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レイアと創太 ②


後には引けない!



人間、目標が出来ると生きがいがでてくる。と、言っても死んでるけどな。でも、具体的に何をすればいいんだろ?協力者って言っても、俺は人間だしな。悪魔じゃない。

「レイア、魔界に来たのはいいけどさ、何をすればいいんだ?お前が魔王になる為だったら、なんでもするけど。俺、ただの人間だぜ。」

「わかってるって、今行っても5人の方たちにお許しが出ないからな。そこで、お前の魔力をパワーアップさせる。」

「おいおい、俺の言ってる事がわかってないのか?だから、俺はただの人間だって。」

「ただの人間が、悪魔の協力者になれるわけないだろ?わからないと思うが、お前には普通の人間よりほんの少しだけ魔力があるんだ。」

はあ?俺に魔力だって?そんなバカな。産まれてこの方、魔法なんて使ったことが無いぜ。

「わたし達悪魔は、協力者の魔力を媒介にするんだ。つまり、お前の魔力が上がれば、わたしの魔力も上がるって訳さ。」

「俺に魔力が有るのか・・・マジかよ。」

自分の手を、マジマジと見てみた。だけど、実感がわかない。

「そうだな、普通の人間が1としたら、お前は1,5ってところかな。」

「なんだよ、たったの1,5かよ。あんま嬉しくないな。」

「バーカ、言っておくがこれって凄いことなんだぞ。人間がなんの修行もしないで、それだけの魔力は身に付かないんだぞ。ちなみに、お前の彼女、加奈って言ったけ?あの子の魔力は2〜3位だな。」

