31話 Denney is tactician
冒険者ギルドが本格的に営業を開始してからおおよそ二週間。
先の暴動事件による強制労働や、冒険者ギルドの技術部がついに写真技術の要である感光剤の開発に成功した――いや、してしまったということを除けば、特にこれといった事件もない、実に平穏な日々だったと言えるだろう。
だが、どうやらその二週間という平穏な日々は、オレがいつの間にか忘れ去ってしまっていた不発弾が爆発するには十分な時間であったようである。
「あの、イーノさん」
――いや、今思えばそれは不発弾などという表現では生ぬるすぎる。
彼のその執念によって生まれた計略はもはや時限爆弾と表現するべきであった。
「どうした? デニー」
また、その日は依頼も受けておらず、また写真技術にともなうギルドカードの更新手続きもすでに終わっていたオレは、唐突にかけられたデニーの声になんの警戒もなくゆるりと振り返る。
オレの視線のその先、そこに立っていたのはデニーとアレックスの二人だけ。どうやらデニーとアレックスはほかの五人が終わるのを待たず足早に帰ってきたらしい。
そして急いで帰ってきたためか、二人の息は普段と比べて若干荒い。
「これ」
デニーはオレが振り返るや否や、彼はその野太い手でしっかと握りしめた依頼書をオレに突き出し、そしてアレックスと一緒にどこか期待に満ちた表情でオレを見つめてきた。
――もしかすればこのとき、彼は狡猾にも障害となりうるイーヴァがメノウさんと一緒に夕飯の買い出しに出かけた今の時間を狙っていたのかもしれない。
「……これは?」
「モンスターの討伐、イーノさんから特別な戦い方を教えてもらうにはちょうどいいって思って受けてきた」
「――おや、依頼かい? もしイノ君を連れていくなら僕も連れていってくれないかな? これでも僕はドラゴンハーフだ、足手まといにはならないと思うよ?」
『モンスター討伐』というデニーのセリフに、同じくギルドカードの更新が終わって暇を持て余していたレオンが、つい先ほどまで遊んでいたオセロやその対戦相手であるハンガクさんを放って興味を示す。
「あ、それなら私もお願いできます? もうちょっと弓の扱いに慣れたいので」
そして、それにつられるかのように、ハンガクさんが手を上にあげて自らの存在を思いっきりアピール。
「いやまて二人とも。一応イーヴァやメノウさんの意見も聞かないとまたイーヴァから説教が――」
「へぇ? 街道沿いに迷い出たミノタウロスの討伐かい? こういうのはベテランさんとかギルドの人が内々に処理すると思ってたんだけど、よく引き受けられたね」
オレが二人をいさめようとするも、しかし、そんなことなど一切気にしないレオンはオレの肩越しに依頼書を覗き込み。
「あー、ミノタウロスですかー……うーん、でも<打ち払い>の練習相手くらいにはなりますかねー?」
ハンガクさんはそんなバトルジャンキーじみたセリフをつぶやきながら空中に指を這わせてアイテム欄から弓と弦を取り出し、すっかりと慣れた手つきで弦を張りはじめる。
「お前ら人の話を聞けよ!?」
オレは思わず悲鳴じみた声をあげてしまう。
いくらストッパー役であるイーヴァがこの場にいないからといって、あまりにも自由すぎやしないか!?
