現実3『Dance until it Dies in a Dungeon. On-line』
教室に戻っても数学の授業はまだ始まっていなかった。
やることもないので、仕方なく席について、葬儀屋からもらったもうひとつのパンフレットを手にとる。
今朝がたまでやっていたゲーム『DDD(和訳:ダンジョンのなかで死ぬまで踊ろう) on-line』の取り扱い説明書である。
黒地にアルファベッドが血文字をイメージしたこれまた深紅のアルファベッドのDが三つ並んでいるだけという非常にシンプルな表紙だ。
葬儀屋に聞いた話では、よくある中世ヨーロッパに似た世界を舞台にしたロールプレイングゲームだったが、これはそのなかでも海外のある偏屈なゲームデザイナーが設計した玄人向けの作品として有名らしい。
適当に最初のほうのページを開いてみるとゲームの最大の特徴であるマスタークラス(魔王級)の概要について触れている項目を見つける。
これは上級プレイヤーが蓄えた資金を元に、ダンジョン、砦、工房、教会などの根城を手に入れることでマスタークラス(魔王級)へと昇格することができるものだ。これを選択することでこのゲームにおける自由度と難易度はいっきに飛躍することになる。
例えば盗賊団の首領となり村や都市に対して略奪を働いたり、また覇王となって地方エリアの覇権を握ぎって富を蓄えたり、あるいは教祖として信仰宗教を起こしたり、あるいは闇の導師として禁じられた魔術研究に勤しんだりすることができるなど、通常よりもワンランク上の行動を行う為の特典がプレイヤーに与えられるらしい。
他にも支配エリア/組織同士での抗争/交渉へと発展させるなど戦略レベルでの行動決定権も持つことが可能だと書いてある。
またこのマスタークラスとなった上級プレイヤーは同時にデメリットも負うことになる。何故なら彼ら上級プレイヤーはマスタークラスへと昇格した時点で、自動的に賞金首となってしまうのである。
つまりは初級~中級者プレイヤーによって狩られる側に回るリスクが発生するのである。
他にはどんなことが書かれているのだろうか。
説明書をぱらぱら捲ってみるが、ごく基本的な職業の概要とか、主要エリアのマップなどしか掲載されていないらしい。
薄いだけなのだからまあこんなものだろうか。
ゾンビについての情報を知りたかったが、それはまた後で、葬儀屋に聞くことにしよう。
教室前方のドアが開いて教師が入ってきたので、僕は取り扱い説明書をしまった。