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cluster amaryllis 1

　大きな屋敷に足音が響いた。豪華なシャンデリアが並んで吊るされているはずのそこは真っ暗だ。軽快な音が暗闇の中を駆ける。廊下の窓から差し込む月光を頼りに、足音は意思を持っている。古いが格調高い木製の扉が開かれる。パーティーが開催されているホールは真っ暗だ。足音はしばらく止み、すぐにまた響きだす。

「にいさん」

　小さな明かりが灯った。燭台を持った女が1人だけ佇み、下を向いている。漆黒の髪が橙色に光っている。

「ひ…どいな…」

　下から手が伸びる。濡れている手を女は躊躇いなく掴んだ。掠れた男声だけが女の聴覚を支配する。

「かた…きを…せめてお前の…ひ―」

　男の声と小さな息が消える。濡れた男の手を女はもう一度だけ強く掴んだ。慣れないピンヒールに踵が擦れていく。