「ちょうど掲示板に張り出されるところだったので、僕たちが受けられたのは本当に幸運でした」
「アレックス、お前もか!」
やはりアレックスはデニーの味方だったらしい。
いや、アレックスは以前のデニーの構成を知っているし、しかもアレックス自身囮という低火力構成である。
そんな彼だ、思うところがないわけがない。
「それと、引き受けられた理由なんですが……」
アレックスはそこで言葉を区切り、ちらりとデニーに視線を送る。
その視線を受けたデニーは無表情ながらむふんと自慢げに鼻をならし、アレックスが言わんとしていた言葉を紡ぐ。
「たまたまそこにいたギルドマスターが『主様が同行することを条件に、特別に許可しよう』っていってくれた。出発は明けの八時だから、もうすぐ」
「おいっ!?」
訂正しよう。
デニー、お前は子供ながらなかなかに知恵の回る狡猾な策士だよ。
――唐突だが、この世界によく似たゲームである七つ世界の話をしよう。
この七つ世界というゲームはMMORPG、いわゆるネットゲームやオンラインゲームと呼ばれる『ハンティングアクションゲーム』である。
そして、ハンティングアクションという名を冠しているがゆえに、各世界によって出現モンスターの系統は違うものの、しかしその数は実に多種多様であり、多岐にわたる。
そんな多種多様なモンスターのうち、デニーが依頼として持ってきたミノタウロスはこの人間世界における顔役であり、代表的なモンスターだ。
また、ミノタウロスはその火力の高さと動きの単調さからプレイヤーの間では「初心者の壁」ないしは「こいつを一人で倒せれば初心者卒業」などと言われているモンスターでもある。
……とはいえ、それはあくまでゲーム内での話であり、渡り人歴三週間の子供たちをぶつけていい理由になるはずがないし、それに知識という面から見た今のデニーたちでは小型モンスターに勝つくらいがせいぜいだろう。
いや、まぁ、だからこそヤコは『オレがいること』を依頼発注の条件として提示したのだろうが……さておき。
あのあとオレは興奮気味なデニーにせかされるように、そしてやる気に満ち満ちたレオンに引きずられるように家を出発し、今現在、討伐依頼の監査役が待っているという北門へとやってきていた。
また、ハンガクさんはその道すがらオレたちが連絡用に使っているチャットルームでそのことをイーヴァたちに報告していたようで、一瞬だけ悲壮な表情を浮かべていたりもしたが……正座とか説教とか、今は考えないようにしよう。うん。
「そういえばデニー」
「……なに?」
「これは討伐依頼だろう? 監査役が誰なのか聞いていないか?」
「わかんない」
「おいおい……」
デニーのその一言にオレは思わず閉口。
しかし、そんなデニーをアレックスはおどおどしながらもフォローする。
「えっと、おじさん。ギルドマスターが『儂がいこう!』って意気込んでたんですけど、そのあとものすごい勢いでやってきた馬のお姉さんのせいでうやむやになっちゃったんです。僕たちもそのお姉さんに『代役は送りますから、北門でお待ちになってくださいませ』って言われてたので……」
「……ああ、なるほど。そういうことか」
大方、これからなにか重要な会議かなにかがあるにもかかわらず、ヤコが自重しなかったのだろう。
そして馬のお姉さん――その口調からしてたぶんエレンさんが止めに入った、と。
やれやれ、そんなのだからギルドメンバーから色ボケだのと言われるんだ。思わずため息をつき、かぶりを振る。
とはいえ、エレンさんはわざわざ北門で待てと言っているのだ、相手はたぶんオレたちの知り合いであろう。
そんなあたりをつけて周囲を見渡していると、不意に背後から。
「ふむ? 君が噂のイノ、だね?」
やや低めの、ずいぶんと落ち着いた声がかけられた。
「噂通り、話通り、評判通り。君の見た目が主人公その一で助かった。おかげですぐ見つけられた」
その声に振り向くと、そこにはぼうぼうに乱れた髪や不健康にこけたほお、そして無精ひげをそのままにした、やせぎすの男がそこにいた。
