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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第6章 青い箱船騎士編

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第47話 神豆販売でまたまた感謝される。

新キャラ来るか? 回。

 神豆の販売が開始されて、1ヶ月後――。


 ぼくとガヴ、クレリアさん、パーヤは豆を販売所に持っていくため通りを歩いていた。手には今朝摘んだ神豆が入った壺を抱えている。


「トモアキ、今日売上がわかるんだろ?」

「まあね」

「楽しみですね」

「結構、売れてたからな」

「パーヤの料理のおかげかな」


 パーヤには、神豆を使った料理を考案させていた。


 神豆は単体で食べると味気ないことこの上ない。

 さらに1粒食べるだけでお腹一杯になってしまうから、他のおかずが食べられないから、どうしても淡泊な食事になってしまう。

 みんなが飽きてしまうのは目に見えていた。

 だから、神豆を使った料理をパーヤに考えるようにお願いしたのだ。


 ちなみに着想は、あの恐怖の豆弁当であったことは内緒である。


「トモアキ、あたしは?」

「もちろん、クレリアさんにも感謝してるよ」

「でへへへ……」


 嬉しそうに笑った。


 大通りに出ると、人だかりが出来ていた。

 市民が沿道に集まって歓声を上げたり、拍手を送ったりしている。

 凄い盛り上がりだった。


「お祭りかな」

「いえ。そのようなことは聞いてませんが」


 しばし騒ぎを見守る。

 すると、大通りの奥から甲冑を纏った一団が現れた。

 2、30人といったところだろうか。


「来たぞ!」

青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトだ」

「すっげぇ!」

「頑張ってくれぇ!」


 声援が送られる。


 青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイト

 初めて聞く名前なんだけど、有名なのかな。


「知ってる?」


 後ろに控えたぼくの女の子たちに尋ねる。


 すると、クレリアさんは冒険者の装備に記されたマークを指さす。

 船首に女神像が掲げられた青い船が描かれていた。


青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトは、レベル50以上の冒険者だけで構成された集団だよ」

「冒険者なの? でも、騎士って」

「勝手に名乗ってるだけ。でも、実力は折り紙付きだよ。あたしも何度か共闘したことがあるけど、下手な王国騎士団よりも実力は上。戦闘という点において、プロよりもプロ意識が高いね」

