ハウンドドッグスケルトン Lv4
「きょうかいのてさき、があらわれた!」
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《名前》「ベルトーチス(罪滅ぼしの寺院)」
《種族》「暗い闇の女王/ver犬」
《Lv》「39」
《HP》106/106
《スキル》
「咆哮★」:この咆哮をくらった半径50メートル以内にいるすべての敵は、 判定を行い失敗した場合、重度の【恐慌】【麻痺】【混乱】の状態に陥ることになります。また重ねかけの結果によってその症状は【突然死】へと至ります。
「ガンドライド(魔女の騎行)/咆哮★」:ヘカーテの固有スキルです。荒野限定ですが遠吠えによって眷属を召集する事ができます。眷属は、牝蟷螂、牝蝙蝠、狼の群れ、よりダイスの達成度で決定します。
「遠くまで及ぶ矢/咆哮★」:ヘカーテの固有のステータスボーナスです。咆哮の射程距離、威力、効果がニ倍になります。ヘカーテが人型の場合、効果は魔術に付与されます。
「魔女の軟膏/毛繕い★」:ヘカーテの固有スキルです。神話によればヘカテーが小動物や虫に変身する際、用いたとされています。このスキルの効果は状態変化系のバットステータスからの完全回復、及び体力の回復1D3×舐めた回数です。
「あ゛あ゛ん?」
マリアはまるで人が変わったかのように声を荒げて、こちらを睨みつけている。彼女が握っている鞭の柄がみしみしみしとまるで砕ける寸前の悲鳴みたいに軋みを上げている。
非常に恐ろしい。
「『出来損ない』は『出来損ない』で十分だろうが」
「え、ちょっと待て何を急に怒りだしたんだよ。もしかしてアサガオの名前を出したせいか?」
「……その名前、二度と口にするな」
先ほどの打鞭に反応し――起き上がっていた巨躯の犬が彼女の前に出てくる。頭を低くして、喉を鳴らすような、低い唸りを上げ、こちらを威嚇してくる。
やばいな。いつの間にか臨戦モードに入ってしまっている。
教会にとりいった上で面倒事を全部教会に解決させちまおうって計画は水の泡だな。
何だかわからないがおれは地雷を踏んでしまったらしい。
「おいおいおいおい。教会とは対立したくないんだよ。落ち着いて話をしようぜ」
「うるさい。ベルトーチス、『咆哮』だ」
もう一度鞭を叩きつけ、ぞっとするような冷たい声で呟くマリア。
こちらの呼びかけには聞く耳を持たないらしい。
そして巨躯の犬が、主人の命令に応える。
まるで小さく息を吹きかけるような控えめな動作――その口元からこぼれ出たのものはささやかな鳴き声。それはゆわんと波紋のように広がりながら、周囲の空気を歪めていく。
「ちっ」
こちらに迫ってくる大きな波紋。
『咆哮』――獣系モンスターが行使できる初歩のスキル。
その名の通り雄たけびを相手に浴びさせる。成長度合によってバリエーションが生まれることもあるが基本形は、攻撃を受けたものを恐慌や麻痺状態に陥らせるという効果らしい。
恐慌にしろ、麻痺にしろ行動不能になるのは御勘弁願いたい。
いまから踵を返して射程距離外まで逃げ切るのが最良の手だが、残念ながら前回の闘いでスピードに自信がついたとはいえ初速であれから逃げ切れるほどではない。
恐らくここに到達するまでに残された猶予はワンアクション起こす程度しかない。
「――ならば」
こちらも『咆哮』を発動するまで。
喉の奥から湧きあがる力を吐き出すようにして撃つと、放射状の波動が放出される。
扱うのは初めてだったが、力いっぱい吠えるだけで成功できるところはさすが初歩スキルである。
接触――ガギイイィィン。
金属が擦れ合うような耳障りな効果音。まるで鍔迫り合いのようにお互いの『咆哮』が拮抗する。
「成程、相殺効果を狙ったのかい――やるね」
『相殺効果』とは、DDDにおいて似たような属性や形状の攻撃がぶつかり合うと発生する現象である。この場合、攻撃同士がエネルギーを潰し合って消失する。魔法使い同士のバトルでは良く見かける光景だが、この性質を利用して、意図的に相手に合わせた攻撃を行う戦法もある。
「だけどさ発動条件は、双方の攻撃が同程度の実力だった場合のみ。残念ながら君はベルトーチスよりもはるかに格下だろ?」
拮抗状態は一瞬。
マリアの言葉を証明するように、巨躯の犬の咆哮があっさりと踏み砕くようにこちらの咆哮を圧殺。
「相殺なんて狙ってないさ」
「なにっ!?」
「ちょこっと威力を弱めれば十分なんでね」
再び動き始めた波紋がこちらを飲み込まんと迫ってくる。
しかしその勢いは先程に比べて僅かに衰えている(・・・・・・・・)。
勿論それはおれの放った咆哮とぶつかり合ったせいだ。
そして今ならば、おれの足なら追いつかれることはなく逃げ切れる。
おれは身をひるがえして、床を蹴る。
通路を一気に駆けもどる。
咆哮の射程距離から逃げきれるだけの距離が稼げればいい。
撒くことも不意打ちも狙っていない。
教会相手に下手に応戦するつもりは毛頭ない。
だらだらと逃げ回ってあのサディスティック修道女の怒りがトーンダウンするのを待つのが良策。
T字路の突きあたりまで辿りつくと、いったん立ち止まり振り返る。
「とにかくここまでくれば――」
「汝、油断するなかれだ」
「――!」
身体を再構成するイメージ――四肢を立たせて起き上がろうとするが、脱力状態から戻ることができない。
まんまと『咆哮』によるバッドステータスの麻痺状態に陥ってしまったようだ。
カツカツと修道女が靴音を鳴らしながら近づいてくるのがわかる。
十数行程度ですがプロロ―グを入れてみました。
最近忙しくてなかなか更新できなくてすいません。