また、彼がまとうその雰囲気は、彼が羽織っている薄ら黄ばんだくしゃくしゃの白衣と相まって、まるで幽霊かリビングデッドのようである。
「ああ、自己紹介がまだだったな。我輩は冒険者ギルドは医療部所属、無免許薬剤師のグッチである」
そう名乗った彼は、しかし、まるでオレたちと打ち解けようとする努力を見せず、その白衣にしつらえられてているポケットに両手を突っ込んだまま言葉をつづけ、そして。
「さる貴族との会食で来られない色ボケに代わり、今回はリハビリがてらの監査官を頼まれている。よろしく頼むよ、後輩君?」
にやりと、不気味に笑った。
[jump a scene]
「さて、道すがらであるが、初心者もいることだし、今回の依頼についていくつか話そうと思うのだが……」
北門を抜け、王都から見て東に存在するアリアドネー領へと続く大街道。その道を歩く片手間に会話をはじめたグッチさんだが、しかし、彼はいったんそこで言葉を区切る。
「そこの鬼人……ハンガク君、といったか? 先ほどから元気がないようだが、もしや月のものがはじまったのか?」
「すいません、この後のことを考えてちょっと憂鬱になってました。……あと、いくらお医者さんでもそれはセクハラです」
「ならば良い。そしてもし月のものがはじまったらギルド運営の病院にきたまえ。鎮痛に効果のある漢方を処方しよう……それと、細かいようで申し訳ないが私は無免許薬剤師だ、医者じゃない」
「あの、無免許って言われると、途端に処方してもらいたくなくなるんですけど……?」
「仕方ないだろう? こちらに来るまではまだ学生の身だったのだから」
そう言い、彼は白衣のポケットに両手を突っ込んだまま肩をすくめる。
「まぁ、勤勉であるのは自負しているし、うちの医療部には免許持ちの漢方薬剤師もきちんと――と、話がそれたな。身内話はこれまでにしよう」
デニーやアレックスをちらりとみやり、グッチさんは話を早々に切り上げる。
「今回の依頼は王都とアリアドネー領とをつなぐ街道に迷い出て、あまつさえそこを縄張りとしてしまったミノタウロスの排除にある。また、そこの子供たちは知らぬだろうが、アリアドネー領はマジックアイテムである帰還の糸――通称アリアドネーの糸の製造法を受け継ぐアリアドネー公爵家が治めている土地だ」
依頼内容やこの依頼に関する情報はすべて頭に入っているのか、彼は虎空を見上げながらつらつらとそんなことを語りだす。
「アリアドネーの糸はごく限定的な瞬間移動を可能とするマジックアイテムで、我々渡り人にとってはルイスの鍵と並んで比較的よく使うアイテムに分類される」
なにせアリアドネーの糸は戦闘中であったとしても離脱や帰還を一瞬で行うことができるアイテムだ。
それゆえ、たとえ五ガルドという高級品であったとしても、その戦術的、戦略的価値は計り知れない。
「……あれ? グッチ君、ちょっと待ってくれないかな?」
「どうした? レオン君」
「えっとね? 僕、そんな重要な依頼だってこと、全く知らずについてきたんだけど……そういうのって普通なら目撃情報があった時点でギルドがやるものじゃないのかな?」
なるほど。たしかにレオンの言う通り、アリアドネーの糸の輸入が滞って困るのは渡り人であるし、それになにより販売している冒険者ギルドが困るはずだ。
だというのに今回、冒険者ギルドはギルド内から渡り人を選出するなんてことはせず、ほかの討伐依頼と同じように掲示板に張り出そうとしていた。
これではいつ誰がこの依頼を引き受けるかもわからない。
そんな不安定な状況に、あのヤコがするわけがないと思うのだが……その答えを求めて、オレはグッチさんの顔を凝視する。
「一理ある」
そして、レオンのその疑問に対し、グッチさんはあっさりと肯定し、にべもなくうなずいた。
「だがレオン君よ、ギルド職員はただでさえ人数が少ないのだ。言い方は悪いが、普段よりも高い金額をちらつかせて冒険者たちをあおり、また当座は在庫でしのぐしかあるまいと考えたのも、一理あるとは思わないかな?」
ああ、やっぱりまだ人数不足であえいでいるのか。
