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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第5章 ゲーム機発見編

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第36話 魔法使い、ダンジョンの秘密と対峙する。

まんまアレが出てくる回。

「雷鳴を讃えるものヴォードよ。我、ルーイが命じる。其の力、我が手に宿りて、その戒めを轟け!!」


 雷鳴の槍(サンダーランス)!!


 ルーイさんの手から雷光を纏った矢が生まれる。

 振りかぶると、眼前の魔物に投擲した。


 一見、雪達磨にも見える巨大な熊。

 その胸を貫く。

 唸りを上げて、大量の電撃を浴びると絶命した。


 どお、と倒れるモンスターを見ながら、ぼくとガヴはパチパチと手を叩く。

 格好いい。

 ぼくももうちょっと何か魔法を覚えようかな。

 まともな魔法は、火の弾(ファイヤボール)明光(ライティング)ぐらいだしね。


「感心してる場合ではないぞ。そっちは終わったのか」

「ええ。終わりましたよ」

「がう゛がう゛」


 ぼくはダンジョンで拾った棍棒を肩に担ぎ、ガブもまた尻尾を振った。

 後ろには、魔物の死体が転がっている。

 皆、撲殺されていた。


 ルーイさんはため息を吐く。


「お主、仮にも魔法使いなのじゃから、魔法を使ってみせよ」

「いや、やっぱり室内で使うのには抵抗が……」

「だから、大丈夫といっておろうが」


 うーん。でも、爆炎がこっちまで伸びてくるのは怖いし、本当にダンジョンがぼくの魔法に耐えられるかも疑問だ。


「奥の手ってことで」

「まあ、良いか」

「随分、降りてきましたね」


 ぼくは天井を見上げる。

 ダンジョンに潜って、2時間ほど経っただろうか。

 かなり下まで降りてきてしまった。


 その間、色々なアイテムを拾い、ぼくの魔法袋はもうすぐ限界だ。

 おそらくルーイさんも同じ状況だろう。


「15階といったところかの」

「そろそろ戻りましょうか」

「いや、もう少し降りるぞ。目的地まであと少しだからな」

「目的地?」


 ぼくは眉を顰める。


「うむ。実は、我は2度目なのだ、このダンジョン」

「前にも来たことがあるんですね」

「そうじゃ。でな、お主に見てもらいたいものがあるのじゃ」

「ぼくに?」

「恐らくお主の世界のものだと思うのだが……。まあ、現地で見てもらう方が早いじゃろ」


 ぼくたちは階下へと降りていく。

 一旦、魔物の攻勢が落ち着くと、魔法袋の中に手を伸ばした。

 ダンジョンの中で拾ったアイテムを整理する。


 武器に始まり、魔草、お金も落ちていた。

 先端に魔石が付いた杖なんかもあって、バラエティに富んでいる。

 さすがに巻物とか鉄の金庫なんかは落ちていないようだけどね。


「この杖……どんな効果があるんですかね?」

「わからん。帰ったら調べてみるつもりじゃが、それまでは大事に取っておけよ」

「階段近くで試せばいいんじゃないですか」

「なんで階段なのじゃ?」

「すいません。独り言です。気にしないでください」


 ついゲーム脳が出てしまった。


 18階まで降りる。

 いよいよモンスターが強くなってきたが、レベルマのぼくとガヴの敵ではない。

 ルーイさんが何レベルかは教えてもらってないけど、おそらく高レベルだろう。