「えー!加奈ちゃんってそんなに凄いの?」

「だからさ、だからフラウロスはあの子に目を付けたんだ。」

信じられない。ふだんから天然な加奈ちゃんが、そんな魔力を持ってたなんて。これから、魔法少女カナって呼ばなくちゃ。

「そこでだ、お前には魔力アップの修行をしてもらう。と言っても、フラウロスがからんできた以上時間は掛けられない。短期間で、今の倍以上にはなってもらうからな。」

「修行って、何をすれば・・・」

レイアは問いに答えないまま、俺の腕を掴んで飛び始めた。おいおい、いったい何処へ連れて行くつもりだよ。



飛び始めて数十分、眼下には小高い丘が見える。俺達は、そこに降り立った。丘から見渡すと森が見える、結構広いな。

「こんな所に来て、何をするんだよ。」

「これから3日間、ここで生き残れ。生き残れって言うのも変だな、死んでるし。んで、最終目標ここの主『グレイト・グール』を倒す事、いいか?」

「いいかって・・・いいことあるか!」

こんな所に、3日もいられるか!『グレイト・グール』だって?んなもん倒せる訳無いだろう。

「大丈夫だって、死ぬ心配無いんだし。お前だったら出来るって、自分を信じろ。な。」

レイアは、親指を突き出して笑っている。なにこの子・・・ちょっとムカつく。

「ぶ、武器とか無いのかよ・・・」

「んなもん無いよ、自分の魔力で倒すんだって。ちょっとまてよ、気休めだけどこれやるよ。」

彼女のてのひらから、本が出てきた。それを俺に、ポイっと渡した。

「ん?なんだこれ。」

「魔法書だよ。」

「魔法書?」

手に取った本を見てみた、表紙には何か紋章っていうか魔方陣?見たいなのが書いてある。中を見てみて、俺は驚愕きょうがくした。

「おい!何にも書いてないじゃないかよ!!」

「だから言ったろ、気休めだって。」

「こんなもん、気休めにもなるか!せいぜい役に立って、寝る時の枕くらいじゃ!」

俺は、ギャーギャー文句を言ってる。レイアは耳をふさいで、あーあー聞こえなーい、って言っている。この子、どうしてくれよう。

「じゃあ、3日間頑張れよ。わたしはちょっと行くところがあるから、じゃあな。」

「じゃあなって・・・お、おい待ってくれよ。」

俺の言葉を無視してレイアは、ふわりと浮かんで飛び去っていった。もう見えなくなった・・・

「勘弁してくれよ・・・こんな所に置いていかれて、どうすりゃいいんだよ。」

ヘナヘナと俺は、その場にうずくまってしまった。



創太と別れたわたしは、東方へ向かってとんでいる。ある悪魔に会うために。

「あいつ、大丈夫かな・・・『あの方』の血が目覚めれば楽勝だと思うんだけど・・・」

3日ってのは短すぎたか、と思ったがここまでしないとフラウロスに勝てないもんな。わたしが魔王に成るには、あいつが強くなってもらわくちゃ。

そう自分に言い聞かせて、飛んでいると目的の場所に着いた。ここは、『魔界森林管理事務所』わたしは、ドアをノックして挨拶をする。

「すいませーん、所長さんいますか〜レイアランドです、メフィスト・レイアランド・フォレスです。」

はいはい、と言う声が聞こえて、ドアがガチャリと開いた。中から1人の悪魔がでてきた、わたしが用があるのはこの人だ。

「お久しぶりです、マルコキアス様。お元気でしたか?」

「おお、久しぶりだねレイアランド。マルコキアス様はよしておくれよ、私は引退した身なんだ。今じゃ、しがない森林管理事務所の所長さ。」

「そんな事いわないで下さいよ。ご引退なされても、わたしにとっては先生ですから。」

マルコキアス様は、わたしが通っていた魔法学の先生だ。狼の顔で、背中に翼が生えている。教職を引退して、息子さんに魔王の座を譲ってからは『魔界森林管理事務所』の所長さんをしている。先生だったら、もっと良い所に再就職できたろうに。

「ははは、嬉しいね。さぁ、立ち話もなんだから中にお入り。」

わたしは、ペコリとお辞儀をして部屋に入った。部屋は閑散かんさんとしていて、無駄な物が一切無い。さすが先生、趣味がいい。テーブルに案内されて椅子に腰掛ける。そしたら先生はお茶を入れてくれた、先生のお茶だ、懐かしくて嬉しくなっちゃう。

「ところで、今日はなんの用件で来たんだい?」

「今回父上が、魔王の座を引退することになりまして。姉弟で、後継者争いをする事になりました。」

先生は、お茶を一口飲んで微笑んでいる。何かを思い出して、懐かしんでいる様。

「ほう、メフィスト殿も、もうそんな次期が来たのか。思い出すな、彼とよく人間界に遊びに行ったものだよ。」

「えへへへ、父上もよくその話をしますよ。『マルコキアスは、今じゃ先生なんて呼ばれているが、人間界で悪さばかりしてた』って。」

「ははは、酷いなファウスト殿は。悪さしてたのは、お互い様じゃないか。」

お茶を楽しみながら、他愛も無い話に花が咲いた。そして、自然と後継者争いの話になっていく。

「後継者争いが始まったって事は・・・フラウロスも参加しているんだね。」

「・・・はい。」

わたしは、表情を曇らせて返事をしていた。それを察したのか先生は、真剣な顔をして話し始めた。

「フラウロスか・・・彼女はベルゼバブ様に傾倒けいとうするあまり、手段を選ばない所があるからね。我々悪魔でも、躊躇ちゅうちょする事を平然とやってのける。取り返しのつかない事に成らなければ良いが・・・」

先生の危惧きぐしている事が、もう起こっている。だけどそれを先生に言ってしまえば、魔界裁判に掛けられてフラウロスは有罪になるだろう。それだけはイヤだ、あいつはわたしの手で裁いてやるから。

「だ、大丈夫ですよ、姉もそんなにバカじゃありません。」

先生は、わたしの目をじっと見ている。すべてを見透かされている様な目で。そして、フっと優しく笑って話し出した。

「そうだね、フラウロスは賢い子だ、心配いらないかな。ところで、後継者争いが始まったんだろう?人間の協力者がいるなら紹介してくれないかな。」

「わたしの協力者は今、修行中です。」

「修行中?」

「そうです、さっき『グールの森』に置いてきました。魔力アップの為に、3日間。」

先生の表情が、一気に険しくなった。え?どうしたんだろう。

「レイアランド!『グールの森』だって?まずいぞあそこは。」

「なにがまずいんですか?あそこには、低級悪魔のグールしか居ないじゃないですか。ちょっと手こずるとしても『グレイト・グール』位ですよ?」

「忘れたのかい君は?今、あそこにはグールなんて居ないよ。たちの悪いインプと、キメラの巣窟そうくつになってるじゃないか。」

あ、そういえば・・・親父が言ってたっけ。グールの森に、インプやキメラが住み着いて、マルコキアスが頭を悩ませてるって。

「中級悪魔でも、手を焼くインプとキメラだよ?そんな所に、人間が、3日間も持つわけが無い。早く連れ戻しておいで!」

「は、はい!わかりました!!」



わたしは、事務所を勢いよく飛び出した。あちゃ〜失敗したなぁ・・・死ぬことは無けど、インプやキメラに喰われたら、あいつの魔力がそのままヤツらに吸収されてしまって、益々手が付けられなくなってしまう。それに、あいつは『あの方』の血を引いてるからな・・・あいつらにとっちゃ、ご馳走だ。

わたしはあいつの無事を祈って、グールの森に向かった。



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