現実1『ダンジョンのなかで死ぬまで踊ろう』
なかなか自由な時間がないせいで
一か月近く経過してようやく更新できました。
よろしくお願いします。
アラーム音。
先ほどから脳裏でひかえめに鳴り響いていたそれがしびれを切らしたらしい。まるで頭蓋骨を直接打ち鳴らしているほどにボリュームが増大する。
おれの健康状態に問題が発生したことを告げているのだ。おそらくは十時間以上、水分補給なしでゲームを続行しているせいだった。
現実の出来損ないな身体に苛立ちを覚える。
水も食事も必要がないこちら側の身体を見習って欲しい。
無視して遊んでいるわけにもいかない程、うるさすぎるので得ず一時中断することにする。
ため息をついて閉じる目蓋。
三秒ほど待機していると、現れるお決まりのメッセージ画面『ログアウトしますか?』。
不本意ながら『はい』を選択。
すううっと急速に遠のいていく意識。まだ体験したことはないけれど、たぶん死ぬ瞬間というのはこんな感覚なのだろうか。
そしてDDD(ダンジョンのなかで死ぬまで踊ろう)on-lineからログアウトした僕は、現実に還る。
吐き気がするほど退屈で、死にたくなるくらい残酷な現実に。
意識がはっきりしてくる。
ゆっくりとやってくる吐き気と頭痛。
原因は睡眠時間と水分の不足だ。
振り払って、あたりを見回す。
薄暗いワンルームマンション。締め切ったカーテンの隙間からわずかに光がこぼれている。夜通しDDDで遊んでいたのだからたぶん今は明け方くらいだろう。
エアコンが停まっていたらしくティーシャツが汗まみれで身体にはりついている。まるで悪い夢でもみていたかのようだ。実際には僕にとって悪夢なのはこちら側なんだけども。
起きあがる。
重力のせいで思うように動けず千鳥足になる。
生命活動をするのはとても億劫だ。心臓なんかもう停止してしまえばいいのに。
喉が渇いている。ヘッドホンタイプのアーカイヴを外して首にかけると、とりあえず冷蔵庫へ向かう。賞味期限ぎりぎりのパック牛乳が残っているので嫌がらせ半分にこいつを飲むことにする。これで
満足かよ僕の身体め。