いや、たしかにこの世界に召喚されたプレイヤーの総人数は二百人。そのうち半数がギルド職員として働いていると仮定しても、この世界についての情報収集にはじまり科学技術の研究や冒険者ギルドの運営、直売店、病院などなど、どう考えても人手がまるっきり足りない。
むしろヤコはその低人数でよく頑張っていると称賛の気持ちすら湧き上がってきてしまう。
これであの色ボケがなく、また見た目が幼女でなければ、そして欲を言えばあとみっつほどその胸をサイズアップしてくれれば完璧な淑女だったのに……ああいや、これでは彼女を全否定しているようなものか。
「そして現に、その大きな釣り針に君たちという魚はかかった。また、これこそが我輩たちの判断は間違ってはいなかったという証左でもある。……まぁ、三日後には君たちに依頼を回していたことを加味すれば、予定が繰り上がっただけなのだがな?」
「ああ、うん。ヤコ君ならやりそうだね。それ」
グッチさんの最後の一言に、レオンは苦笑いを浮かべる。
「……さて、疑問が解消したところで続きを話そう。冒険者ギルドに舞い込んだその目撃情報が正しければ、件のミノタウロスは王都から歩いて半日の地点に縄張りを定めている」
「ずいぶんと近場ですねー。でもそうすると戦うのは夜になっちゃいません?」
「ギルドの観察記録によればミノタウロスは昼行性である。寝ているところを不意打ちすることになるだろうな」
「あ、あのぅ……」
「どうした? アレックス少年」
「僕、そんなに時間がかかるとは思ってなくて、明かりを持ってきてないんですけど……」
「なんだ、そんなことか」
まるでとるに足らないことだ、という表情で、グッチさんは両手を白衣のポケットから抜き、皮のミトンを付けた右手をアレックスに見せる。
「我輩は監査官であるが、こういった『もしも』に場合に備えるのも我輩たちの役目である。そのため我輩たち監査官は松明などといったこまごまとした備品などをもってきている。それに」
そういいつつ、グッチさんは左手で皮のミトンをすこしだけめくり上げる。
瞬間、そのめくり上げた隙間から煌々とライムイエローの光があふれ出た。
「もし、松明がなくなってしまったことも考えての三十二倍<炸裂のルーン>。これをもって我輩の準備はすでに万端である。――まぁ、我輩はパッシブを持っていないから接触発動か<貫通のルーン>くらいしかできないのだが……ああ、この手で思い出した。イノ君よ」
「なんだ?」
「うちの医療部部長からの伝言なんだが、『<賦活のルーン>でどうにか治ったからいいようなものの、今度同じようなことやったらただじゃおかねぇ』だ、そうだ」
彼の言葉に「はて?」と小首を傾げ、そしてすぐさまその理由に思い至る。
<賦活のルーン>で医療部がかかわっているとするならば、それはたぶん、ずいぶんとまえにイーヴァと一緒にやらかした八十八倍<盾のルーン>のことだろう。
……本当に、その節は迷惑をかけてしまった。そのうちイーヴァと一緒に菓子折りか何かをもって謝りにいこう。そうひそかに決意する。
「ちなみに、どういう意味だ?」
「……ノーコメントで」
[jump a scene]
あれから四時間ばかり歩いただろうか?
太陽はすでに顔の端を地平線の向こうに隠しており、しかし、いくら大街道とはいえ左右に生い茂る背の高い木々がその腕を大きく広げているためか、その明るさはすでに宵の一時とほぼ同じ。
「思ったより暗いな。予定より早いが明かりをつけよう」
そんなことを言いつつ、グッチさんはミトンをつけているにもかかわらず器用にアイテム欄を操作し、松明と火打石を取り出した。
「そして諸君、我輩の歩く速度から察するにミノタウロスの縄張りはこの先のはずである。各自、特にデニー少年とアレックス少年は十分注意してくれ」
「うっす!」
「わ、わかりました!」
「いや、ミノタウロスの縄張りが近いのだ。我輩のセリフに言葉を返すよりも先にイノ君たちと打ち合わせをしたらどうか?」
しかし、そんな二人の意を決したセリフをグッチさんは一蹴。マイペースに火打石をうつ。
かちん、かちんと火花が散り、ほどなくして松明がぼうっと燃え上がった。
「え? ええっと……」
