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異世界最強魔法が、“復活の呪文”なんだが!? ~ぺぺぺ……で終わる?異世界スローライフ~  作者: 延野正行
第10章 そして、魔法使いは……

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第97話 魔法使いも男である

そりゃあ、主人公も男の子ですから。

 ぼくはすりつぶした神豆をペースト状にしたものを、女の子の口に少しずつ流し入れる。


 小さな喉がこくこくと動いた。

 どうやら、まだ食べられる体力はあるようだ。

 すると、どんどん顔色が良くなっていく。

 すべて流し込むと、カッと目を開いた。


「目を覚ましましたわ、ご主人様」

「さすがトモアキの神豆だな」

「がう゛。起きた? 大丈夫?」


 女の子たちは口々に声をかける。


 寝具に寝ころぶ赤子のように驚く少女は、一通りぼくたちを見渡した。

 金色の瞳がとても綺麗だ。

 そのせいだろうか。とても超然とした雰囲気がある。

 やはり、どこかの貴族の令嬢――もしくは、お姫様かもしれない。


 そういえば、異世界に来てからお姫様に会ったことってあったっけ?

 ま――いいか。


 ところで、この子とどっかで会ったような気がする。

 少なくとも初見という感じはしないんだよね。


 すると、ようやく少女の薄紫色の唇が動いた。


「お主たち、何故裸なのじゃ?」


 純粋な眼で尋ねられた。


 そう。ぼくは裸だ。

 正確にはズボンは履いてるから半裸なんだけど、他の3人に至っては、完全に裸だった。


「それにお主のそのマークはなんだ? 唇のような形をしているが」


 目覚めたばかりなのに、この子鋭いなあ。


 でも、言えない。

 これがキスマークとか全然いえない。


 なんていうかな、その……。

 人間は時間が余ってくると、色々なところが緩むというか。


 夜の営み的な時間を設けることができるというか。


 ぼくもぼくで、そのにゃんにゃんする時間があるわけですよ、ははっ……。


 何かぼくの禍々しい●●のオーラを見たのか。

 途端、少女は自分の身体を隠す。

 すると、気付いた。

 自分もまた、下着を着たままの半裸だということを。


「な――。き、きき貴様! わ、妾に何をしようとしていた!」


「いや、別に……。君には介抱していただけで」


君には(ヽヽヽ)じゃと! では、後ろのおなごどものとは、一体何をしていたのじゃ!」


「いや、それは……その…………ぷ、プロレス?」


「プロレスじゃと! あれか、夫婦同士が夜な夜な繰り広げる夜中のプロレスというヤツか!」


「なんで、そんなことを知ってるんだよ、君は!!」


 思わず突っ込んでしまった。

 いけね。すごい警戒を始めた。

 目には涙が浮かんでいる


「うう……。妾も落ちたものよ。まさか娼館に売られるとは」


「違う。ここはぼくの屋敷だよ」


「そうか……。そして妾を暗い部屋に閉じこめて、毎夜毎夜お●ゃくというヤツを」


 金色の目が完全に死んでいた。

 あんなにも綺麗だったのに。


 誰だよ!?

 こんな少女に「おし●く」なんて言葉を教えたのは!

