ゾンビ Lv3
「しょうきんかせぎが、あらわれた!」
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《名前》「フロッギィ(死肉漁りの兄弟)」
《職業》「盗賊」
《Lv》「13」
《HP》「15/15」
《スキル》
「罠リサイクル」:ダンジョンに設置されている使用済みの罠を再設置することが可能。成功条件=スキル所有者のレベル-罠レベル足す六面ダイスで0以上の判定結果。
「イカサマ」:一日三回まであらゆる判定において後出しでダイスの結果を+1できる。わりと重宝できるユニークな技能。
《所持品》
「短刀+2」:切れ味の鋭い短刀。六面ダイス-1。
「ベアトラップ」:とあるダンジョンで手に入れた未発動の罠。発動させる場合は事前に「設置」を宣言する必要がある。罠にかかった哀れな獣は「行動不能」+ダメージ。
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《名前》「オイガッツォ(死肉漁りの兄弟)」
《職業》「盗賊」
《Lv》「14」
《HP》17/17
《スキル》
「居合い」:侍のみ習得可能な技能。攻撃に切断の特性を追加することができる。熟練者になれば更に部位指定が追加される。達人になれば瞑想、カウンター、複数部位指定が追加される恐ろしい技能。
「狙い打ち-3」:剣士、侍が好んで習得する技能。斬りつける攻撃に置いて、ダメージを与える部位を次より指定することができる。頭、首、胴、腕、脚。
《所持品》
「なまくら刀」:元々が粗悪品だったが手入れを怠った結果、ますます切れ味のなくなった刀。六面ダイスで最大値4まで。
「瓢箪」:清酒が入っている。飲むと酔える。酔拳/剣スキル所有者が愛用。
「ええっとここでいいんだよな」
階段を昇りきると、白いタイルと黒いタイルが敷き詰められた場所ーー七階に到着する。
「なんつーか自分がした事ながら、ひどいな」
両側面を壁に挟まれた直線的な通路ーーそこに繰り広げられたトラップ群による雑然ぷりにぼう呆然とする。ちょっとした展示会のようでもある。
足下のタイルが途中からどれも潰されており、目で追っていくと背後のすこし先にある行き止まりに到達。そこには壁にはめり込んだ巨大岩石。
頭部と胴体が切り離されて倒れている数匹の狼鬼。天井を見上げると、役目を果たし、だ らんとぶらさがったーー吊り鎌
すこし遠くの壁際では毒矢が山盛りに積み重なっている。原因は反対側面のレリーフにある隠し穴から誰もいない空間を狙ってしゅこしゅこ音を立てている噴出装置。
散らかしきった自分の部屋を改めて見返しているような感覚である。
この階ではわりと苦戦した覚えがある。次に進む為の隠し階段を見つけることができず、床のタイルを一つづつ調べ上げたせいだ。挙げ句、設置された殆ど全ての罠を作動した結果がこれである。
そういえば結局、隠し階段などは存在せず、入ったと思いこんでいた小部屋のなかに階段はあったんだった。あの時はあまりにも腹が立って次の階で控えていたモンスター全員を殴って回ったっけ。
「なんだあれ」
罠を避けつつ、記憶を頼りにフロアを歩き回っていると、通路を塞ぐような形で大きく横たわるものに遭遇する。
モンスターの死骸。
人型で毛並みがある巨大な体躯。白目を剥き、だらんと舌を垂らした狼の頭部。こいつは凶暴な巨犬鬼というやつだ。
大きなかかとを群がりかじるように食いついているいくつもの鋸歯状のハサミ。ベアトラップ。強力な装置らしい。その証拠に、暴れて外そうとしたらしく出血の痕がひどく肉が剥がれ落ちそうになっている。
死因は脇腹にある複数の傷。何度もつけられた短い刃物で刺した痕と、長い切れ味のある太刀筋。
例の侵入者に、罠で身動きのとれなくなったところを始末されたのだろうか。
「おっいいもの見つけ」
ガシャン。
しまったああああ。
……たった今の出来事を報告する。
すぐ傍に落ちている巨大な斧を発見。
拾おうとして罠にかかった。
普段からこよなく斧を愛する自分。だからダンジョンで見つけた風変わりな斧を拾いたくなる心情は理解してもらいたい。手ぶらだったし。
そして目の前まできたところで踏んづけたタイルに仕掛けられたベアトラップが発動。透明化していた凶悪な鋸歯状のハサミが実体化と同時に跳ね上がり、左腿に食いついたのである。
「ゲッゲッゲ。待ってたぜえ。愛しの血啜り斧ちゃんが罠にはまるこの瞬間をよお」
「ギョギョッ。戻ってくんのがあまりにも遅せえから返り討ちにあったんじゃねえかと心配してたぜ」
ジャイアントコボルの死骸の向こう側から現れる身なりの汚そうな中年の二人組。
ひとりは蛙顔の小柄な盗賊。本来のつやなど大昔に忘れたように黒くくすみ所々ひび割れた皮鎧。手には血で汚れた抜き身の短刀。
もうひとりは魚目の野武士。染みなのか柄なのかわからないほど汚れた羽織。手には同じように血で汚れた抜き身の刀。
二人の容姿はそれぞれ生前の記憶にある。生前、所属していた賞金稼ぎのギルドにたむろしていた連中である。面識はあったが言葉を交わしたことは数える程。それというのも彼らにまつわる「噂」を耳にしてお近づきにならないよう努めていたせいだ
彼らは死肉漁りの兄弟と呼ばれていた。