「我輩は監査官である。そして監査官は部外者であるがため戦闘に手を貸してはいけない決まりなのだ。ギルド職員規則要綱にもそう書いてある」
なるほど。チームワークを乱さないための規則か。
オレはその規則が定められた理由を想像し、納得する。
「さて。グッチさんから許可も出たし、小休止もかねて戦闘前の打ち合わせをはじめようか」
次いで、彼の言葉にはたと気づいたオレはかんかんと両手を小さく打ち鳴らし、四人の視線を集めた。
「では改めて確認しよう。今回討伐することになっているのはミノタウロスという中型モンスターだ」
ミノタウロスは前述のとおり、『初心者の壁』とされているモンスターだ。
そしてその『初心者の壁』という別称の通り、ミノタウロスはベテランプレイヤーからしてみればさほど強くはない。
「ミノタウロスは基本的に動きが単調で、主に棍棒を振り下ろす、振り回す、足で踏みつける、空いた手を伸ばして相手を握りつぶす、などといった大雑把な攻撃方法しかしない。が」
しかし、ミノタウロスは腐っても中型モンスターである。
そして中型モンスターとは、それらは覚醒技さえ使えればなにも考えていなくても勝てる小型モンスターとはわけが違う。
『中型』というだけあってその質量に裏打ちされた攻撃力と強靭な体力を誇るのだ。
また、特にミノタウロスにいたっては。
「その膂力から繰り出される攻撃は一つ一つが一撃必殺だ。守りを固めたアーマードでもない限り、避けないと死ぬ」
……本当に、覚醒技も使わずその一撃必殺の攻撃を捌ききったメノウさんはやはりどこかキチガイじみたものがあるな。
それを考えればそんな傑物の相棒をやっているハンガクさんがああも思い悩むのも当然といえば当然、か……いや、さておき。
「このパーティならトレントが<テンプテーションアロマ>で引きつけ、鬼人の弓師が<打ち払い>で攻撃をそらし、ドラゴンハーフが背後から叩き切る……が基本戦術になる」
そこですっと、デニーが手を上げる。
「オレたちはなにをするんだ?」
「普通なら雑魚散らしだな。普通なら」
オレは今回、デニーやレオンから強引に連れてこられた側面が強く、そのため今回の依頼に対してのオレのモチベーションは実に低い。
しかもこの後イーヴァの説教が待っているのだ、これではモチベーションを上げろというのも無理な話である。
だが、それでもオレは、デニーたちを怒鳴りつけてまで依頼を破棄させようとはしなかった。
そしてそれは、ひとえに以前デニーと約束した『特殊な戦い方』を教えるためである。
――デニーと『戦い方を教える』と約束してから二週間。
たしかにデニーは今回強引な手段をとってきた。が、しかし、彼は二週間もの間ひとことも愚痴をこぼさず本当に根気強く待ってくれていたのだ。
だからこそ次はオレが、彼のその根気に応える番だろう。
オレはオレの答えに眉をひそめたデニーをひとまず置いて、ハンガクさんに向かって言葉をなげる。
「ハンガクさん、今回は<打ち払い>だけしてもらうことになるが、いいか?」
「え? あ、はい。今回はミノタウロスですし、全然大丈夫です」
「レオン」
「なんだい?」
「牛刀でにわとりをさばくようなものだが、今回は雑魚散らしを頼む」
「もちろんオッケーさ! それにイノ君直々のお願いだ、全力を尽くさせてもらうよ!」
「よし……さて、デニー」
「……うっす」
「待たせたな」
「うっす!」
オレのその一言にデニーは、昼間オレに依頼書を持ってきたときと同じように、いや、それ以上に目を輝かせる。
「次にアレックス」
「はい」
「お前はトレントを自分で選んだんだったな……そのせいで怖い思いをするが、心の準備はいいか?」
「……か、覚悟の上です!」
そこは自分で選んだんだからこそどもらず、ためらわず、すぱっと言い切ってほしかったのだが。
思わず苦笑いを浮かべ、若干涙目のアレックスの頭を軽くなでる。
「よし、ならば今こそお前らに教えてやる。以前言った特殊な――モンスターを傷つけない戦い方をな!」
「……は?」
「え?」
オレのそのあまりにも予想からかけなはれた言葉に、アレックスとデニーがぽかんとした表情を浮かべた。




