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第99話 魔法使いの魔王城襲撃

今話を含めて、残り5話です!

「おおおお! 本当に竜のように飛んでいる!!」


 悲鳴を上げたのは、リナリィさんだった。


 レベル50以上の冒険者で構成されるパーティー【青い箱船騎士ブルー・アーク・ナイト】の副長さんだ。


 今回、勇者がいる魔王城に行くことに先立って、手伝ってもらうことにした。

 他にもライドーラ王国の現国王様から手練れの兵士を付けてもらっている。

 本人も行きたがっていたけど、立場上さすがにね……。


 いつも凛々しいリナリィさんも、宇宙船に戸惑っていた。

 よもや自分が空を飛ぶとは思っていなかったようだ。


「今回はご協力ありがとうございます、リナリィさん」


「なんの! おやすいご用です。私としては、もっと早くこうしたかったのですが」


「なんのことですか?」


「あなたと魔王討伐が出来るってことですよ」


「魔王じゃなくて、勇者ですけどね」


「結果は同じです。現勇者は最低な人間でした。魔王以上に厄介な人間でしたから。自業自得です」


 リナリィさんがそこまでいうほど、ぼくの同僚はやりたい放題だったらしい。


 盗みや無銭飲食は当たり前、装備までタダにしろと恐喝したらしい。

 中には殺人、あるいは強姦なんてものもあったそうだ。


 彼女の言うとおり、最初からこうすれば良かったんだと、今さら思った。


「それに……。嬉しかったです」


「何がですか?」


「私を覚えててくれて……」


「へ?」


 リナリィさんの顔が真っ赤になる。

 すると、ピューとどこかにいってしまった。

 その後、何故かリナリィさんの赤髪の部下に睨まれる。


 一体、何なんだ?


