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国民性

 知ってよかったかと聞かれれば、知らないままでいたかったと答えるだろう。

 そんな恥ずかしい記憶を思い出した私はといえば、ほとんど私のままだった。

 この世界の知識はあるが、考え方は15年間生きてきた私のもの。

 前の記憶は、感覚的には覚えていない小さい時の行動を映像で観させられる感じだった。

 自分だとは思うけど、「へー、あの時ってこんなことをしてたんだね」という風に現実感が薄く。

 かと言えば自分なので、「何やってんの自分ー!!?」と今の常識と比較して羞恥が襲ってくる、そんな感じ。

 鏡は見ていないが身体も変わってないだろう。

 いつもの視点で黒髪が見え、同じように返ってくる体の感覚となにより現在の装備。

 フラッシュ前に着ていた楽な部屋着に動物スリッパだ。


 見知った場所だからか、私は案外冷静らしい。

 自分の状態を一通り確認して溜め息を一つ落とす。


 まず装備はどうにかなるだろう、当てはある。

 顔立ちはこの世界では幼くみえるだろうが、系統は問題ない。

 この大陸の系統ではないけど、貿易もあるし、冒険者などはある意味では世界を股に掛けた存在なので違う人種など然程珍しくはないはずだ。

 黒髪は問題にもならない。

 優性遺伝子なのか世界で一番多い色だ。


 それでも、どうにもならない問題があったりする。

 譲れない、変えられないもの。

 それは性格やお国柄というやつだと思う。

 基本を欧米だと考えれば、この先の私の苦労は想像するまでもない。

 あとは日常的に命のやり取りがある世界なので「ルールは破るもの」なんて軽い気持ちでいたら最悪殺される。

 何処かの世界じゃないけど信用が大事だ。

 そしてスルバランでは大体の人が戦闘で叫ぶ。

 名乗りを上げるのも、礼儀として以上に好きな世界だ。

 これが困る。叫ぶ国があろうが無言の国があろうが、本来なら好きにしろといいたいのだが、私の魂に刻み込まれているらしいと判明した【決め台詞】への苦手意識は今のところ直る見込みもなく。

 それは人も媒体も選ばない訳で。

 これからのことを想像した私は前世を生きた世界に対して「仲良くできる気がしない」と、まさかの感想を浮かべる。

 結論を言ってしまえば、この世界が無理なら元の世界に帰ればいい。

 来ることができるなら戻ることも理論上は可能なはずだ。

 情報を集めるために結局人と係わらなくてはならないのだが、そこは頑張って我慢するしかないだろう。

 耐えられるかは別問題として。

 一応探したが、最初の場所には生物・無機物問わず怪しげなものはなかった。

 おかしな点は一つあるけど。


「スルバランには異世界って概念も、召喚術の類いもなかったはずなんだけどな」


 首を傾げて考えるが実際にここに当事者がいるので、知られていないだけで以前から存在していたのだろうと納得する。

 経験してみないとわからないものだと思って、気付く。

 誰も知らないはずのことを調べるということ。

 嫌でも感じる先が長くなりそうな予感に、私は少しだけ泣きたくなった。




















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