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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第5章 ゲーム機発見編

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第38話 魔法使いはうっかり勇者を救う。

思いっきり戦闘回。

 赤く血のような瞳がぼくを睨んでいる。

 黒皮(こくひ)の竜は、高度5000メートル上空にも関わらず、羽を激しく動かして、戦闘機の上を飛行していた。


 この戦闘機について来られることすら異常なのに、それが巨大な竜なんて。

 どうなってんだよ、異世界。

 魔法で何でも片づくと思ったら大間違いだぞ。


 泣き言をいっている場合ではない。

 今にも、竜は獰猛な牙をぼくの方に向けてきそうだ。


 ともかく、こちらは敵対する意志がないことを示そう。

 さっき名前も聞かれたしね。


「えっと……。ぼくの名前は相田トモアキです」

「人間か?」

「え、ええ……。魔法使いをしています」

「お前が乗っているそれはなんだ?」

「戦闘機です」

「戦闘機?」

「あ。いえ、戦うとかじゃなくて、単なる空飛ぶ乗り物ですよ」


 ぼくは慌てて訂正する。

 戦闘兵器です、とかいったら、いきなり戦いになりそうだ。


「あの……。そちらは?」

「オレ様か……」


 よくぞ聞いてくれたという感じで、少し口を開けて竜は笑った。


「オレ様の名前はサラマンダー! 魔王様に仕える四天王の一角」


 し、四天王だってぇぇぇええ!!


 コクピットの中で、ぼくは叫ぶ。

 驚嘆する人間を見ながら、サラマンダーはさらに顔を愉悦に歪めた。


「ぶははははは! ようこそ人間よ! 我が領土へ!!」

「領土?」

「空こそ、オレ様が魔王様に与えられた領土なのよ」

「全部ですか?」

「むろん!」


 それってハイミルドすべての空がサラマンダーのものってこと?

 ちょっと取りすぎなんじゃないかな。

 一応、部下なんだし。

 自重した方がいいと思うけど。


「それで、サラマンダーさんは一体なんでこんなところに? 四天王なんだから、魔王を守るのが役目なのでは?」

「ほう。人間の割には頭が回るではないか」


 いや……。誰でも思うって。


「魔王様の命令でな。今から我が軍勢を以て、勇者を打ち倒しにいくところだ」


 勇者を…………打ち倒す…………。

 なんて甘美な響きなんだ。

 是非とも、あの迷惑勇者をボコボコにしてほしい。


「そ、それはそれは……。頑張ってください」

「ほう。余裕だな、人間」


 ギロリとぼくを睨む。

 しまった……。

 どうやらサラマンダーは、自分が侮られたと思ったらしい。

 ふん、と鼻息を荒くすると、キャノピーが曇った。


「そんなに勇者は強いのか?」

「いや、頑張れっていったのは、裏があるとかじゃなくてそのままの本心です」

「本心だと……」

「ええ……」


 色々と迷惑を被っているし、そろそろご退場願ってもいいと思うんだ。

 でも、死ぬ前にレベルマで1発殴っておきたいけど、竜の大軍にボコられるならそれもいいかもしれない。


 心の中で独白する一方で、サラマンダーはさらに表情を歪める。

 牙によって閉じられた口内の奥が、ほのかに赤くなっていた。


 やばい……。

 なんかやっぱり怒ってるみたい。


「人間が魔族に頑張れだと!! 貴様! このサラマンダーを侮るか!」


 わわわ……。

 やっぱり怒ってらっしゃる。


下手(したて)に出れば、苦しまずに殺してやろうかと思っていたが」


 結局、殺すのかよ!