「トモアキ、お主も罪作りな男じゃの?」


 ひょこひょこやってきたのは、ルーコこと魔王ルーナシグだ。

 屈強な戦士や魔法使い、あるいは賢者がひしめく中で、彼女の存在はガヴの次ぐらいに目立っていた。


「君にわかるの? 魔族なのに?」


「女の気持ちは、人族も魔族も関係ないわ」


「ゲームを楽しむのもね」


「その通り!」


「だったら、もっと早く人間と魔族って分かり合えたんじゃないかな」


「それは出来ぬな。魔族の仕事は人間を虐げることじゃ」


 そうか。

 魔族も、人間を虐げたくて、襲っていたわけじゃない。

 世界の大神が決定したジョブによって、役目が決められていたんだ。


 ますますハイミルドの神さまってヤツが胡散臭く思えてきた。


 そういう意味では、ぼくの同僚も被害者かもしれないけど、その地位を利用して罪を犯したのは許せるものではない。


「見えてきたぞ!」


 誰かがいうのが聞こえた。

 宇宙船の窓に人が殺到する。

 大きなお城が見えた。

 本当に大きい。まさにパンデモニウムだ。


「中は迷宮になってるのかな?」


「迷宮? 何故、そんなものにする必要がある。そんなことをしたら、妾が迷子になるではないか」


 ルーコ、それ胸を張って言うことじゃないから。


「ご主人様、いかがしましょうか?」


「城の後ろに回れ。広い庭がある。そこに乗り付けるのじゃ」


 ルーコが、ぼくの代わりに指示を出す。


 その意見にリナリィさんが反応する。


「城に直接付けるのは危険では?」


「大丈夫だよ、リナリィさん。ガヴ、頼んだよ」


「がぁぁぁぁう゛ぅぅぅぅぅ!!」


 任せろ、というような雄叫びが銃座の方から聞こえてくる。


 すでに城の周りの城壁や窓には、魔族が集まり始めていた。

 遠くからはドラゴンたちが飛来し、この宇宙船を包囲せんとしている。


「囲まれてるぞ、トモアキ殿」


「心配しないで。よし、ガヴ! とりあえず撃ちまくれ」


「がぁぁぁぁぁぁああああう゛ぅぅぅぅぅううううう!!!!」


 激しい銃声が轟く。

 白い閃光が巨大なドラゴンにぶち当たると、消滅させてしまった。

 ガヴはさらに機銃を撃ちまくる。

 ドラゴンを粗方打ち落とすと、銃口を城の方へと向けた。


 どぉん、という爆発音が響く。


 閃光が着弾すると同時に、魔族たちが吹き飛んでいった。


「すごい……」


 称賛しつつも、リナリィさんの顔は青ざめていた。

 知らない人から見たら、脅威だよね。


「よし! パーヤ、いまだ! 中庭に乗り付けて!」


「わかりました」


 パーヤも操作に慣れたらしい。

 半包囲しつつあったドラゴンの群をあっという間に抜ける。

 制動をうまく殺しながら、見事なタッチダウンを見せた。

 後部のハッチを開ける。


「みなさん、行きましょう!」


「よし! お前たち、行くぞ!」


 リナリィさんを先頭にぼくたち人類軍は、魔王城に雪崩れ込む。

 ぼくも後に続いた。


「パーヤ、外の敵はお願いできるかい?」


「はい。大丈夫よね、ガヴちゃん」


「がう゛がう゛。パーパ、気を付ける」


「ああ。さっさと勇者を倒して、帰ってくるよ」


 2人に別れを告げる。

 外に出ると、宇宙船は飛び上がった。

 ドラゴンの残党を駆逐していく。

 この調子なら、2人に任せて大丈夫だろう。


 リナリィさんたち以下、人類軍はすでに魔王城外壁に張り付いていた。


「入口はどこにあるのですか、ルーコ殿」


「妾の名前はルーナシグじゃ。気安く呼ぶでない。入口は反対側じゃ。回り込むしか……」


「めんどくさいわね。吹き飛ばせばいいんでしょ」


 物騒なことをいったのは、クレリアさんだった。


 誰もまだ何もいっていないのに、呪文を唱え始める。



 精霊の一鍵イフリルよ。

 我が御命に応えよ。

 そなたの身体は朱にあり。

 そなたの真命は舞いにあり。

 其は創造の一天にして、破壊を司るもの。

 声を聞け、北の塔より踊り出よ。

 紅蓮を飼い慣らすものよ!


 “死と炎(デス)()破壊を司るものよ(グロージョン)!”



 極大の炎が彼女の頭上に浮かんだ。

 “爆撃の魔女(エクスブローラー)”の異名を、クレリアさんは今こそ示す。


「いけぇぇえええええええ!!」


 紅蓮の業火を飛ばす。

 魔王城に突き刺さると、壁が大きく弾けた。

 もうもうとした煙が、城内はもちろん辺り一帯に立ちこめる。


 ルーコはごほごほと咳き込みながら、クレームを入れた。


「妾の城を壊す気か、魔女め!」


「別にこれぐらいの被害はいいでしょ? それとも、城をぺちゃんこにしてあげましょうか?」


「ご、ごめんなさい。でも、これ以上は壊されては困るのじゃ」


 クレリアさんの脅しに、ルーコはすっかり縮こまる。

 あの人、1度戦闘モードになると、滅茶苦茶怖いからな。


 空いた大穴から、ぼくたちは城内に進む。


 モンスターや魔族がダース単位で襲いかかってきた。


「ここは私が――」


 リナリィさんが先陣を切る。

 剣から鞘を抜き放つと、光のように突撃していった。


「てりゃああああああ!!」


 裂帛の気合いが城内に響く。

 気が付いた時には、彼女はモンスターの群を通り過ぎていた。

 静かに剣を鞘に納める。


 チンッ。


 乾いた音が響くと、モンスターや魔族が次々と倒れていった。


 おお! なんかかっけぇ!


「ど、どうだ、トモアキ殿。私の剣の腕は?」


「凄いです。前よりも強くなっていますね」


「あ、うん……。修練を積んだからな。…………やったぁ。トモアキ殿に褒めてもらえたぞ」


「何かいいましたか? 遠くにいて、声が――」


「いいいいいいや、なんでもないんだ」


 といいながら、顔が真っ赤だ。

 風邪でも引いているのかな。


 しかし、モンスターたちはまだまだ城の奥から現れる。

 ぼくも参加して倒すけど、これじゃあきりがない。


「トモアキ! ルーコを連れて、先へいって」


「え? でも……。クレリアさん」


「大丈夫。これぐらいなら、リナリィとなんとかなるから。トモアキは勇者を倒して」


 ここは2人を信じるしかない。


 ぼくは覚悟を決めた。

 ともかく血路を開く。


 呪文を唱えた。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 初期魔法とは思えない巨大な炎玉が、魔族たちを飲み込んでいく。

 その空いた道に、ぼくとルーコは滑り込んだ。

 階上へと上がる階段に辿り着く。


「無理しないでね、クレリアさん。リナリィさん」


「わかってる。トモアキも頑張って」


「ご武運を、トモアキ殿」


 2人は手を振って答えた。


 すると、戦場を見つめる。


「これなら、すぐに合流できそうね」


「相変わらず、すごい力です」


 クレリアさんとリナリィさんは、同時に肩を竦める。


 ぼくの火の弾(ファイヤボール)で大半の魔族が消し飛んでいた。


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