「へぇ……」

「まあ、なんかお高く止まっていて、あたしは好きになれないけど」

「どうして、アリアハルなんかに来たんだろ?」


 街の周辺には、スライムなどの雑魚モンスターしかいない。

 レベル50以上の冒険者には用がない場所のはずだ。


「たぶん、東の方で発見されたダンジョンを攻略するのではないでしょうか?」


 パーヤは説明する。

 そういえば、そんな情報を聞いたことがある。

 街から出たくないぼくには関係のないことだけどね。


 視線を切ろうとすると、不意に青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトの1人と目が合った。

 甲冑姿とはいえ、綺麗な人だった。

 まるでヴァルハラを疾駆する戦乙女(ヴァルキュリア)を彷彿とさせる。

 ブロンドの髪を揺らし、毅然と歩いていた。

 茶色の瞳を細める。

 一瞬ぼくに挑むような目つきを放った。


 その目はすぐに前を向く。

 なんだったんだろうか。

 首を傾げていると、不意にトントンと肩を叩いた。


「ご主人様……」

「今、どこを見てたの、トモアキ」

「がう゛~」


 こめかみを辺りをひくつかせ、女の子3人がぼくを睨んでいた。

 慌てて首を振る。


「べ、別に何も見てないよ。甲冑が高そうだなって思っただけさ」

「わ、私はご主人様を信じてますが」

「本当に?」

「がう゛がう゛」


 ますます顔を近づけ、真偽を計ろうとする。


「そ、それよりも早く豆を届けないと。ロダイルさんに怒られるよ」


 ぼくは回れ右をする。

 販売所の方を向いて歩き出した。


 終始、背中に突き刺さった視線が痛かった。




 販売所を訪れた。

 ロダイルさんが雇った店員さんが挨拶してくれる。

 もうすっかり顔なじみになっていた。


 ロダイルさんは奥の事務部屋で仕事をしていた。


「おお……。魔法使いか」

「今日の分の納品に来ました」

「ご苦労だな」

「あと、それと――」

「ああ。まあ座れ」


 ロダイルさんに促され、デスク前の席に座った。


 店の奥に儲けられた事務部屋はとても狭い。

 ロダイルさんとぼくが座るだけで精一杯だ。


「正直、売上は芳しくない」


 ロダイルさんはいきなり切り出した。


「といっても、初月は上々だ。だが、今の売上の落ち込みからみると、来月はかなり悪いかもしれない」

「やっぱり飽きが来るのが早かったのでしょうか?」

「それもあるし、野菜の供給量も戻ってきたのも原因だ。価格を見直す必要があるだろう。だが、やはり問題は商品だ。何か付加価値をつけられないか、考えているのだが」

「パーヤが考案した料理は?」

「悪くはないが、決め手に欠けるといったところだ」


 商売は難しいなあ。

 ぼくは唸る。

 異世界に来たんだから、もっとチートな感じで馬鹿売れしてもいいはずなのに。


「わかりました。何か考えておきます」


 ぼくは販売所を後にした。


 転機が訪れたのは、2日後のことだ。

 朝のうちに畑仕事を済ませ、クレリアさん、ガヴと一緒に屋敷に戻っていると、大通りから人の叫び声が聞こえた。


「誰か高度(ハイ)神託(オラクル)を使えるものはいないか!」


 現場に向かうと、多くの冒険者が蹲っていた。

 皆一様に怪我をしている。

 さながら大通りは野戦病院のような騒ぎになっていた。


 よく見ると、装備に青い箱船のマークがついていた。

 2日前に見送った青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトの一団だ。


 ぼくの脳裏に行進する女騎士の姿がよぎった。


「クレリアさん。畑に戻って、神豆を1籠持ってきて」

「助けるの、トモアキ」

「見て見ぬ振りは出来ないよ。ガヴは屋敷に戻ってパーヤを呼んできて」

「がう゛!」


 ガヴは力強く頷くと、屋敷へと走る。

 クレリアさんも飛翔魔法を使って、大急ぎでハウスへ引き返していった。


 ぼくは現場へと急行する。

 野次馬を割って入ると、大通りに出た。

 血の臭いが鼻をかすめる。

 想像以上に、混乱していた。


「誰か! 誰かいないのか! 副長が! 我らが副長が死んでしまう!」


 その中で一際声を張り上げているものがいる。

 赤髪の真面目そうな男。

 頭から血を流しながら、猛り狂っている。

 助けを求めているというよりは、まるで周囲を咎めているような気がした。


 その傍らに倒れた者を見つめる。

 ぼくは大きく瞼を開き、驚いた。


 あの(ヽヽ)娘だ。

 一昨日、青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトが行進する中で見かけた女性だった。

 美しかった姿は見る影もない。

 ブロンドの髪にはべったりと血が貼り付き、何より胸の甲冑には、ぽっかりと穴が開いていた。

 完全に致命傷だ。

 が、彼女は生きていた。

 ダンジョンがどこにあるかは知らないが、そこからアリアハルまで地獄のような苦しみに耐えながら、生き延びたということになる。


 側を見ると、神官らしき男が2人倒れていた。

 魔力切れの症状が出ている。

 回復の神託(オラクル)をかけ続けたのだろう。


 よっぽど青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイトの団員にとって、この人は大事な人なのだ。


 ぼくは駆け寄った。

 すると、赤髪の男がぼくの行く手を阻む。


「貴様、何者だ? 神官か?」


 助けを求めている割には、やたら高圧的な態度だった。

 けれど、今は懇切丁寧に説明も、返答もしている時間はない。


 ぼくは早口で呪文をまくし立てた。


「ゆう○い――」


 ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。


 レベルマ状態になる。

 しかし、その行動はさらに男の不興を買った。


「なんだ、そのふざけた呪文は! 神官でもないのに近づくなど……」

「どいてくれる」


 自分でも驚くほど冷徹な声だった。

 柄に手をかけた男を、ぼくは張り飛ばす。

 壁に激突すると、あっさりと意識を失った。


 騒がしかった大通りが一気に冷める。

 静寂が支配する中で、ぼくは女性に駆け寄った。

 ポケットから常備している神豆を取り出す。


「これを食べて」


 荒い息をする女性の口に入れた。

 だが、すぐに吐き出す。

 唇から神豆がぽろりと落ちた。


 ぼくはもう1度、神豆を拾い上げる。

 今度は、自分の口にいれると、よくかみ砕いた。

 飲み込めるぐらい小さくする。


 改めて女性の口元を見つめた。


 後で振り返ってみれば、一体どうしてこんなことが出来たのか。

 ぼくにもよくわからなかった。


 ただこの女性を助けたかった。

 その一心だったのだ。


 かみ砕いた神豆を含ませたぼくの唇を、彼女の唇に重ねる。


「おおお……」


 歓声とも、悲鳴とも取れる声が上がった。


 ぼくは必死に彼女の口の奥へと神豆を押し込む。

 やがて反射的に喉が蠕動すると、ようやく女性は飲み込んだ。


「ぷはっ」


 ぼくは顔を上げる。

 一方、苦しそうにうめいてた彼女が、すうすうと小さな寝息を立て始めた。

 傷口を確認する。

 胸の大穴がふさがり、すっかり元通りに戻っていた。


 ぼくは胸を撫で下ろす。

 良かった。

 神豆が上手く機能したみたいだ。


 本来の設定から知っていたけど、傷を治すのに使ったのは初めてだったから、少しドキドキしていた。


「ん……。ううん……」


 女性は目を覚ました。

 何事もなかったかのように上体を起こす。


 誰かが呟いた。


「神だ……」


 その言葉をきっかけに爆発的な歓声が沸き起こった。

 負傷し、蹲っていた冒険者でさえ、傷のことを忘れ飛び上がる。

 ぼくと女騎士さんを取り囲んだ。


「すごい!」

「神の所行だ!」

「また魔法使い様が奇跡を与えてくださった!」

「おお。なんと慈悲深い!」

「まさか口づけで、重傷者を治してしまうとは」


 おいおい。

 なんかすごい勘違いをしていないか。


 その時、ぼくの脳裏にロダイルさんの声が聞こえた。


 “何か付加価値をつけられないか”


 あ。そうか。


 咄嗟にまだポケットに入っていた神豆を取り出す。

 皆に見えるように掲げた。


「ぼくの力じゃなくて、この豆の力です。この豆はお腹一杯にもしますけど、どんな傷も癒やすことができます。ただ今、絶賛発売中なので皆さん買って下さいね」


 宣伝する。

 皆の目の色が変わった。


「マジか!?」

「私、珍しくて一粒買ったけど、そんな効力があるなんて」

「また買いにいこう!」

「どこで売ってんだよ、それ!」

「大通りに販売所があったぞ!」


 すると、野次馬は群れをなして、販売所へと突っ込んでいった。


 やれやれ。

 お客さんって現金だよね。

 まあ、これで豆が売れてくれるなら、問題ないけどね。


 民衆の集まりを見ながら苦笑する。


 隣で睨む女騎士の胸中に、その時全く気づかなかった。


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