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インターネットエクスプローラーが危ないらしいので、少しじかんがかかってしまいました。
なんとか雅の補習。そして、その後の地獄の関門(あくまでも雅にとって、だが)も赤点どころか、欠点まで回避させた俺は自宅で雅にもらったVRダイブようのヘッドギアを手に持っていた。
時刻は11時50分と、メンテナンス終了まで10分に迫っている。
やはり、初めての体験なのだ。先走ってしまうのもしょうがないだろう。
まあ、そのVRゲームに多大な欠陥があるのだが、それでも未知のゲームに挑むというのは自分のゲーマー心を非常にくすぐられる。
どんなことが待っているのだろうか、そんなことを考えて金属製のヘッドギアを抱えるように持つ。
本来、冷たいはずのソレは自分の意気込みを表しているかのように、俺自身の体温で熱くなっていた。
残り、一分を切ろうかというところで簡素な形のベッドの上に寝転がる。
VRダイブ中は体の力が抜けてしまって、自分の体を支えられないからである。
眼鏡を外して、金属製のヘッドギアを着ける。
そして、ヘッドギア横にある電源ボタンをつけ、ネットワーク設定をオンラインにする。
さらに本当にVRゲームをするのかという、規約のようなものの了承ボタンをドロップすると光の道のようなものが現れて、自分を吸い込んでいった。
吸い込んでいったあたりから、もうすでに仮想現実の世界へとダイブしている。
そして、少し広い空間に出たと感じると、周りの色のコントラストが明るい青色から一面黒色へと変わった。
ここが、このゲームのキャラクターエディットをする場所だろう。
目の前に、自分の現実の姿をモチーフにした姿でプレイするか、一からキャラを組むかの選択肢が現れる。
ちなみに、自分の姿は本体をもらったときにすでに設定してある。
一からキャラを作ってかっこいいキャラの一つ二つ作りたいところだが、そんなことに時間を割いている余裕があるのなら、レベルの一つでもあげたいし、早く仮想世界にふれたい。という気持ちがあったので、現実の姿をモチーフにした姿にする。
このゲームは、アバターの能力はコンピューターが決めるので実質キャラの見た目ぐらいしかプレイヤーは決めることができない。
欲を言うのなら、遠距離から銃のようなものをばりばり撃つようなキャラにしてほしいものだ。
そんなことを考えつつ、またもや光の道に吸い込まれた。
今度は、正真正銘。仮想の世界へと立ち入る門《ゲート》である。
期待に胸を膨らませて、まだ見ぬ世界へと俺は足を踏み入れた。
●
木漏れ日が目を少し焼いた。
まだ目がこの仮想の光になれていないのだろう。
このまぶしいという感覚も電子的な信号から生み出されたものなのだなと思うと、少し感嘆してしまう。
周りをふと見ると、木が一面に生えていて一箇所だけ隙間がある。
多分出るときはここから出ろということだろう。
そんなことを考えていると、他のプレイヤーがどんどんログインしてくる。
プレイヤーでこみ合うまえに自らの容姿を確認しようと思って、キャラの確認のために設置されているのだろう無数の鏡に自らの姿をうつす。
「うえ……!?」
俺が驚愕の色をにじませた言葉を発したのは他でもない。
確かに自らの容姿をモチーフにしてあったが、致命的に違う点があった。
最初に目がいったのは髪で、現実では目にかかるくらい伸びていた髪は、眉ぐらいの長さまでに切りそえられて、目が完全に露出している。しかも、快活そうなイメージを思わせるようにぴょんぴょんと左右均等に髪がはねている。
そして、アバターの目も現実では眼鏡をかけていていやおうなく目つきが悪くなっているはずなのだが目はぱっちりと開かれて、今は驚愕に目を見開かせている。
服装は少し未来的なイメージを感じさせる、青色のパーカージャケットに黒色のズボンをはいている。
そして、首には黒色のシックなイメージのヘッドフォンをかけていた。
ズボンの後ろの腰部分にはソケットがついていて、真ん中に青色の線が走った簡素な剣が下がっている。
「あれか、少しパーツが変わっただけでこんなに印象が変わるのか……」
事実、こちらのほうが人付き合いがよさそうで、暗い。というイメージは微塵も感じられない。
まあ、イケメンではないだろうが。
あれだ。自分のすぐそばにあれほどの顔をした美男子がいるのだ。
俺にとってのイケメンは、かなり門が狭いことだろう。
「とりあえず、集合場所に行かないと……確か場所はグリーンエリアの世界樹だったな」
自分の目的を再確認するために、独り言をもらしながらスタート地点からそう離れていないであろう世界樹へと向かった。
世界樹というだけあって、そこら中に世界樹への道を示す道しるべ《マーカー》がそこら中に点在してあり、見通しが悪い密集林のなかでもどこに進めばいいかはっきりとわかった。
このゲームは、VRといえどMMOなので複数のサーバーに分かれているはずなのだが、それでも周りにいるプレイヤーの人数はかなりの数だ。
今日が、休日でありアップデート初日だからだろう。
例えるならばパチンコの新台が出たので、それに群がっていくおじさん達のごとくだろう。
今のたとえはイマイチでした……。
で、このゲームはいくつかのエリアに分かれている。
その場所によって対戦方法や大会のルール。そして環境が違うのである。
今いるグリーンエリアは初心者用のエリアの筆頭のような場所で、対戦方法は自由。相手のアバターを奪うことができるのは、特殊なクエストを受けているときのみ。