 そんな人が、アリアハルで魔導書専門店を営んでいるのは、少しもったいないような気がした。


「ルーイさんのレベルって――」

「我か? 今は68といったところか」


 やっぱり高い。


「なんで魔導書専門店の店主なんかやってるんですか?」

「魔導書の店主を舐めるなよ。そもそも高レベルでなければ、魔導書自体が読めん。一定の実力がなければ店主は勤まらんのだ」


 なるほど。

 高位の魔導書を読むためには、知力が必要だからか。


「冒険者になろうとは思わなかったんですか?」

「昔、こう見えて冒険者だったぞ。すぐに飽きて辞めたがな」

「飽きてって――」

「というより、しんどい。我は店の中でゴロゴロしてる方が性に合う」

「ゴロゴロって……。ルーイさんもぼくのこといえないじゃないですか」

「お主は才能があるのにゴロゴロしてるではないか。我とは全く違う」

「レベル68も十分才能があると思いますけど」

「おだてても、我は店を閉める気はないぞ」


 頑なだなあ……。

 何かあったんだろうか。

 今度、クレリアさんに聞いてみよう。


 雑談しながら、19階までやってきた。


 フロアの様子が変わる。

 さっきまで如何にも洞窟という感じだったのが、急に人工的な雰囲気になった。

 お城の地下という感じだろうか。

 石畳みが敷き詰められ、全体がほのかに青白く光っていた。


「なんか様子が変わりましたね」

「うむ。トラップに気を付けよ。我の後についてくるんじゃ」

「がう゛」


 カチッ!


「カチッ?」


 びよよよよ~~~~んん!!


 その瞬間、ガヴの霊圧――ではなく、姿が消えた。

 目の前に現れたのは、バネ仕掛けの床だ。

 どこかへ飛んでいってしまったらしい。


「がう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛……ぅ゛……!!」


 ガヴの声が遠ざかっていく。

 上方向へ飛んだのに、何故か横方向へと移動してるみたいだ。


「ガヴ!!」

「トモアキ! 不用意に走り回るな!」


 ルーイさんが叫んだ時には、すでに駆け出していた。


 カチッ!


 またスイッチ音が鳴る。

 あ。やばい!


 ズッッゴオオオオオオンンンン!!


 轟音がダンジョンに鳴り響いた。

 震動と共に、爆煙が床を滑っていく。


「トモアキ!!」

「だ、大丈夫です……」


 けほけほ……。

 うーん。すごい爆発だった。

 身体中真っ黒だ。


 ぼくは炭を払う。

 咳をすると、煙を吐き出した。


「お主、無事なのか?」

「はい。まあ……。ちょっと身体がヒリヒリしますけど」


 レベルマ凄いなあ。

 あんな爆発でも耐えちゃうんだ。


 ん? あれ?

 ルーイさんの目が赤いように思えるのは気のせいだろうか。


「ルーイさん、目が赤いですけど、どうしたんですか?」


 慌ててルーイさんはごしごしと目を拭った。

 帽子のつばを掴み、ギュッと下ろして、赤くなった目元を隠そうとする。


「な、なんでもない! 煙が目に入っただけだ!」

「そうですか? なんか泣いてるように思えましたが」

「ううううるさい! それよりも、あれほど注意しろといったのに。不用意にもほどがあるぞ!」

「ごめんなさい。……えっと、それよりもガヴを見つけないと」

「わかっておる。行くぞ! ついてこい!」


 ルーイさんは勇ましく手をあげ、先導する。

 だが――。


 コテッ!