 あと伏せ字、もうちょっと仕事をしてよ。


 ぼくは懸命に自分の信頼の回復に努めた。

 雨に濡れたところを、ガヴに拾われて、ここにやってきたことを説明する。


「本当に貴様、ぜげん(ヽヽヽ)というヤツではないのだな」


「ち、違うよ。生き倒れていた君を介抱しただけさ」


「パーパ、ぜげん(ヽヽヽ)ってなに?」


 ガヴが尋ねる。

 お願いだから、こういう時に限って、言葉を積極的に学ぼうとしないで。


「ま、まあ、よい。助けられたのは事実だしな。大義であった」


 どこかのお殿様のようだ。

 でも、かわいい。

 ダメだ。ぼく、意外とのじゃ姫系に弱いのかもしれない。


「ところで、君……。どこかで会ったよね」


「うん? なんだ、お前。覚えておらんのか? 妾は覚えておるぞ。1度、辛酸をなめさせられた相手じゃからのう」


「辛酸? 相手?」


 あ……。


「もしかして、オセロ大会の」


「そうじゃ。あの時は負けたが、あれは腹が減っていて調子が出なかったからじゃ。良い機会じゃ。相手をせぇ」


「オセロの?」


「むろん!」


 とうとうベッドの上で、腕を組み、ガイナ立ちを披露する。

 謎の風が吹き荒れ、少女の紫の髪が乱れた。

 下着姿のままでだ。


 まあ、元気になったのは、何よりだ。

 どういう経緯があって今に至るのかはわからないけど、きっとろくでもない事に違いない。


「ねぇ。君、名前は?」


「ふふふ……。教えてしんぜよう。驚くな! 妾の名前はルー――――」


 いきなり急ブレーキがかかった。

 「う」という唇の形のまま固まっている。

 る、る、る、と壊れたレコードみたいに連呼した。

 何故か、パタパタと腕を動かし、口の形も相まって、アヒルのようだ。


「る、る、る、るぅ……。ルーコ! そうじゃ! ルーコじゃ。妾の名前はルーコ。なかなか良い名前であろう」


 今までの醜態を隠すように、真っ平らな胸を反らす。

 異論は許さぬ。

 なんかそんな雰囲気だった。


 こうしてぼくたちとルーコの奇妙な共同生活が始まった。



 ◇◇◇◇◇



 とりあえず、ぼくは彼女の身元を探してもらうことにした。

 王様から憲兵に頼んで、探し人の申請がないか確認してもらい、ロダイルさんや、マティスさんにも表と裏の世界両方から探ってもらっている。

 けれど、ルーコに繋がる手がかりはなかった。


「ダメだね。あんたんところの娘の情報は何も出てこなかったよ」


 息を吐いたのは、安宿『キリン』の女将ルバイさんだ。

 アリアハルで知らない人がいないくらい人脈に長けた彼女でも、何の手がかりも掴めなかったらしい。


「やはり、どこかのお姫様なのでしょうか?」


「でも、パーヤ。何の手がかりもないのはおかしいよ」


「やっぱあれじゃない? ライドーラ王国の元国王の遺児とか」


 クレリアさんはいうのだけど、王様に確認したところ、元国王の親族にはそんな子供がいないという。

 隠し子という可能性があるけど、それにしたって、かなりの教養の持ち主だ。

 歴史もきちんと学んでいて、特にかつての人類軍と魔王軍の戦いは、まるで見てきたかのように語る。


 そんな才女が、国のなんの資料にも載っていないのはおかしい。

 それが王様の見解だった。


 謎は謎のまま、ルーコはぼくたちとの共同生活に馴染んでいった。


 とはいえ、不遜な態度は変わらずだ。

 いつの間にか、パーヤを自分の家臣のように扱うし、主のぼくにも何の気兼ねもしない。

 一方、オセロのことになると、子供のように瞳を輝かせる。

 負けては悔しがり、勝っては喜び。

 純粋に楽しんでいるようだった。


「ルーコはオセロが好き?」


「うむ。大好きじゃぞ。特に血が流れずに、勝負の白黒がつくところがよい」


 時々、含蓄があるというか。ぼくですら、はっとするようなことをいう。


「オセロだけにな」


 ただし、ギャグはいまいちだ。


 ある日、ぼくはガヴを連れ立って、例のスライム狩りに行くことにした。

 最近、随分と鈍っている。

 たまには身体を動かさないと。

