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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第3章 お屋敷の生活編

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第26話 女たちの戦い

今日は通常通りです。

 ぼくの屋敷でもっとも好きな場所。

 それはお風呂だ。


 パーヤのお父さんはお風呂好きだったそうで、貴族の屋敷として狭い中、お風呂場だけは結構広くとっている。

 小さな旅館のちょっとした露天風呂ぐらいの大きさがあって、いつもぼくはそこで汗を流していた。


 で、そこで今、ぼくは湯船に浸かってゆっくりしているかと言われれば、そうではない。


 実は、ぼくの背中を巡って、女同士の骨肉に争い――といえば大げさに聞こえるかもしれないけど――まあ、それぐらい火花を散らして、パーヤとクレリアさんが、言い争っていた。


「クレリアさん! わたしはトモアキ様のお世話係なのです。主人のお背中を流すのは、奴隷としての務め。あなたは下がっていてください」

「なによ、けちくさいわね。そういうなら、あたしだってトモアキの弟子なのよ。弟子として師匠の背中を流すのは当然の義務よ」

「あの~。2人とも。仲良くね」

「ご主人様は口を出さないで下さい!」

「トモアキは黙ってて! そうじゃないと、声を出さない魔法を使うわよ!」


 怒られてしまった。

 あの……。ぼくって君たちのご主人様とお師匠様なんだよね。


 面と向かって言いたいことは山ほどあるけど、なんとかは犬も食わないっていうしね。あれ? あれって夫婦だっけ? 恋人だっけ? まあ、いいや。


 それよりも問題なのは、ぼくが面と向かって2人と話せないことだ。

 何故なら、2人とも裸だった。


 ハイミルドでは混浴が基本らしく、ぼくが入っていても、平気で2人は入ってくる。そこはご主人とお師匠の顔を立ててほしいのだけど、何かにつけて一緒に入りたがるんだ。


 そんな訳で、パーヤこそ令嬢らしくバスタオルを巻いているのだけど、クレリアさんに関しては一糸纏わぬ姿だった。

 ちなみにガヴは既にぼくが洗髪をして、今はお風呂に肩まで浸かっている。

 最初はいやがっていたけど、最近ハマっているらしい。

 ちょっと爺臭いところが、クスッとくる。


「トモアキ様」

「トモアキ!」


 いきなり2人はぼくを名前で呼んだ。


「え? なに?」

「わたしの好きな身体の部位を教えてください」

「こっちを見て、トモアキ!」

「なんでそんな話になってるんだよ!?」

「いいから答える!」

「答えてください。トモアキ様」


 すると、ぼくが2人の方を向くように手を引っ張った。

 クルッと回転すると、視界に2人の女神が視界に入る。


 おお……。うぉおおおお……。


 目映い。

 神々しすぎる。


「さあ、どっち? トモアキ」

「トモアキ様」

「え、えっと……そうだな。はっきり言っていい?」

「「もちろん」」


 パーヤとクレリアさんは声を揃えた。

 実は仲がいいんじゃないかあ、この2人。


「パーヤはやっぱりその大きな胸だよね」

「きゃっ!」


 ぼくが指をさすと、パーヤは恥ずかしそうに胸を押さえた。

 いや、恥ずかしがることないじゃないか。

 言っていい、といったのは、パーヤだろ。


「とにかく形がいいよね。大きいけど、全然垂れてないし。張りがある感じが、触らなくても伝わってくるというか。本当に芸術品みたいに思う」

「あ、ありがとうございます」


 パーヤの顔は完熟したトマトみたいになっていた。

 いつも毅然としていて、凛々しい彼女も好きだけど、照れてるところは十代の女の子みたいで初々しく可愛いな。


「トモアキ! あたしは! あたしは!?」

「えっと。クレリアさんはやっぱり太股かな。細くもなく、かといって太くもなく。健康的で女性的。特にふくらはぎから太股のラインがぼくは好きだな。あと引き締まっていても、柔らかいのがいい」