 いきなりこけた。

 顔からダイブする。

 痛ったそう~。


 爪先を見れば、いつの間にか大きな石があった。

 これに躓いたらしい。

 罠の一種だろうか。


「大丈夫ですか? ルーイさん」

「痛くない!」


 ガバッと顔を上げる。

 おでこに擦り傷が出来ていた。

 目には涙が滲んでいる。

 今度は絶対泣いてる。


「泣いてるんですか?」

「な、泣いてなんかないもん!」


 突然、幼児退行する20歳。

 こっそりと涙を拭った。


「行くぞ!」


 気を取り直して、ルーイさんは歩き出した。

 絶対泣いてるよね。




 しばらく歩くと、声が聞こえてきた。


「がう゛がう゛!」


 ガヴの声だ。

 今度は、走らない。

 というか、すぐルーイさんがぼくの腕を掴んだ。


「抑えよ。慎重に近づくぞ」


 ぼくは黙って頷く。


 ゆっくりとガブの声の方へと近づいていった。


 広いフロアに出る。

 そこにいたのは、ガヴと――。


「ぶおおおおおおおおおお!!」


 大きな巨人――いや、動く石像だ。

 高さ3メートルほどあるだろうか。

 灰色の肌に、逞しい腕と足。

 身体には一枚布が巻かれ、右乳首だけが露出していた。


 ガヴの情操教育には、少々過激すぎる格好だ。

 下からのぞき込むと、男のあれが見えるんじゃないか。

 いや……そうじゃなくて。

 どうやら、かなり手強い相手らしい。

 レベル50のガヴでも、苦戦しているようだった。

 早く助けないと。


「我が来た時にはいなかった。おそらくなんらかの罠が起動したな」

「考察は後にしてください。ガヴ!!」


 ぼくは叫ぶ。ガヴの頭の耳がくるくると動いた。

 ご主人を見つける。石像に背を向けて一目散にぼくを目指して走ってきた。

 ピョンと軽く飛び上がり、抱きつく。

 その目には涙が滲んでいた。


「がう゛~」


 怖かったんだね。

 スライムと戦う時は勇敢だけど、やっぱりガヴはまだ小さな子供なんだ。


 よしよし、と頭を撫でる。

 ついでに“モフニウム”も補充しておこう。

 モフモフ……。

 何度、撫でてもこの触り心地はたまらないなあ。


「お主、和んでいる場合ではないぞ!」


 ルーイさんが叱咤する。

 そうそう。今はバトルの真っ最中だった。

 まったく……。ぼくはスローライフを送りたいのに、戦ってばっかりだ。


 辟易しながら、ぼくはガヴを下ろす。

 地響きを鳴らして近づいてくる石像を睨んだ。


「下がってください! 魔法を使います」


 ルーイさんはガヴを連れて退避する。


 ぼくは手を掲げた。

 レベルマの状態も維持されている。

 特大の1発をお見舞いしてやる。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 呪名が高らかに響く。


 巨大な炎の渦が迫り来る石像に突き刺さった。

 視界が赤く染まる。

 フロア全体が、巨大な火の鍋の中に放り込まれたかのように一変する。


「がああああああああああ!!」


 動く石像は咆哮する。

 顔面を抑えながら、身悶えた。

 そのまま崩れ落ちるかと思ったが、寸前で持ちこたえる。

 1歩ずつ、ぼくの方に近づいてきた。


 さすがは動く石像。

 これだけでは足りないらしい。


 でも……悪あがきだね。


「ふ」


 たった一文字を唱える。

 瞬間、さらに火の弾(ファイヤボール)が放たれた。

 凄い熱量だ。

 レベルマ状態のぼくでも、肌がチリチリするのを感じる。

 背後ではルーイさんが、風の魔法で炎を防いでいた。


「ぐ……お…………お………………」


 次第に炎が消えていく中、動く石像の顔が下をむき始めた。

 それでもまだ倒れない。

 タフだなあ!


「ガヴ!」

「がう゛?」


 ぼくが叫ぶと、黄金色の耳がピンと立った。


「やり返せ!!」

「がう゛がう゛!」


 タタタッと走っていくと、勢いそのままにガヴは頭突きをくらわせた。

 石像の右胸を貫く。乳首が出ていた方だ。


 ガヴはそのまま空中で回転すると、格好良く着地を決めた。


「がう゛!」


 やったか、というように背後を確認する。


 すると、炭化した動く石像にヒビが入り始めた。

 自重に耐えきれなくなると、一気に崩壊が始まる。

 盛大な音を立てて、崩れ去った。


「がう゛!!」


 どうだ! と言わんばかりに、ガヴは両腕を掲げる。

 ぼくは当然、その頭を何度もモフモフするのだった。




 20階。

 そこにあったのは、1つのフロアだけだった。


 またガラリと様子が変わる。

 今度は、古代遺跡に迷い込んだかのようだ。


 フロアの真ん中には、台座が置かれている。

 そこには文字が刻まれ、さらに見たことがある機器が埃を被って置かれていた。


 赤と白のツートンカラー。

 中央には何かを入れるような口。2つのボタン。逆から見ると何か人の顔が見える。その耳となる部分には、眼鏡ケース程度の大きさの四角い物体が収まっていた。


「お主、わかるか?」


 ルーイさんが尋ねる。

 ぼくは口をムズムズさせながら、歓喜とも呆れともいえる奇妙な感情に取り憑かれていた。


 口を抑えながら、腹から昇ってきた笑気を必死に押さえつける。

 そして心の中で叫んだ。


 ふぁ、ファ○コン(初代)じゃん!!


ポイントが8000を越えました!

月間総合も54位。

異世界転移/転生(ファンタジー)では16位に付けることができました。

ブクマ・評価をいただいた方、本当にありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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