない。力になれそうにない」


 リナリィさんは暗い顔をして俯く。


 あ……。

 しまった。空気を読まなすぎた。

 今から、団員を助けに行くのだ。

 しかも、生きているかどうかさえわからない人たちを。

 気丈に振る舞ってはいるが、心の中は千々に乱れてるに違いない。


「こっちこそすいません。大変な時に――」

「そういう意味ではないのだ」


 リナリィさんはゆっくりと首を振った。


「私の家は騎士の家系でな。生来より大神から『女騎士』というジョブを賜り、故に剣一筋に生きてきた……。その……。女の子らしいことは何一つしてこなかったのだ」

「そうだったんですか。……でも、もったいないなあ」

「もったいない」

「さっきリナリィさんと手を握った時、とても柔らかかったし」

「やわ――」

「それにリナリィさんってとても綺麗だし」

「き――」


 リナリィさんの真っ白な顔がみるみる赤くなっていく。

 やや開き気味だった膝を揃え、縮こまるように肩を狭めた。

 膝の上に置いた手をキュッと握る。


 女の子らしい行動に、ぼくは少しほっこりする。

 いいなあ。

 ちょっと男らしくて、堅めの女性が、女の子らしい反応みせるのって萌えるよね。


 ぼくは調子に乗って、話を続ける。


「それにリナリィさんのくち――」


 言いかけて、途中でやめた。

 変な汗がダラダラと流れてくる。


 そ、そうだ。

 ぼく、この人と、キキキキキキキキスしたんだった!


 猛烈な羞恥心が沸き上がり、ぼくもリナリィさんと同じく肩身をすぼめる。


 なんで忘れていた!