「地獄の業火に焼かれて死ぬがいい!!」


 口内が紅蓮に光る。

 マグマのようなドロッとした炎が沸き上がってきた。


 すかさず十字キーの右を押した。

 戦闘機は翼を立て、素早く回避行動に移る。


 瞬間、炎の息は放たれた。

 戦闘機の直上にレーザービームのような赤い光がほとばしっていく。


 危ない……。

 さすがに当たると不味いんじゃないか。


 とにかくフルスロットルだ。

 逃げるしかない。


 ぼくは機首を下げる。


「だだっ広い空の上じゃ。ただの的だよ!」


 誰もいないコクピットの中で、ぼくは絶叫した。

 今なら、ロボットアニメのパイロットの気持ちがわかる。

 人は閉鎖空間にいて、危機に陥ると饒舌になるものなのだ。


 手近な雲に突撃する。

 何も見えない――灰色の空間の中を突っ切っていく。

 これで撒いただろう。

 そもそもこっちはマッハ100で航行している。

 竜だろうが、四天王だろうが、本気を出せば追いつかれることはない。


 だが、ぼくが安堵できた時間は一瞬だった。


 雲を抜ける。

 どうやら地表近くに出てしまったらしい。

 ぼくは目の前に展開された光景に息を飲んだ。


 どんよりとした雲の下。

 飛竜の大軍が羽ばたいているのが見えた。

 空だけではない。

 地上では地竜が這い回り、真っ黒になっていた。

 サラマンダーほどではないが、とにかく数が多い。


「げぇ!!」


 ぼくはまた叫ぶ。

 声が聞こえたのか。

 それとも戦闘機のエンジン音に気付いたのか。

 一斉に竜の大軍が、こちらに首を向けた。

 激しく威嚇しながら、さながら洞窟から出てきた蝙蝠のように戦闘機(ぼく)に群がってくる。


「回避しきれないよ!!」


 低高度を埋め尽くす飛竜の群れ。

 ぼくは逃げ場を探したが、どこにも見当たらなかった。

 突っ切ることも出来たかもしれない。

 だが、マッハ100で物体に当たれば、こちらもただでは済まないはずだ。


「ぶ、武器はないのか? 武器は!?」


 生憎とコクピットの中にはマニュアルらしきものはない。

 あるのは十字キーに4つのボタンだけだ。


 ぼくはAボタンを押す。

 機銃がタタタッと一瞬だけ動いた。


 まさか!

 オート連射じゃないのか!


 Aボタンを連打する。

 ぼくは機銃を掃射した。

 迫り来る飛竜を蜂の巣にする。

 大量の血がキャノピーを濡らした。


「よし! 行けるぞ!」


 機銃でも十分対応出来る!


 ぼくは十字キーを激しく動かし回避し、応戦する。

 機銃で竜を撃ち抜いていった。


 結構、楽しいぞ。

 リアルなシューティングゲームをやってるみたいだ。


 けど、数が多い。

 機銃では1ショット1匹が精々だ。

 こんなことを続けていたら、さすがに集中力が保たない。

 いくらレベルマといえどだ。


 せめて、もう少し火力があったらなあ。


 考えた時、天啓が舞い降りる。

 いや、そんな大層なものじゃない。

 むしろ嫌な予感に近い。


 ぼくは1コンを睨んだ。


 素早くコマンドを入力する。


 ↑↑↓↓←→←→BA


 しかし、なにも――――いや、違う。

 起こった(ヽヽヽヽ)


