第20話 魔法使いを舐めたら、病気が治りました。
今日はちょっと早めに投稿してみました。
ある時、パーヤが病気になった。
凄い熱があって、激しく咳き込んでいた。
本人曰く、喉も痛く、頭も朦朧とするらしい。
ベッドに横になり、はあはあと荒く息をするパーヤを見ながら、ぼくは何も出来ない。
レベルマ状態になっても、病人を助けることは出来ないのだ。
「ばーば、げんき!」
元気になって、という意味だろう。
ガヴも心配そうにベッド脇でパーヤを見つめている。
当人は、力無く笑うと、また激しく咳をした。
「トモアキ様、申し訳ありません。家のことをほったらかしにしてしまって」
「そんなことを気にする必要ないよ。今、お医者さんを呼んだからね」
「何から何まで……。ありがとうございます」
ぼくは『キリン』の女将ルバイさんのつてを使って、お医者さんを呼んでもらった。この世界のお医者さんはとても医療費が高いらしいのだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「おそらくインフルエンザですな」
「インフルエンザ!!」
まさかハイミルドに来て、その名前を聞くことになるとは思わなかった。
「昔、異世界から来た医者がそう呼んでおりました。おそらく異世界特有の病気なのでしょう」
「し、知ってます。とても高熱が出る病気です」
「そういえば、魔法使い殿は異世界出身でしたな」
「ぼくのことを……」
「お噂はかねがね」
お医者さんは帽子を脱ぎ、軽くお辞儀した。
「薬はあるのですか? タミフルとか」
「残念ですが、有効な治療薬はこの世界にはありません」
「そんな――」
「本人の体力次第ですな。一応、気休め程度ですが、気道を拡張させる魔法薬を置いておきます。これで少し症状がマシになるでしょう。あと大量の汗を掻くと思うので、定期的に身体を拭いてあげてください」
「わかりました」
「それでは私はこれで――。今、インフルエンザが流行っておりましてな」
お医者さんは屋敷を出ていった。
「重ね重ね申し訳ありません。ごほ! ごほ!」
「気にする必要ないよ。今度、ぼくが病気にかかったら、パーヤが看病してよ」
「はい。……その時は全力で」
目を細める。
その笑みがとても儚げで、ぼくは泣きそうになった。
ぼくは早速、魔法薬を彼女に飲ませる。
お医者さんのいうとおり、少しマシになったけど、まだまだしんどそうだ。
病気を治せる魔法があればな。
今からでも遅くない。
開発しようか。
と席を立とうとした瞬間、パーヤはぼくの腕を掴んだ。
「パーヤ……」
「ご主人様。どうかお願いがあります」
「ここにいてほしい?」
そうだ。
今、彼女が頼れるのはぼくしかいない。
パーヤを1人にするわけにはいかないのだ。
だが、元貴族令嬢は首を振った。
じゃあ、何だろう?
汗を拭いてほしいのかな。
「わかった。何でも言って」
「お願いは1つだけ」
「うんうん」
「実は――」
ご主人様を舐めさせてほしいのです……。
…………。
は?
「えっと……。ごめん。よく聞こえなかった。もう1回言ってくれないかな……」
「ご主人様を舐めさせてほしいのです」
「それは……。相手を下に見る的な感じの――」
そりゃあ、ぼくはそういう意味で舐められやすいタイプだけどね。
一度、小学生に恐喝されて、1000円取られたことあるから。
パーヤは首を振った。
「滅相もありません。言葉通りの意味です。頬でもどこでもいいのですが、舐めさせてほしいのです。いつもガヴさんがやってるように」
「ガヴがやっているように?」
「がう゛?」
ぼくとガヴは揃って首を傾げた。
「わたし、ちょっと考えたのですけど、流行病ならとっくにガヴさんも罹患していてもおかしくないはずです」
ぼくはガヴを見る。
元気そのものだ。
今すぐにでも野山を駆け回ることが出来るほどに。
「ガヴが獣人だから――とか?」
「先ほどお医者さんも言ってましたが、この病気はご主人様の世界のものです。ガヴさんが病気に対抗する力を持っているとは考えにくいです」
なるほど。一理あるなあ。
「そこで考えたんです。わたしとガヴさんがどう違うのか」
「それが……。ガヴがいつもぼくを舐めてるからってこと」
「そうです!」
力強く答えると、パーヤは弓なりになって激しく咳き込んだ。
ぼくは背中をさする。
「おそらく、トモアキ様のお肌には何か特殊な作用があるのではないかと」
うーん。
パーヤには悪いけど、ちょっと発想が飛躍しすぎてる気がするな。
病気にかかって、正常な判断が出来ていないのかも。
「どうかお願いします。トモアキ様を舐めさせてください!」
目をうるうるさせながら、パーヤは頼み込む。
ぼくの心中とは裏腹に、彼女は必死で真剣だ。
本当にそれが解決策だと思っている。
仕方がない。
パーヤはぼくの奴隷だけど、たまにはぼくが言うことを聞いてあげないとね。
彼女にはいつもお世話になっているし。
「わかったよ」
「ありがとうございます」
その時のパーヤの顔は本当に嬉しそうだった。
ぼくは手を彼女の口元に近づけた。
手を見て、元貴族令嬢は不服そうに主人を睨む。
「あの……。出来れば、お顔がいいのですか」
「い゛! でも、それは――」
さすがに恥ずかしい!
