表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第二話

「足」


「へい」


「お茶」


「へい」


「りんご」


「へい」


「この間の兎みたいに切ってこいよ!!」


「さーせん」


 女騎士がやって来て早3日。ミツヒロ達三匹のゴブリンは立派に女騎士の下僕となり下がっていた。今はお手製のリゾートチェアに座った女騎士の足をヨッシーが揉み、クニヒロが大きな葉っぱをまとめて作った扇で仰ぎミツヒロが文句を言われながらリンゴを兎さんカットしている。


 ミツヒロ達が女騎士に酷使されているのは理由がある。



「えーっと女騎士さんなんでここにしばらく居ることにしたんですか? というかなんでここに来たんですか? この森街から結構遠いですよね?」


「今食べてるところなんだけど」


「さーせん」


 女騎士の居座り宣言の後すぐにミツヒロ達は女騎士に料理を出していた。木を加工して作った食器に森で採った何かの鳥の照り焼きと自家製パンとポタージュだ。


「この食べ物って自分たちで作ったの?」


「はい、自分たちで狩って自分たちで料理してます」


「なんかやけに美味しいけど何で?」


「そこは工夫であと……これ以上はちょっと言えません」


「はぁ? 何で言えないの?」


「一応そう言う決まりがあるんで」


「知らないわよ。教えなさいよ」


「すいませんこればっかりは無理っす」


「ふ~ん?……」


女騎士はそれ以上は追及してこず黙々と食べ続けた。


「ここらへんでモンスター達の動きが活発になっているって話が持ち上がっていたの。それで原因を探しに私が来て罠にひっかかったってわけ」


「はーそうっすか」


「ミアーナよ」


「はい?」


「私の名前。ミアーナっていうの。あんた達は名前あったりする?」


「俺がミツヒロです。そこのちょっと黒いのがクニヒロ。もう一人のちょっと黄色いのがヨッシーです」


「うっす」


「よろしくお願いします」


「それで私はちゃんと答えたけどあんた達は一体何なの? 喋るゴブリンなんて聞いたことないわ。他にもたくさんいるの? いつからここにいるの?」


「すいませんさっきも言ったすけどそう言うの今教えれないんすよ」


「今が駄目ならいつ教えてくれるの?」


「あと3,4日したら集会があるんでその時にミアーナさんの事を報告しようと思います。色んなことはそこからですね」


「いやだ待てない。いいわよ自分でいろいろ探すから」


ミアーナは立ち上がり洞窟を出て行こうとした。


「それはまずいっす。止めて下さい!」


「止まって下さい。マジでミアーナさんが他の奴に見つかったら大変なことになりますから」


ミツヒロとクニヒロは必死にミアーナを留めようとした。


「大丈夫よ。他のゴブリンたちもあなた達みたいなんでしょ?」


「そうですけど……すぐここにミアーナさん連れて来たのが不味かったんですって、女を隠してたってばれたらみんな容赦ないっすから。抜け駆け、裏切り許すまじ他人の幸せは絶対阻止する。怒りに任せて何しだすかわからないんですよ」


「実にゴブリンらしいと思うけど、それなら4日後の集会まで待っても結果は同じじゃない?」


「集会には今遠出してる俺らのまとめ役も戻ってきますからそいつがいれば何とかなると思います」


「ふーん……じゃあその集会まで私は一体何していたらいいの?」


「えーっと、大人しく待っててくださいとしか……」


「嫌だ。何で私が命令されなきゃいけないの?」


「いやいや、一応ミアーナさん俺達に捕らえられていますから。大人しく捕まっといて下さいよ……」


「ていうかミアーナさん罠に捕まってた時となんか違うね」


 ずっと黙って観ていたヨッシーが疑問を口にした。確かにそうださっきまで理想的なくっころ状態だったのに今ではこっちのいう事を全く聞いてくれない暴走状態になっている。


「そりゃゴブリンに捕まったらああしないといけないもん。『騎士は汚されるより気高く美しく散るべし』騎士団で習った時は下らないと思っていたけどまさか実践する羽目になるとは思わなかったわ」


「え? じゃあ騎士ってモンスターに捕まったらああいう対応しなきゃいけないって習うんですか?」


「そうよ、何でそうするのか私もあんまり知らないけど。じゃなきゃあんな茶番みたいなこと言わないわよ」


「でも上手だったよ? 俺も悪いゴブリンになった気分だった」


「ヨッシー別に褒めるところじゃないから……」


「あら嬉しいわよ、えーっとヨッシーさん。あなたも確かに立派なゴブリンっぷりだったわ。それにしてもあなた達あれね。さっき下らない話してた時も思ったけど中身はただのガキでしょ?」


「うっ……ミアーナさんと多分そんな変わりませんよ」


「私18」


「17」


「俺も17」


「俺は多分まだ16」


 ヨッシーだけは16らしい。『多分まだ』という言い方はこっちに来る前に誕生日が来ていなかっただろう。こっちの世界が地球と同じ1日24時間位というのは把握しているが使われている暦は把握していなかった。


「やっぱり私の方が年上じゃない。だから大人しく言うこと聞け。取り敢えず集会まではこの洞窟に籠っといてあげるから。ほら、黒いの、この何か甘い飲み物おかわり」


「ういっす、自分クニヒロっす」


「緑のは椅子と机作って持って来て。こんなちゃんとした食器あるんだからどっかにあるんでしょ? いつまで地べたで食事させる気よ」


「おれはミツヒロですって。椅子と机は……共用のしかないんで持って来れないです。1から作るとなると少し時間貰いますけど……」


「今日中に作って来て。手を抜かずにちゃんとしたやつね。ヨッシーさんは水を沢山汲んできてくれる? 出来れば桶みたいなのに入れて、体軽く拭くから」


「了解でーす」


なんでヨッシーだけさん付けでちゃんと名前呼んでんだよ。


「……なにしてんの? はやく始めて!」


「「「ういーっす」」」


 おかしいな? 女騎士ってこんなんだっけ? 女王か何かの間違いじゃね?


早速女騎士と出会った事を後悔しながら3人は逆らえず作業に取り掛かるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