 忘却していた分、プラスαで恥ずかしい。


 ぼくはチラリとリナリィさんを一瞥する。

 彼女は覚えているのだろうか。

 あの時、意識は朦朧としていたし、多分覚えていないかもしれない。


 でも、誰かに告げられた可能性はある。

 たとえば……。


 ぼくは隣を見る。

 相変わらずハインツが凄い剣幕でぼくを睨んでいた。

 今の空気をいやがるように、苛立たしげに膝を小刻みに揺らしている。


 ハインツはないと思う。

 あの時、意識を失っていたはずだからね。

 でも、他の団員には見られてたよなあ。


 なんか意識したらリナリィさんの顔が見られないよ。


 初めてってわけじゃないんだ。

 幼稚園の時とかさ。

 好奇心とかでやっちゃうじゃない。

 こう……ブチュッとね。

 いや、キスのうちに入るかどうかは別にしてさ。


 でも、リナリィさんみたいな美人とキスしたのは、その……あの……。


 と、とにかく割り切ろう。

 あの時は、彼女を助けるために仕方なかったんだ。

 ノーカンノーカン。

 ついでに幼稚園でのこともノーカン。

 ぼくの唇はまだ純潔ということにしよう。

 そうしよう。


 はあ……。

 ぼくは一体何を言っているんだろうか。


「おい」


 偉そうに声をかけてきたのは、ハインツだった。


「今、ダンジョンを通り過ぎたぞ」

「え? あ、ごめん」

「しっかりしろよ」


 ハインツはムスッと腕組みをする。

 その言葉は、隣で赤くなる副長にも向けられているようだった。




 宇宙船を着陸させる。


 ダンジョンの入口が山肌に沿うようにぽっかりと空いていた。

 見てくれは単なる洞窟だ。

 しかし、魔物が通ったと思われる足跡が幾重にも重なり、残されていた。


「トモアキ殿、それは?」


 ぼくが手に持ったゲーム機を指さした。


「魔法道具みたいなものだと思ってください」

「このウチュウセンという乗り物といい。貴殿は変わったものをお持ちだな」


 うん。自分でも思うよ。


「リナリィさん、団長さんたちとはどの辺りではぐれましたか?」

「確か下層19階付近だったと思うが」

「わかりました。とにかく、19階に行ってみましょう」

「待て待て」


 制止を促したのは、ハインツだ。


「この3人だけでダンジョンに潜るつもりか。このダンジョンにいるトロルは強敵だぞ。アリアハルにいる雑魚モンスターとは訳が違うのだ」

「わかっていますよ。だから、なるべく避けていこうと思います」

「はあ?」


 ハインツは眉根を寄せる。

 横でリナリィさんは説明を要求した。

 ぼくは作業を続ける。

 言葉で説明するよりも実際、見てもらった方がいいだろう。


「リナリィさん、手伝ってもらっていいですか?」

「私が出来ることなら」

「じゃあ、このコントローラーを持って下さい」

「わかった」


 ぼくはリナリィさんに2コンを渡す。


 さて、ここからがややこしいんだよね、この裏コマンド。

 ぼくは慎重に1コンのボタンを押していく。


 ↑↓←→↓↑→←←→↓↑→←↑


「リナリィさん、このボタンを押し続けておいてくれませんか」

「これでいいのか?」


 リナリィさんは十字キーの左とBボタンを押しっぱにする。

 ぼくも1コンのAボタンを押し、下を入力した。


 スタートを押す。


 すると、ぼくの目の前にウィンドウが開いた。

 真っ黒な画面に「FLOOR 01」と英数字が書かれている。

 よし! 成功だ。


「な、なんだ、それは!」


 ハインツが驚き、腰を引く。

 リナリィさんも口を開けて驚いていた。


「リナリィさん、もうボタンを離していいですよ」


 2人のおかしな顔を見ながら、ぼくは作業を続ける。

 十字キーを使って、数字を「19」に合わせた。


「リナリィさん、今度はこのボタンだけ1回押してください」

「わかった」


 恐る恐るAボタンを入力する。

 今度は、宝箱が現れた。

 それも3つもだ。


「……」

「……」


 2人は呆気に取られている。


 一方、ぼくは淡々としていた。

 うーん。スカか。

 じゃあ、もうちょっと下とかにいるのかな。


「リナリィさん、さっきのボタンを押しっぱなしにしてくださいね」

「あ、ああ……。その前にトモアキ殿。今度、何が起こるか教えてくれないか。少々さっきから心臓に悪いことばかり起きているのだが」

「ふふ……。秘密です。大丈夫です。ぼくを信用してください」


 リナリィさんは頷き、Aボタンを押しっぱなしにする。

 ぼくは十字キーの下を慎重に1回ずつ押した。

 次々に宝箱、あるいは武器や遺跡物が現れる。


 冒険者が顔を青くするのを見ながら、ぼくは下を押した。

 数字が「26」となった瞬間、奇跡が起こる。


 宝箱と一緒に、傷ついた冒険者たちが現れたのだ。

 何もない中空から忽然とである。


 ぼくは防具についたマークを見つめた。

 船首に女神像がついた青い船。

 どうやら青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトの人たちで間違いないようだ。


 リナリィさんも、ハインツも驚きすぎて、固まっていた。


 一方、憔悴しきった冒険者の1人が顔を上げる。

 空に浮かぶ太陽を眩しそうに見つめた後、こちらに顔を向けた。


 口髭を生やした如何にも人の良さそうな男性だった。

 瞳を大きく広げるなり、叫ぶ。


「リナリィ!」


 声を聞いた瞬間、固まっていたリナリィさんは我に返る。

 茶色の目に、じわりと涙が浮かんだ。


「団長!!」


 ハインツと共に駆け寄る。

 傷ついた身体に抱きついた。


「団長! 良かった。無事だったんですね」

「ああ。なんとかな。お前たちも無事で何よりだ」

「はい……。良かった。本当に良かったです」


 リナリィさんは何度も涙を拭った。

 ハインツも男泣きしながら、「団長」と鼻水を垂らしている。

 一方、他の団員もリナリィさんとハインツの顔を見るなり、駆け寄っていった。


 団長を中心に円陣が出来る。

 かなり部下に慕われている人らしい。

 いいなあ。

 あんな人の下で働いてみたいな。


 感動的な再会シーンを見ながら、ぼくもちょっと泣いてしまった。


真面目にダンジョン攻略している方々には申し訳ないm(_ _)m


感想欄からネタをいただきました。

ありがとうございます。

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『ゼロスキルの料理番』
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