それってもはやキスじゃないか。
「いつもガヴさんがやってることでしょ」
「う……。確かにそうなんだけど」
じー。
パーヤはジト目でぼくを睨んでくる。
なんだかノリがいつもに戻って、元気になっているような気がするのはぼくだけだろうか。
「わかったよ」
ぼくは観念して、顔を近づけた。
パーヤが一瞬「ふふっ」って笑ったような気がした。
本当は仮病とかじゃないよね。
「では失礼して」
「う、うん……」
ぺろり……。
「ひゃうん!」
思わず変な声を出してしまった。
ぼくが――。
「逃げないで下さい、トモアキ様」
「も、もういいかな」
「ダメです! もっと舐めないと病気が治りませんよ」
いや、まだ病気が治るとは決まってないし。
うう……。
仕方がない。
もう1回。
ぼくは顔を近づけた。
パーヤは待ってましたという風に、ちろりと舌を出す。
やがてぼくの頬を舐め始めた。
くちゅ、という淫猥な音が部屋に響く。
「んっ…………ちゅ…………くちゅ…………ふっん」
ぼくの頬を舐めるとともに、何か艶めかしい声が聞こえてくる。
ヤバい……。
なんか気持ちよくなってきたぞ。
ガヴの時とはまるで違う。
てか――。
り、理性が飛びそうなんですけど……。
「ぱ、パーヤ……。もう――」
声を震わせて制止を呼びかけるものの、パーヤは止めない。
頬を舐めてるだけ。
そう。
パーヤは頬を舐めてるだけ。
別に唇とか、ぼくの乳首とか、むす○とかじゃなくて……。
頬を舐めてるだけだから。
必死に念じなければ、一気に理性のたがが外れそうになる。
理性と本能で揺れるぼくの元に、さらに事件は起こった。
横で見ていたガヴが、ぼくの背中にのしかかったのだ。
「ちょっと! ガヴ!」
「がう゛がう゛」
すると、ぼくの首筋を舐め始めた。
ぼくとパーヤの行為に触発されたのか。
くちゅ、という淫靡な響きがダブルで耳元にこだます。
「ちゅる…………。ちゅ……。ちゅぱ…………」
「んぁ……ふっ…………くちゅ…………ちゅぱっ……んっ……んっ」
2人は夢中になってぼくを舐めた。
「やめ! ちょ! そんな2人でそんなことをしたら……。ぼくの――ぼくの――理性が――」
ちーん……。
ホワイトアウトした。
ぼくは頭から煙を吐き出し、ベッドにもたれかかるように倒れる。
「トモアキ様!」
「パパ!」
完全にオーバーフロー。
かくしてぼくは、その日2人の乙女によって撃墜されたのであった。
次の日。
「トモアキ様! ご心配をおかけしました。この通り! パーヤは元気になりましたわ」
両腕を掲げて、コロンビアポーズを取る。
無理しているところは何もない。
熱も下がっているし、咳も出ていなかった。
嘘だろ……。
本当にぼくを舐めて、パーヤは全快していた。
「愛の力ですね」
と言った彼女は、いつもの明るい笑顔を取り戻していた。
日間総合10位!
ちょっと後退しましたけど、まだまだ更新頑張ります!!