といっても、ここにいるのはほとんどが初心者であり、アバターを入れ替える意味などほとんど意味がない。
まあ、たまに希少スキル《レアスキル》目当ての初心者狩り《ニュービーハンター》がいるにはいるらしいが。
そして、レッドエリア。
ここが一番の激戦区である。
普通の戦いでも、互いが条件を飲めば互いのアバターを入れ替えることができる。
しかも、いちどそれを認めた場合『絶対に互いのモンスターは入れ替えられる』。
ここにいるプレイヤーは、ほとんどが戦闘狂《バトルジャンキー》か、レベル上げ中毒者である。
砂漠のような見た目の場所で、コロシアムもあるそうだ。
さらに、ブルーエリア。
流通が一番盛んで、ショップの品揃えも段違いにいい。
そして、決闘は基本的に認められてはいない。
無理にそれを実行しようとすると、犯罪者プレイヤー認定されてアバターが凍結されてしまう、まあ数時間程度のものだけれど。
見た目は、モロに未来的都市というようなところであるそうだ。
イエローエリア。
唯一、ギルドをくむことができる場所であり、このたびのアップデートで追加された新たなエリアらしい。
基本すべてが自由な場所であるらしい。
ようするに無法地帯のような場所だ。
NPCも柄が悪く、町の見た目も自由地区のようにつぎはぎだらけで、ファンタジー的な要素がおおい場所。
そして最後にブラックエリア。
豪華なプレイヤーホームや、城を手に入れることができる。
それには、膨大なお金(この世界ではマネーと呼ぶ)か、気の遠くなるほど面倒くさいクエストをクリアせねばならないらしい。
しかし、城をゲットしたことによって得られる特典もあるそうだ。
ちなみに、その城もギルドホームとして使えるそうで、大手のギルドなどは狂喜乱舞していることだろう。
そのエリアはいつも暗闇で見通しが悪く、他のエリアと違いダンジョンの他に、フィールド上にもモンスターがポップ(モンスターが出現すること)するらしい。
魔王の領土を念頭においているらしいので、魔王の一人や二人いるのかもしれない。
ちなみに、このブラックエリアも新しく追加された場所である。
以上、これが現在判明(というか、ゲーム的に言えば開放)されているエリアである。
それぞれに、税金とか独自のルールを設定できる権限を持つ上級プレイヤーのエリアマスターと呼ばれる存在もいるのだが、今の初心者である俺にはまだ関係ないのでこのことについて考えるのは後にしよう。
暇つぶしがわりにゲームについての設定を頭に思い浮かべている間に世界樹の根元の真下についたようだし。
さて、待ち合わせの時刻まで後少し。
それまで、自分のステータスやスキルの確認でもしようか。
このゲームにおいて、初期値は誰もが同じではないのだし。
もしかしたら、雑魚アバターで冒険しなければならないかもしれないのだ(LUK|《幸運》ガン上げのステータスだったり。まあ、そうなったらほぼ詰みだが)
視界の右上にこれ見よがしに浮かんであるチュートリアルの窓を見ながら、ステータスを開ける動作《モーション》を実行する。
動作としては、空中にSとローマ数字のⅣが混ざったような奇妙なものだ。
キンッと金属同士を打ちつけたときのような涼しげな音《サウンド》がエフェクトとして俺の耳に届く。
いくつか並んであるメニュー欄から、メインステータスを開ける。
ちなみに、このステータスの窓は通常設定の状態では他の人に見えないようになっている。
攻撃力、防御、素早さなど、すべてのステータスは平均的。
某国民的RPGのレベル1時点でのステータスのようだ。
しかし、幸運なことにこのゲームは、レベルアップの時に上がるステータスの上昇値は自分できめることができる。
その意味で言えば、無限の可能性がある初期ステータス値だと考えるのは、いささかポジティブすぎるだろうか?
戦闘格《バトルタイプ》は、近接系片手剣使い《バーストブレイク》と、これまた一般的なものである。
派生タイプが一番多いタイプらしいので今後の可能性に期待というところか。
いやはや、しかし近接系を取れたのは実に僥倖だ。VRMMOの最大の利点である自らがアバターを動かすという点を見事に抑えている。
ここまで見て、自らの初期スキル(弱そうだが、これがそのアバターの全てを決める)を確認する。
10M|《10メディル》というオリジナルの単位は、ようするにスキルの容量だ。
弱いスキルならば、複数所持。強いスキルならば、その全ての容量を使う。
果たして。
自らの口内に湧き出た、唾液をごくりとのみくだしてそのスキルを見る。
スキルは二つに分割されていた。
一つは実に8Mもの容量を使っているスキル。
しかし、そのスキルはグレーで覆い尽くされている。
これは、アバターの身体能力《ステータス》が低いか、特定の条件下での習得ということである。
そして、2Mとまずまずの容量を使っているもう一つのスキルは『多重操作《デュアルアバター》』というものだった。
下調べをしたときには、見なかったその名に小首をかしげたその時。
「おーい、琴!」
自分を呼ぶ声がどこかから聞こえてきた。
「……」
「いや、見た目変えなかったんだな。お前らしいっちゃお前らしいけど」
そのしゃべり方。そして、自分のキャラクターネームであるkazato《かざと》を無視してリアルネームをいったことから、目の前のアバターの正体は分かる。
が、それを認めたくない。絶対に。
なぜなら――――。




