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第100話 魔法使いVS魔王勇者!?

宿命の対決です!

 ぼくたちは魔王城の上へ上へと目指した。


 魔王の間って、隠し階段が定番だけど、この城にはないらしい。

 ルーコに尋ねたら、「魔王がそんなこそこそしてどうする? 堂々としてこそ、魔王なのじゃ」という力強い回答を得た。


 うん。確かにごもっともだ。


「もうすぐ最上階じゃ。覚悟はいいな、トモアキ」


 先導するルーコは走りながら、ぼくの方を向く。

 つと足を止めた。


 どうしたんだろう。ケガでもしたのだろうか。


「トモアキ、お主なんで笑っておるのだ?」


「笑ってる?」


 ぼくは剣を抜き、刀身に自分の顔を映した。

 自分でもいうのもなんだけど、普段からしまりのない顔が、いつにも増して緩んでいる。

 これでは笑っていると思われても仕方ないね。


「たぶん、ぼくは楽しいんだと思う」


「ここは敵陣のど真ん中なんじゃぞ。もっと緊張感のある顔をせい!」


「ご、ごめん。でもね。なんか、こうさ。異世界にきて、ようやく――」



 冒険してるなって、思ったんだ。



「冒険……?」


 異世界に来て、初めは散々な目にあった。

 それでも優しい人たちに囲まれて、少しずつ受け入れられていった。

 温かい家族も出来て、思っていた異世界の生活とは違ったけど、結果的に穏やかな生活を送ることができた。


 でも、1つだけやり残していることがある。


 きっと、こういうことなんだろう。


 異世界に来てからは、ずっと静かに暮らしたかった。

 けど、いざその生活が手に入ると、慌ただしい過去が懐かしく思えてしまう。


 あーあ。なんてことだ。


 ぼくが望んでいたことは、きっと異世界を冒険することだったのかもしれない。


「なるほどな。お主は本当は、同僚が勇者になって羨ましかったのであろう」


「そうかな? ……うん。でも、そうかもしれない。同僚が横で勇者になるのを、ぼくは確かに羨ましかったんだ」


「お主が勇者であったなら、妾は喜んで倒れていたかもしれないな」


「え? 今、なんていったの?」


「なんでもない。さっ! 行こうではないか。勇者(ヽヽ)トモアキ殿」


 ルーコは手を差し出す。


 ぼくは思わず笑ってしまった。


 魔王の間を目指す勇者の手を引くのが、魔王なのだ。


 こんな面白いことは、ぼくが知るゲームにはなかった。



 良かった、異世界に来て……。



 ぼくたちは魔王の間に辿り着く。


 大きな門が最後の関門だ。


「この先に勇者――いや、魔王がおるはずじゃ。派手にかましてやれ!」


「いいの? ふっとんじゃうよ?」


「かまわん。1つヤツをビビらせてやってくれ!」


 ルーコは「やっちゃえ!」と拳を突き出す。


 そこまでいうなら。

 遠慮はいらないね。


 ぼくは呪文を唱えた。


「ゆう○い――」


 ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。


 レベルマからの……。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 極大の炎が、頑丈な扉に突き刺さる。

 最初こそのその圧力に耐えていた扉も、その熱に抗うことは出来なかった。


 ずぅぅぅぅぅうどおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおんんんん!


 激しい轟音とともに、扉が吹き飛んだ。

 まだ煙が残る中を突っ切り、ぼくとルーコは魔王の間に突撃した。


 玉座に座っていたのは、趣味の悪い紫の鎧を纏った同僚だった。

 肘掛けに肘を突き、優雅なポーズで出迎える。

 その側には女性がいた。

 攫ってきたのか。人間やエルフ。しかも美女ばかりだ。


「騒がしい……。何事だ? ん? なんだ、チビ魔王ではないか」


「チビいうな! この裏切り者め!」


「裏切り者はそっちだろう。まさか人間に力を借りるとはな。俺の魔王城をめちゃくちゃにしおって」


「妾の魔王城じゃ! 返してもらうぞ、裏切り勇者!」


「ふん! 俺に魔王の力を与え、半減した今のお前に俺を倒せるかな」


 ふん、と同僚は覇気を吐く。

 すると、黒い霧のようなものが立ちのぼった。

 それは大きな影となり、同僚を包む。

 1匹の化け物が今、目の前にいた。


 風圧だけでルーコは吹き飛ばされる。

 ぼくはその彼女を受け止めた。


「ルーコはここにいて。あいつの相手はぼくがするよ」


「大丈夫なのか、トモアキ」


「ああ。心配しないで。……こう見えて、強いからね、ぼくは」


 空気を刻み、襲いかかってくる黒い風に物ともせず、前へと進んだ。


 同僚と対峙する。


「久しぶりだね」


「うん? どこかで会ったか?」


 薄情者め。

 まあ、前からこんなヤツだとは知っていたけど。

 むしろやりやすい。

 あっちが知らなければ、遠慮なく叩きのめせる。


「人間風情が何が出来る。俺は勇者にして、魔王! この世界で最強の存在なのだ!!」


 悪役の親玉みたいなことをいう。

 現に魔王だけどね。


 ぼくはおもむろに拳を突き出した。


「そうか。じゃあ、比べよう」


「比べるまでもない」


「そうか」


 ぼくは鑑定魔法を唱える。


「とうきょ〇と たいと〇く こまが〇ばんだ〇の がんぐだいさんぶのほし」



 なまえ   どうりょう

 じょぶ   まおうゆうしゃ

 れべる   999

 ちから   999

 たいりょく 999

 すばやさ  999

 ちりょく  999

 まりょく  999

 きようさ  999

 うん    999


 数値は全てカンストしている。

 問題ない……。


 こんな数値。

 ゲームを盛り上げる要因でしかない。


「行くよ!」


 タンッと地を蹴った。


 そこで魔王勇者は呆気に取られた。

 きょろきょろと辺りを見渡す。


「え? どこ?」


「うん。ここだよ」


 くるりと横を向く。

 瞬間、ぼくは右ストレートをぶち当てた。

 綺麗に同僚の頬に突き刺さる。

 骨が歪む音が、ぼくの腕を通して伝わった。


 キィィイィイイイインンン!


 ジョット機みたいな音を上げて、同僚は吹っ飛んでいく。

 ぼくはそれに追いつくと、両手を組んだ。


 ハンマーみたいに振り下ろす。


 がつぅん!!


 重い音が響き渡る。

 腰骨が割れたような音がした。

 そのまま床に叩きつけられる

 すると、魔王勇者は最下層のフロアまで落下していった。


 大きな爆煙が、最上階の魔王の間まで昇ってくる。


 ぼくの攻撃は終わらない。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 極大の炎を振り落とした!!


 爆心地のような場所にのびていた魔王勇者に突き刺さる。


「ぎゃ――。いぎゃああああああああああああああああ!!」


 爆炎は魔王勇者とその悲鳴を飲み込むのだった。


 真っ黒けになった魔王勇者を見下ろした後、横にいたルーコに尋ねる。


「ちょっとやりすぎたかな?」


「いーや。まだ足りないぐらいじゃ!」


 ルーコはゆっくりと首を振り、親指を立てるのだった。


『アラフォー冒険者、伝説となる』のスペシャルサンクスキャンペーン、本日正午をもって締め切らせていただきました。

予想以上に、たくさんのご応募いただきありがとうございます!

みなさんと一緒に、本に載るのを楽しみにしています(*´▽`*)

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『ゼロスキルの料理番』
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