 戦闘の先端に青白いバリアのようなものが展開される。

 軽く後ろを振り返れば、赤い光球が戦闘機についてくるのがわかった。


 ぼくはAボタンを押し込む。

 青いレーザーが何匹もの竜を一瞬にして貫いた。

 さらに同時投下された対地ミサイルが、下にいた竜を吹き飛ばしていく。

 オート連射のおまけ付きだ。


「よっし! 反撃開始!」


 ぼくは竜の群を蹂躙する。

 空を縦横無尽に飛行し、大地にはびこる竜を根こそぎミサイルで吹き飛ばしていった。


「貴様ぁぁああああ!!」


 咆哮が鈍色の空の下でこだました。

 雲の中からサラマンダーがようやく現れる。


「よくも我が眷属を殺してくれたな!」

「そっちが突っかかってきたんじゃないか!」


 そもそも勇者をやっつけるなら、ぼくはそれで良かったんだ。


「うるさい! 食らえ!!」


 再びサラマンダーは赤い息を吐く。

 ぼくは寸前でかわし、その懐に潜り込んだ。

 Aボタンを押す。

 青いレーザーを放った。


 サラマンダーの黒皮を貫く――――はずだった。


「うっそ!」


 レーザーは確かに当たった。

 だが、貫くまでにいたらない。

 硬い表皮の上を焼く程度だ。


「おいおい! なんて硬さなんだよ!」

「は! そんな攻撃、屁でもないわ!!」


 一喝する。

 ぼくはサラマンダーの脇をすり抜けながら、反転すると分身とともにレーザーを放った。

 けれども、結果は同じだった。


「レーザーが最強の攻撃なのに」


 どうしよう。

 いきなり万策尽きたぁぁぁああ!!


 いや、まだだ。

 三十六計逃げるに如かずってね。


 ぼくは十字キーを押した。

 機体を立てると、サラマンダーから離れていく。

 さらに機首を上に向け、高度を取った。


「逃げるのか! 人間!! 臆病者!!」


 何とでもいうがいいさ。

 その手の罵倒は、子供の頃から聞き飽きてるんだよ。


 サラマンダーは大きく翼をはためかせる。

 巨体に似合わぬ機動力で、ぼくの戦闘機を追いかけ始めた。


「待て! 人間!!」

「追ってこないでよ!」

「同胞の仇を討たずして、何の四天王だ」


 真面目な上司だな、全く。

 悪党なのに。

 そんな上司に出会いたかったよ、こんちくしょー。


 ぼくはさらに高度を取る。

 すでに1万メートルを越えていた。

 サラマンダーはまだ追ってくる。

 元気に炎の息を吐き出してきた。


 ぼくはさらにスピードアップをイメージする。

 インパルス・パワー推進型エンジンの音が、人間の聴力の限界を超えて、甲高い音を立てた。


 エンジンはMAX。

 空の色も青から黒へと代わり始めた。


 今さらだけど気圧調整とか大丈夫かな。

 まあ、宇宙戦闘機だし。未来だし。

 大丈夫だと信じたい。


「ま………………って…………」


 さっきまで元気だったサラマンダーの声が遠くなる。

 高度はすでに10万メートルを超えていた。

 星がはっきり見える。

 綺麗だ。


「ガヴやパーヤ、クレリアさんに見せてあげたいなあ……」


 黒い生地に浮かんだ宝石をうっとりと眺めながら、ぼくは呟く。

 数秒ほどそうした後、戦闘機を反転させる。


 空に白い氷のオブジェが浮かんでいた。

 巨大な竜の氷像。

 口を大きく開け、何かを掴もうと必死に手を伸ばしていた。


 気温はすでに絶対零度に限りなく近い。

 いかな四天王とはいえ……。レーザーも通さぬ硬い表皮とはいえ……。

 宇宙の恐ろしさには勝てなかった。


「だから、忠告しただろ。付いてくるなって……」


 コントローラーを握り直す。

 Aボタンに指をかけた。


「バイバイ、サラマンダー」


 押し込む。

 戦闘機の先端から青いレーザーが解き放たれた。

 直進する。

 今度、あっさりと竜の腹を貫いた。


 サラマンダーは砕け散る。

 その破片は、ハイミルドの空にたくさんの流星を降らせた。


 その様子を見ながら、ぼくはシートにもたれる。

 内心辟易していた。


 ――あ~あ。また勇者を救ちゃった……。


 頭を抱えるのだった。


そろそろ勇者を絞めねば……(使命感)


ブクマ・評価・感想いつもありがとうございます。

励みになっておりますm(_ _)m


【緩募】

コナミコマンド以外の裏技コマンドを募集中です(ただしファミコンに限る)。

読者の皆様の記憶にある範囲でいいので教えて下さい。

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