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死霊魔導師(禁じられた遊び アサガオ) Lv53

 今日の私はなんだか、ちょっとどうかしていて、だからせめて死ぬ前に、ゲームのなかでも構わないから、青空の下で最後のピクニックがしたかった。


 カーテンの隙間から漏れてくる光は、恐ろしいくらい白くて、もうそちら側には行けないような気がした。

 蝉の声が「死ね死ね死ね」って呪っているみたいで耳を塞ぎたくなった。

 寝汗をかいていたみたいでパジャマが気持ち悪い。

 運動なんてここ一年まともにしていないのに全力疾走した後みたいに心臓がうるさいくらいに鳴っている。

 それでもどういうわけか身体は冷え切っているみたいに熱がなくて怖かった。


 ――たぶん。

「――っ、げふっ」


 急に喉が苦しくなって、むせる。

 咳をしたつもりが、嘔吐していた。

 口からこぼれたのは赤黒い血の固まり。

 何度もむせる。

 今更になってお腹がよじれてしまうくらい痛いことに気がついた。


 ――残された時間はあとわずかだ。

「――げふっ――げふっ――」


 堪えながら何度も吐いて、シーツがどんどんどんどん黒い混じりもののある赤に染まっていくのを、まるで他人事みたいにどこか冷静になって観察している。


 ――もう死んでしまうんだろう。

「――ごふっ」


 今、この瞬間、私のすべきことはナースコールのボタンを押すことのはずだった。看護師さんに、病室でおなかを押さえながら血を吐いてうんうん苦しんでいる私を見つけて貰うことのはずだった。


「――くっ……はあっ……はあっ……」

 ――だからせめて。


 枕元に手を伸ばすと、堅い手応え。ちゃんとそこにあるのが嬉しい。

 それは担当医のお兄ちゃんがくれたゲーム機――アーカイヴ。病室でずっと寝たきりの生活を送っていた私にと誕生日にくれたもの。


「……はあっ……んっ……はあっ……」

 ――だからせめて死ぬ前に。


 これのおかげで、現実ではもうまともに歩くこともできない私でも、仮想空間では病気なんてなかったことみたいにはしゃいだり、走ったりすることができた。

 私にとっての心の支えはこれだ。

 これがあったから、私は今日まで生きていくことができた。

 血を吐きながら、頑張ってアーカイヴのヘッドギアを被る。

 

 ――ゲームのなかで構わないから青空の下でピクニックがしたい。


 私は、まだ私が私でいられるうちに、最後の力を振り絞ってアーカイヴのスイッチを入れた。




 ――アーカイヴ起動。

 ――NRSニューロマンスシステム接続。

 ――ユーザーASAGAO、認証。

 ――≪Dance until it Dies in a Dungeon. On-line (ダンジョンで死ぬまで踊ろうオンライン)≫実行


 ――ログインしますか?


この物語もこれでようやく折り返し地点。

なんとか終わらせるように頑張っていきたいです。

御意見御感想ありましたら、よろしくお願い致します。

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