 どうも最近お腹に皮下脂肪がついたような気がする。


 幸せ太りというヤツかな。


「妾も行くぞ!」


 突然、ルーコが参加表明してきた。

 あまり外に出たがらない彼女が珍しい。

 すると、敵意をむき出しにしたのは、ガヴだ。


 どうもこの2人。

 そりが合わないらしい。


 オセロでも、家での些細なことでもよく喧嘩している。

 お互い嫌ってるというわけではなく、少なくともガヴはライバルだと思ってようだ。


 ガヴに理由を尋ねたら、こういった。


「キャラががヴってる(ヽヽヽヽヽ)……」


 ……。

 どうしてそういう言葉だけは覚えるのかな、この子は。

 ぼくの教育が悪かったのか、とちょっと考えてしまう。


「うーん。久しぶりの外は気持ちが良いのぅ」


 外は晴天だ。

 長らく雨が続いていて、草葉には露が残っていた。

 それが陽光を受けて、キラキラと輝いている。

 サッと風が流れると、濃い土の匂いが鼻腔を突いた。


 確かに、いい天気だ。

 ルーコのいうとおり、晴れ晴れとするなあ。


 すると、早速スライムが現れた。


 毎回毎回ガヴにやられているにも関わらず、スライムは突撃してくる。

 いつもならだ。


 だが、今日は違う。


「ぴぃぃぃぃぃやぁああああああ!!」


 変な奇声を上げると、一目散に逃げてしまった。

 その後を、ガヴは慌てて追いかける。


「ガヴ! あまり遠くへいっちゃダメだよ」


 すでにレベル50にする魔法はかけているから心配はないとは思うが、一応忠告はしておく。


 それにしても、スライムのあの反応はなんなんだ。


 まるで、何かを恐れているような感じだったけど。

 ぼくはちらりとルーコを見た。


 その時、大きな影が頭上を過ぎていく。

 反射的に空を仰いだ。

 鳥かと思ったら違う。


 大きな翼を広げた悪魔が、宙でホバリングしていた。


 禿頭の頭。ぎらついた眼光。

 口からは牙が出て、引き締まった肉体をこれでもかとさらしている。

 如何にもなテンプレ悪魔は、ぼくたちを見下ろしていた。


 いや、正確には見ていたのは、ルーコだ。


「見つけたぞ」


 不意に言葉を吐き出す。

 たぶん、魔族だ。

 モンスターの上位種。きっと魔王の側近か何かだろう。


「死んでもらうぞ! 裏切りものめ!!」


 手から禍々しい爪が伸びる。

 魔族は突然、ルーコに襲いかかってくる。


 ぼくはすかさず呪文を唱えた。


「ゆう○い――」


 ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ……。


 久しぶりにレベルマ状態になる。

 飛来する魔族を横からタックルした。

 そのまま近くの森に突っ込む。


「と、トモアキ!」


「ルーコは逃げるんだ!」


「貴様! 何をする!」


 魔族はぼくから離れる。

 一旦空へと逃げると、大口を開けた。

 赤く光ったと思ったら、炎を吐き出す。


「かあああああああ!!」


 紅蓮の刃がぼくを包む。


 少し遠くの方でルーコの「トモアキ」という悲鳴が聞こえた。

 同時に、魔族の「死ね」という言葉が耳に届く。


 ――大丈夫だよ。


 ぼくは笑う。

 レベルマのぼくに。

 対火属性MAXのぼくに、この程度の火はぬるま湯みたいなものだ。


 炎の中から飛び出した。

 魔族の前に現れると、呪文を唱える。


「精霊の一鍵イフリルよ。其の力、我の手に宿りて、紅蓮を示せ!」


 火の弾(ファイヤボール)


 およそ火の弾とは表現できないような炎を繰り出す。

 岩石のような魔法の火は、魔族を一瞬にして包んでしまった。


「がぁぁぁぁああああ!!」


 悲鳴だけが虚しく響く。


 ぼくは久しぶりの勝利を手にした。


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『ゼロスキルの料理番』
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