「ふふん。わかってるじゃない」


 クレリアさんは鼻を高くする。

 見せつけるようにぼくに向かって太股を見せつけた。


「では、トモアキ様はどちらの方が好きなのですか?」

「当然、あたしの方だよな。太股……」

「それは――」


 うーん。

 どうしよう。甲乙付けがたいというか。

 ぼくにとって、どっちも大事というか。


 悩んでいると、ガヴがお風呂から出てきた。


「がう゛?」


 ぼくたちの間に入ると「なにやってるの?」という感じで首を傾げる。


 ぼくは思った。


「うん。でも、ガヴのこの抱きごちとモフモフの尻尾が最高かな」


 思わずヒシッ抱きしめる。

 モフモフと撫でた。


 2人は絶句し、やがて叫んだ。


「トモアキさまぁぁぁぁああああ!!」

「トモアキぃぃぃぃいいいいいい!!」


 声がお風呂場で反響する。

 再び大騒ぎになる中、ガヴは密かにVサインを送っていた。


やったぜ(がう゛)!」



 ★



 次の日。

 天罰なのか、女の呪いなのか、ぼくは風邪を引いてしまった。


「けほけほ」

「大丈夫ですか? トモアキ様」

「パーパ、げんきになって」

「湯冷めして風邪を引くなんてなあ。これもパーヤが意地を張るからだぞ」

「何を言っているんですか。あなたこそ!」


 パーヤとクレリアさんは睨み合う。

 今にも昨日の延長戦がはじまりそうな剣幕だ。


「2人とも仲良くしてよ、こほこほ」

「トモアキ様」

「トモアキ」

「2人はぼくにとって大事な人なだ。そんなのを比べられないよ。だから、変なことで争わないで」

「わかりました。申し訳ありません、トモアキ様」

「わるかったわ、トモアキ」

「うん。仲良くしてくれればそれでいいんだ」


 とその時、屋敷に来客があった。


 ギルドの使いの人がやってきて、ぼくにどうしても話があるのだという。

 ぼくは病床で、話を聞くことにした。


「実は、ジャイアントオークの弟がトモアキ様を出せと」

「ジャイアントオークの弟」


 弟なんていたんだ。


「さっきいきなり街にやってきたと思ったら、ギルドで保管していたジャイアントオークの剣をもっていってしまったんです」

「それで――」

「その剣を持ってきたのが、魔法使いだっていうと、今度はトモアキさんを出せって。……仇を討つっていって、今広場を占拠してるんです」

「ジャイアントオークをやったのは、勇者だろ?」


 とパーヤさん。


「はい。ただどうやら、生き残っていた部下がいたらしく。魔法使いが魔法を使って砦を吹き飛ばすところを見たと」


 あちゃー。

 見られてか。

 ぼくはベッドの上で頭を抱えた。


「トモアキ……。その反応はやっぱり――」

「うん。実は、ぼくがやったんだ。ガヴを買うためにね」

「がう゛……」


 何も知らないガヴは尻尾をヒラヒラと振った。


「まあ、それはいいとしてどうする? ジャイアントオークの弟っていえば、魔王の幹部の1人のはずだよ」

「弟も幹部なんだ」


 どんだけ幹部がいるんだろ。

 魔族って。


 でも弱ったなあ。

 こんな状態だし。

 戦えないことはないけど、正直億劫なんだよね。

 街の広場まで行くの。

 誰かなんとかしてくれないかな。

 ぼくに頼りすぎなんだよ、この街。


「仕方ない。あたしが倒してやるよ」


 そう言って、クレリアさんは虚空から杖を取りだし、両肩に載せた。


「でも、危険なんじゃ」

「誰に言ってるの、トモアキ。あたしは“爆撃の魔女(エクスブローラー)”。レベル90の魔法使いなんだよ」

「わたしも行きます」


 手を挙げたのは、パーヤだった。


「足でまといだ。あんたはここで主人とあたしの帰りを待ってるのね」

「いいえ。主人が務めが果たせない状態であるなら、その代理となるのも奴隷としての務めですわ」

「がう゛、いく!」

「ガブまで……」


 ガヴも両腕を挙げて、アピールする。


「わかった。ぼくも行くよ」

「トモアキ!」

「トモアキ様は、ここにいてください」

「心配しないで。戦わないよ。ただ主人として、3人の戦いを見届ける義務ぐらいはあると思うんだ」

「それは――」

「まあ、いいじゃないの。お師匠様の前でいいところを見せる絶好のチャンスだしね」


 クレリアさんはウィンクする。

 とてもチャーミングだった。


 話はまとまった。

 ぼくはギルドの人に言う。


「案内してください。魔物がいる場所へ」


 こうしてぼくの女たちの戦いは始まったのだ。


昨日はたくさんの感想ありがとうございます。

みんな、反応しすぎw


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